音楽が場面の感情を支配する力について考えると、つい細部に目がいってしまう。音楽監督が『
インノセント』の主題歌について説明するなら、まずは“物語の色”を決める役割を強調するだろう。主題歌の調性やボーカルの質感、楽器の選択は登場人物の内面や世界観に直接結びつくから、聴き手の最初の印象をひっくり返すことすらあり得る。
自分が実際にその説明を聞いた場面を思い出すと、監督と音楽監督が互いの言葉を繋げながら、テーマのフレーズがどのシーンに刺さるかを綿密に話し合っていた。例えば『君の名は』で主題歌が恋や喪失の感情を補強したように、『インノセント』の主題歌も物語の主要な感情線を“言語化”する。サビの高揚、Aメロの穏やかさ、ブリッジの揺らぎ――それぞれが特定のキャラクターの瞬間に対応することで、視聴者の解釈を誘導する。
また、音の質量やミックスの扱いも重要だと彼らは言う。主題歌が画面の外側で鳴るときと、劇中音と一体化するときとで受け手の体験は変わる。私はその説明を聞いて、主題歌が単に耳に残るメロディ以上の“情報”を作品に埋め込む装置であることを改めて実感した。最終的には、楽曲が作品の記憶を形作り、観客が作品をどう再生するかを決める鍵になるという結論で話は締めくくられていた。