愛はなかったように
お金を返してもらう約束の最終日、私は真壁時礼(まかべ ときのり)の義妹から、貸していた六百万円を取り戻した。
その翌日、時礼は私の目の前に、見たこともない帳簿を叩きつけた。
「去年のお前の誕生日には、162000円を送った。
十周年の記念日には、2160000円。
それに、毎月初めには生活費として400000円も送っていた。
今日中に、全部返してもらう」
私は動けなくなった。時礼は笑っていたが、その顔には少しの温もりもなかった。
「どうした?金がないのか?
朝倉音羽(あさくら おとは)、詩乃に勝手に嫌がらせするなんて、ひどかったな。
これはお前への罰だ。今日返さなかったら、これから三年間、お互い一切会わない。お前も俺に会いに来るな」
その後の三年間、私は一度も時礼に会わなかった。探しにも行かなかった。
彼が義妹とペアリングをつけて世界を旅していた頃、私は幼なじみと、親族や友達の前で結婚式を挙げた。
彼が義妹と海辺で手をつなぎ、キスを交わしていた時、私は夫と、猫一匹、犬一匹と一緒に新居へ引っ越した。
すべてが、順調に進んでいるはずだった。
なのに時礼、どうしてまた深夜に、私が泊まっているホテルの下で泣きながら「ごめんなさい」なんて言うの?