灰色の檻を抜けて、光の明日へ三年前、恋人の須藤悠真(すどう ゆうま)は国内有数の富豪の令嬢に取り入り、私、芳賀結希(はが ゆうき)を捨てた。
帰宅途中に暴漢に襲われ、凌辱された末に荒れ野に捨てられて死を待っていた私を救い出してくれたのは、黒川湊斗(くろかわ みなと)だった。
故郷を離れ、格安アパートで同棲した三年間の平穏な生活は、私に未来への希望を抱かせてくれた。
一生妊娠できないと宣告されていた私が、妊娠検査薬を手に湊斗へこの吉報を伝えようとした時、彼が誰かと話している声が聞こえてきた。
「お坊ちゃま、お嬢様がそろそろ遊びを切り上げて戻るようにとおっしゃっております」
「……もう少し、待て」
「まさか……あの芳賀結希とかいう身寄りのない女を本気で好きになったわけではありませんよね?
彼女の男を奪い、さらに暴漢に襲われるよう仕向けたのがあなたの実の姉だと知ったら、恐らく……」
「黙れ!俺がこんな下賤な女を好きになるわけがないだろう。ただの遊びだ。なるべく早く帰ると姉さんに伝えておけ」
私が救済だと思っていたものは、またしても運命が仕掛けた残酷な悪戯に過ぎなかった。