翻訳の手触りと原語の匂いを比べると、その差が予想以上に面白く感じられることが多い。読んでいる間に私は作者の息遣いや言葉の重みを探そうとする習性があって、翻訳版と原語版の違いは単なる語彙の差以上のものを教えてくれる。
例えば、'The Lord of the Rings' の古めかしい言い回しや歌のリズムは、訳者がどれだけ苦心しても原語に宿る音楽性を完全には再現しきれない場面がある。原語で読むと人名の響きや詩の韻律が直接耳に入ってきて、物語の世界観が微妙に違って感じられることがあるのだ。翻訳は読みやすさや文化的換算という価値を提供してくれるが、原語は作者が選んだ語感や語順、言葉遊びをそのまま伝えてくれる。
また、語学的な学びという面でも利点がある。原語を通して比べると、訳者がどの語に力点を置いたか、どういう解釈を経て訳語が選ばれたかが透けて見える。そうした比較作業を繰り返すと、物語の読み方や解釈の幅が広がるし、同じ一文でも受け取る印象が変わることに驚かされる。だから時間に余裕があるなら、翻訳版で物語の流れを掴んだ上で原語に触れるのがおすすめだ。