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第7話

last update 최신 업데이트: 2025-05-13 17:02:11

「佐野くんっ!!」

佐野くんを引き止めたいと思ったら、今までにないくらい大きな声が出てしまった。

「菊池さん?」

佐野くんが立ち止まり、驚いた顔でこちらを振り返る。

「佐野くん待って。私は、佐野くんのことが嫌いなわけじゃないの」

「え?」

「私の話、聞いてくれる?」

ようやく佐野くんに追いついた私は、自分の本当の気持ちを彼にぶつけることにした。

道端に移動し、私は佐野くんと向かい合って立つ。

「あのね。私……中学のあの頃は、男の子と付き合うのが初めてだったから。どうして良いのか分からなくて。好きな人の前では緊張して、上手く話せなかったんだよね」

「……」

佐野くんは黙って、私の話に耳を傾けてくれている。

「中学生の頃に、佐野くんと別れた過去があるから。佐野くんと話すときは、気まずく感じてしまって。今でも緊張してしまうんだ。だから、別に嫌いとかじゃないの」

こんなことを話して、佐野くんに嫌われないか心配だけど……誤解されたままよりも、ずっといい。

ドキドキが治まらない私は、胸の辺りを手でギュッと掴む。

「突然、こんなことを言ってごめんね?」

「いや。俺は、菊池さんの本音が知られて嬉しいよ。そっか……緊張してただけなのか。俺も別れたあとは、何となく気まずくて。菊池さんを避けていたところがあったから。菊池さんも俺と一緒だったんだな」

話し終えた私が佐野くんを見ると、彼はホッとしたように微笑んでいた。

「交際していたとき、菊池さんがあまりにも喋らないものだから。もしかしたら、俺からの告白を断れずに、無理して付き合ってくれてるのかと思ってた」

「そっ、そんなことない。あのとき私は……佐野くんのこと、ちゃんと好きだったよ」

一瞬“今も”という言葉が、口から出かかったけど。私は必死に飲み込んだ。

「……ありがとう」

佐野くんの優しい笑顔を見て、私もホッと胸を撫で下ろす。

「俺たち、二ヶ月だけでも付き合っていたのに。お互いのこと、全然分かってなかったんだな。中学のあのとき、菊池さんともっとしっかり話せば良かった」

「そうだね。お母さんの再婚相手が、佐野くんのお父さんだって知ったときはびっくりしたけど……」

私は、佐野くんから目を逸らしそうになるのを必死に堪える。

「お母さんの幸せのためにも、新しいお父さんと佐野くんを大切にしたい
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