表情を描くときの鍵は、感情を“見せる”のではなく“伝わる”ようにすることだと考えている。顔のシルエットやパーツの相互関係を意識すると、同じ喜びや悲しみでも説得力がぐっと増す。まず大きな方針としては、顔全体で感情を表現すること。目だけ、口だけに頼らず、眉の角度、まぶたの開き具合、頬のライン、顎の引き方や頭の傾きといった複数の要素を組み合わせると自然に見える。
小さな変化で大きな印象が出るのが面白いところで、私もよく試行錯誤している。例えば目は表情の中で最も情報量が多いパーツだから、瞳の大きさや瞳孔の位置、白目の見える量で感情を細かく調節する。驚きは瞳孔拡大+まぶた全開、恥ずかしさは視線をそらすことで表現できる。眉は感情のヒントを短く示してくれる部分で、少し下げるだけで悲しげに見えるし、中央を寄せれば怒りに見える。口元は形だけでなく、唇の厚み、歯の見え方、口角の角度でニュアンスが変わるので、口を小さく開ける、唇を噛む、歯を見せて笑うなどバリエーションを用意しておくと便利だ。
輪郭や髪の動きも侮れない。頬の丸みや顎のラインで年齢感や柔らかさが伝わるし、髪や衣服の動きで表情に“勢い”を付けられる。汗、涙、ブラッシュ(頬の赤み)といった小道具的表現は使いどころを選ぶと強力で、過剰に使うと安易な表現になりがちなので、シーンの温度感に合わせるのがコツだ。線の太さや描き込みの密度を変えて、感情の強さを視覚的に示すのもよく使う手法だ。
マンガで魅力的に見せるテクとしては、コマ割りと間の取り方を大事にしている。クローズアップで一瞬を切り取る、逆に少し距離を取って表情の変化を見せる。表情の“始まり→盛り上がり→余韻”を数コマで追うと、読者に感情が伝わりやすくなる。参考例として、微妙な感情の機微を丁寧に描く作風は『君に届け』の描写が勉強になるし、誇張で感情を分かりやすくするなら『ワンピース』の表現力が参考になる。練習法は、写真や動画を見て瞬間の表情をスケッチする、別の作家のコマ割りを模写して間の取り方を学ぶ、そして自分のキャラで同じ感情を何通りも描くこと。そうすることで表情の引き出しが増えていく。
表情は技術と観察の積み重ねで磨かれる部分だから、焦らず色々な方法を試してみるといい。描いているうちに、自分だけの“
彼女フェイス”が自然と出来上がってくるはずだ。