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空間の断絶をテーマにした作品で思い浮かぶのは、オルファーの『忘却の部屋』だ。白い糸が無数に張り巡らされた空間が、人間関係の希薄さを可視化している。糸は触れれば切れ、再び繋ぎ直すこともできるが、元の形には戻らない。
このインスタレーションを体験した時、物理的な距離以上に心の溝が広がる感覚に襲われた。展示室の隅に置かれた古い電話機から聞こえる途切れがちな会話が、コミュニケーションの不確かさを増幅させていた。離れていても繋がっているという幻想が、糸の切れる音で粉々になる瞬間が特に印象的だった。
『Telepresence Garden』というデジタルアートプロジェクトが面白い。離れた場所同士をリアルタイムで接続した庭園で、片方で花を摘むともう片方の庭で花が散る仕組み。参加型インスタレーションとして開発されたこの作品は、物理的に離れていても行為が連鎖する関係性を詩的に表現している。
実際に触れてみると、自分の動作が遠くの見知らぬ人に影響を与えることに最初は戸惑った。だが次第に、目に見えない糸で結ばれたような不思議な親近感が生まれてきた。デジタル技術が可能にした新たな共感の形だと思う。
クリストとジャンヌ=クロードの『包まれた海岸』は壮大なスケールで隔たりを表現した例だ。オーストラリアの海岸線を布で覆うこの作品は、人間と自然の間に人工的な境界線を引く行為そのものに強いメッセージを感じる。現地で目にした時、青い海と白い布のコントラストが生み出す非現実的な光景に息を呑んだ。普段は気にも留めない『境界』という概念をこれほどまでに可視化した作品は他にない。
アーティストのヤーオイ・クサマが手がけた『光の柵』シリーズは、レーザー光線で物理的バリアを作り出す実験的な作品群。暗闇の中で突然現れる光の壁は、見知らぬ他人との適切な距離感を想起させる。ある展示会で実際にこの作品を体験した時、光をくぐり抜ける度に奇妙な解放感と同時に罪悪感を覚えたのを覚えている。技術が発達した現代における新たな『間合い』の概念を問いかける力作だ。