消えた温もり、戻らぬ日々
桜庭梨央(さくらば りお)は夫にとって高嶺の花である森本結衣(もりもと ゆい)の運転する車に轢かれた。
病室で目を覚ますと、夫の相良時哉(あいら ときや)が二人の子供を連れて病床のそばに立っていた。
梨央が目覚めたことに気づくと、三人は責めるような表情を浮かべた。
時哉は眉をひそめた。「大丈夫か?なぜあんなに不注意に歩いていたんだ?」
長男の相良悠樹(あいら ゆうき)は唇を尖らせて文句を言った。「ママ、どうして突然結衣さんの車の前に飛び出したの?結衣さんを怖がらせちゃったじゃないか」
次男の相良拓海(あいら たくみ)も頷いて同調した。「そうだよ。結衣さん、ずっと泣いてた。全部ママのせいだ!」
梨央は布団の中の手を固く握りしめた。目の前のまだ若い夫と幼い子供たちを見つめ、涙が溢れてきた。
神が梨央にもう一度やり直すチャンスを与えてくれて、彼女は50年前に生まれ変わった!
この年、梨央は三十歳、夫の時哉は三十五歳。時哉は学士院の最年少会員になったばかりで、国の未来を担う逸材として、その前途は洋々たるものだった。
そして、二人には十歳になる双子の悠樹と拓海がいた。