忘れがたい場面がいくつかある。まずは『涼宮ハルヒの憂鬱』の一場面を挙げたい。あの作品での
イケズは単なる冗談を超えて、人の尊厳を踏みにじるような冷たさを帯びることがある。具体的には、ハルヒが無邪気さと暴力性を同時に振るって、ミクルを公然と辱める回だ。あれを観ていると笑いながらも居心地が悪くなり、被害者の側に立てば本当に傷つく。僕はあの場面で、笑いと不快感が紙一重だと感じた。キャラクター造形としては魅力的だけれど、見る側の倫理感を刺激する巧妙な演出だった。
次に『新世紀エヴァンゲリオン』、特に指導層や保護者の冷淡さが象徴的だ。主人公が精神的に追い詰められているにもかかわらず、周囲の大人たちが合理性と目的優先で人間を扱う場面が幾度も出てくる。ある父親の振る舞いは、愛情の欠如という意味で非常にイケズで、子どもの心に残る傷として描かれている。僕はその描写に、社会的な無関心さや目的のために個人を切り捨てる残酷さを重ねてしまった。
最後に『魔法少女まどか☆マギカ』をあげる。ここでは、契約を持ちかける存在のあまりにも冷徹な論理が心を抉る。外見は無邪気でも、本質は取引だけを求める存在が少女たちの未来を
弄ぶシーンは、まさにイケズの極みだと感じる。その冷たい合理性が放つ不気味さは、単純な悪意よりも深く根を張っている。僕には、こうした描写があるからこそ作品全体の倫理的重みが深まるように思えるし、観客としても容易に忘れられない。