細かな表情を際立たせるには、テンポの操作が肝心だと感じる。私が目を引かれる作品では、同じ表情を複数の角度や距離で繰り返すことで微妙な変化を浮かび上がらせていることが多い。例えば一瞬の視線の動きや口角の違いを、連続したコマで少しずつ変えていくと読者は自然とその差を拾う。
また、背景情報の扱いもポイントだ。背景を単純化したり、逆に詳細に描いて周囲の静けさを示すことで、顔の表情が相対的に際立つ。『よつばと!』のような日常系では、広い余白やゆったりしたコマ割りが些細な表情の変化を優しく見せてくれる。私は人物の顔だけを切り取ったコマと、それに続く広い見開きの対比がとても効果的だと感じている。
さらに、画面の空白(いわゆる余白)を“呼吸”として使うと、読者に感情を咀嚼させる時間を与えられる。セリフの量を抑える、効果音を控える、といった小さな工夫で、
しのびない(抑えきれない)表情がよりドラマチックになることを何度も確認してきた。