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腹芸が光る作品といえば、やはり『孤狼の血』シリーズが外せません。特に役所広司さんの演技は圧巻で、表面上は飄々とした刑事を演じながら、その目つきや微かな表情の変化で裏の暗さを感じさせるんです。この『見せない恐怖』を表現できる役者は本当に稀有です。
ドラマなら『カルテット』もおすすめ。松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平という豪華キャストが、言葉にできない複雑な感情を目だけで表現し合うシーンは、何度見ても鳥肌が立ちます。特に四人が無言で楽器を演奏しながら、それぞれ違う思いを抱えているシーンの緊迫感はたまりません。
腹芸の極致を感じたのは、『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊の演技です。あの作品では、喪失感を抱えた男の感情が、ほとんど台詞なく表現されています。運転席で微かに震える手や、後ろ姿からにじみ出る孤独感が、言葉以上に雄弁に語りかけます。
最近見た中では『ある男』の妻夫木聡の演技も秀逸でした。普段は温厚な表情を保ちながら、キレた瞬間の豹変ぶりが、それまでの穏やかさとの対比でより強烈に迫ってきます。こういう、普段と非日常のギャップを見せる演技こそ、腹芸の真髄ではないでしょうか。
腹芸というと、どうしても思い出すのが『キサラギ』の登場人物たちです。あの作品では、一見普通のサラリーマンたちの会話の中に、実は深い人間ドラマが隠されています。役者たちの微妙な表情の変化や言葉の端々に込められた感情が、観る者にじわじわと伝わってくるんですよね。
特に印象的なのは、中村靖日演じるキャラクターの沈黙の演技。台詞は少ないのに、目線や仕草で不安や後悔を表現しているのがたまらなくリアルです。こういう『見えない部分で語る』演技こそ、真の腹芸だと思います。最近の作品では、『寝ても覚めても』の役者たちの繊細な表情の変化も秀逸でした。