雨しずくの調べ
夫の亡き親友の妻が、妊娠検査の写真をSNSに投稿した。
【あなたの精子のおかげで、私にも自分の赤ちゃんができました】
「父親」欄には、夫・綾野匠哉(あやのたくや)の名前がはっきりと記載されている。
私がコメントしたのは、ただの「?」マークだけだった。
すると、匠哉からすぐに電話がかかってきた。
「お前さ、人としての情がなさすぎだろ!彼女は夫を亡くして、ずっと一人で寂しく生きてきたんだ。ただ、子どもがいれば少しは心が和らぐって思っただけだよ。それの何が悪い?
それに、真木悠真(まきゆうま)は俺の親友だったんだぞ。親友の妻を助けるのは、男として当然の義務だろ?それが義理ってもんだ、わかんねぇのかよ!」
それから間もなくして、夫の亡き親友の妻は、今度は高級マンションの写真をアップした。
【そばにいてくれてありがとう。あなたのおかげで、また家という温もりを思い出せました】
キッチンで忙しそうに立ち働く匠哉の後ろ姿が、写真の中でやけに鮮明だった。
そのとき、私は静かに思った。
——この結婚も、もう終わりにしよう。