古典の道行きと言えば、まず思い浮かぶのは『源氏物語』の須磨明石の巻です。光源氏が都を追われて赴く須磨での描写は、自然の荒々しさと主人公の心情が見事に対応しています。
波の音や松風が、都を懐かしむ源氏の心をさらにかき立てる様は、まさに道行き文学の真骨頂。
『平家物語』にも、都落ちする平家一門の哀切極まる道行きがあります。特に能『敦盛』の元になった場面は、栄華の
終焉を象徴するような移動の描写が胸に迫ります。軍記物語ならではの劇的な表現と、滅びゆく者への哀惜が絡み合った独特の世界観がありますね。
『方丈記』の放浪の記録もまた、無常観に満ちた道行きとして特筆すべき作品。
鴨長明が描く移ろいゆく風景と人生の儚さは、現代の読者にも深い共感を呼び起こします。