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この作品は、天候を操る『雨使い』の一族を巡る世代を超えた物語。現代を生きる高校生・雨宮澪は、祖母の死をきっかけに自分が最後の雨使いであることを知る。澪の能力は不完全で、雨を降らせるたびに記憶を失っていくという設定が心に刺さる。特に、幼馴染の陽介が澪の変化に気付きながらも見守る関係性が秀逸だ。
過去編では祖母・雨宮つゆきの戦時中のエピソードが描かれ、能力の代償としての苦悩が澪の運命と重なる。水海作品でお馴染みの、自然と人間の関わりをテーマにした深いストーリー展開が楽しめる。澪が最終的に選んだ『能力を捨てて普通に生きる』という決断は、読者に『特別であること』の意味を考えさせる。
水海さんの最新作は、異世界と現代を繋ぐ不思議な『鏡』をめぐる物語だ。主人公の高校生・湊は、古道具屋で手に入れた鏡を通して、水の都と呼ばれるファンタジー世界『アクアリア』に迷い込む。そこで出会った人魚の少女・リリアと共に、鏡の秘密と両世界を脅かす危機に立ち向かうことになる。
アクアリアの美しい風景描写と、湊の等身大の悩みが交錯するのが魅力。特に、リリアが歌う『記憶の唄』によって過去の真実が少しずつ明らかになっていく展開は、水海さんらしい繊細な筆致だ。現代とファンタジー世界の文化の違いから生まれるコミカルなやり取りも随所に散りばめられていて、重くなりすぎないバランスが絶妙。
最終的に湊は、鏡が単なる扉ではなく、人々の『忘れられた願い』を形にしたものだと知る。ラストシーンの、涙を流しながら鏡を壊す決断には、読後も胸に残るものがある。水海作品特有の、切なくも温かい終わり方だ。
今作の舞台は海辺の小さな町で、主人公の少女・小波が拾った瓶の中から現れたのは、なんと自分そっくりの『もう一人の自分』だった。この『影小波』と本当の小波が入れ替わりながら、町で起こる不可解な事件を解決していく。最初は戸惑っていた小波も次第に、影小波が持つ特殊な能力――人の心の『影』を見る力に気付いていく。
水海さんらしい心理描写が光る作品で、特に小波と影小波の関係性の変化が丁寧に描かれている。途中から、影小波が実は小波の抑圧していた感情の化身だとわかる展開にはハッとさせられる。海をテーマにした過去作とはまた違う、深層心理に迫るような内容で、読むたびに新しい発見がある。
ラスト近くの、二人が融合するシーンの比喩表現が特に秀逸で、『波が砂に溶け込むように』という描写から、読者は様々な解釈を楽しめる。水海作品の中でも、特に哲学的で考えさせられる一作だ。