白い檻
——目を覚ますと、そこは閉鎖病棟だった。
自殺未遂で昏睡状態に陥っていた私は、すべての記憶を失っていた。
周りには、奇妙で不穏な者たちばかり。
曖昧なことしか語らない主治医の〝先生〟。
無表情な看護師の〝笑い犬〟。
そして、最も危険とされる隣の病室の男——〝王様〟。
彼は暴力と錯乱を繰り返す狂人のはずなのに。
「会いたかった」
そう言って優しく触れてくる彼に、記憶を失った私の心は揺さぶられる。
私は、なぜ死を選んだのか。
この歪んだ世界で、誰を信じればいいのか。
そして、〝王様〟は一体——何者なのか。
閉ざされた白い檻の中で、記憶と愛、そして狂気が交錯する。
記憶喪失BLサスペンス。