道行き小説の魅力は、読者と一緒に歩いているような臨場感を作れることだ。靴底で感じる砂利の感触、遠くで聞こえる踏切の音、ふと顔を撫でる風——五感を刺激する描写を散りばめると、没入感がぐっと増す。
『銀河鉄道の夜』のように、移動手段そのものが物語の象徴になる場合もある。バス停のベンチで
雨宿りしている間に、隣に座った老人から聞く昔話が、実は主人公の運命を暗示していたり。
道程の節目節目に伏線を仕込むことで、単なる移動記録から意味のある旅物語へと昇華できる。
到着地点よりも、途中で気付いた小さな発見に重点を置くと良い。空き地に咲いたタンポポを見つけたとか、通学路のたばこ屋が閉店していたとか。そんな些細な変化こそ、人の心の動きを映し出す鏡になる。