苗疆聖女の帰還:社長の後悔は止まらない
藍珈(らん か)と秦時聿(しん じいち)は五年間を共に過ごし、ようやく秦時聿の母・秦玉蘭(しん ぎょくらん)が彼女を秦家(しんけ)に嫁がせることを許した。
しかし、藍珈はもはや嫁ぐつもりはなかった。
「お祖父さん、私は聖女(せいじょ)として故郷に帰りたい」
「聖女は一切の人情や恋情を断ち捨て、決して我が村を出ることはできぬ。それでも覚悟はできたのか?」
藍珈は、砕け散った同心円様式の古玉を見つめ、声を強くして言った。
「……もう、覚悟はできてる」
電話で、祖父は長く嘆息した。
「言ったであろう。お前とあの男には、結ばれる運命はないのだ」
そうだ、祖父はとっくに言っていた。
ただ、秦時聿が別の女性のわずかに膨らんだお腹をそっと撫でているのを見た時、初めてそれを信じたのだ。
「聖女継承の儀式である聖女大典(せいじょたいてん)は一か月後だ。その間に彼への愛情を断ち切らなければならない」
「……はい」
彼女と秦時聿の婚礼もまた、一か月後に定められていた。