その問い、嬉しい驚きがあるよ。海の住人が主役という視点は、単なる種族の違いを超えて“境界”や“外部性”を描く力が強いから、好奇心を刺激されるんだ。
僕がまず勧めたいのは『ONE PIECE』の
フィッシュマン関連エピソード。特に“
魚人島編”は、魚人という存在を単に敵味方で描くだけでなく、差別や歴史的なトラウマ、共存の可能性を丁寧に掘り下げている。戦闘シーンの見せ方やキャラクターの葛藤に感情移入しやすく、魚人である登場人物の個別ドラマが強烈に胸に残る。アクションを楽しみたい人にも、人間と異種族の関係性を深く味わいたい人にも刺さるはずだ。
次にホラー寄りの作品として『GYO』を挙げる。ここでは“魚”というモチーフが恐怖そのものとして振る舞い、人体や都市、環境問題と結びついて異様な展開を見せる。グロテスクな表現が多い分、海や生物を巡る不穏さや不安感をダイレクトに味わいたいときに向いている。対照的にSF寄りの視点が好きなら『BLUE SUBMARINE NO. 6』が面白い。人間と海生人類(ハイブリッド)の衝突を描き、倫理・科学・戦争という大きなテーマと魚人的存在の悲哀が絡む。最後にしんみり系で勧めたいのは『人魚』(高橋留美子の‘人魚’短編集など)。人魚の不老不死や孤独を通して“人間性”を問う作品群で、魚人を通した物語の多様性を改めて感じさせてくれる。
結局、求めるトーン次第で入口が変わる。冒険と友情を重視するならまず『ONE PIECE』、不気味な海の恐怖を体験したければ『GYO』、SF的な重厚さを味わいたければ『BLUE SUBMARINE NO. 6』、哀感を楽しみたければ『人魚』からどうぞ。どれも魚的存在を主役級に据えた作品で、それぞれ別の角度から海の“もう一つの社会”を覗ける。個人的には、読むたびに視点が広がる感覚が好きだよ。