夫が初恋を守るために私を海に沈めた件
妊娠三ヶ月目、夫が初恋のために海に飛び込むよう頼んできた。
妊娠している私に、隼人(はやと)が言った。
「海に飛び込んで、静流のネックレスを探してくれ」
私は信じられなくて、涙で腫れた目で首を横に振った。
それを見かねた彼の友人たちが、あきれたように声を上げる。
「ただ水に入るだけだろ?ここで泳げるの、お前だけじゃないか!」
「知華(ちか)さん、それは静流(しずる)のお母さんの形見なんだよ」
私が必死で隼人の服の裾を掴むと、彼はしばしの間ためらうような目をしていた。
最後の一瞬、彼の心に残っているかもしれない罪悪感を信じたかった。
でも、それもすぐに消えた。
「知華、水泳が得意だろ。大丈夫だよ」
優しげな顔でそう言われたとき、私は全てを諦めた。