潮の匂いを思い浮かべながら設計図を引くと、意外と作り甲斐があるプロジェクトだと気づく。まずはリファレンス集めを徹底することから始めるべきだ。『ワンピース』の
フィッシュマンは種族や個体で外見が大きく異なるから、自分が目指す“現実的”なバランスを決めるのが肝心。顔のプロポーション、
鱗の密度、ひれの位置を紙に描いて、動きや視界への影響を想定しておくと後の修正が楽になる。実寸を取ってパターンを作り、可動域を確保することを忘れないでほしい。
素材選びは勝負どころだ。肌の質感にはシリコーンやフォームラテックスを多用するのが現実的な表現に向く。シリコーンは肌触りと透明感が良いがコストが高めなので、顔周りや露出部分に使い、胴体は伸縮性のあるライクラやネオプレンにラテックス塗装で質感を足すと効率的だ。鱗はシリコーンでスカルプ→型取り→複製するか、EVAフォームや熱成形プラスチックで段差を作る方法がある。前者はリアルだが重量と手間が増える。ヒレは薄めの熱可塑性プラスチックかネオプレンを芯にして、縁にワイヤーを仕込み形を保持する。目や歯は樹脂でキャストし、接着は皮膚用接着剤(例:プロセイド等)や医療用アドヒーシブを使う。
塗装はレイヤーを重ねること。下地に柔軟なベースコートを入れ、エアブラシでグラデーション、細部は筆でドライブラッシング、ウェットルックが欲しければシリコン用の透明グロスやグリセリンを軽く使う。内側の通気と着脱性も計画し、ジッパーや隠しマグネット、分割構造で長時間の着用に耐えるようにする。安全面は忘れず、素材は肌テストを行い、長時間使用時の熱と蒸れを想定した冷却や休憩プランを組むこと。制作過程で撮影して記録すると、次回の改良が飛躍的に楽になる。作る過程そのものが面白いし、仕上がったときの満足感は格別だと断言できる。