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第4話

Penulis: 藤永ゆいか
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-16 15:36:01

「は?なんで、菊池さんがここに……」

互いに指をさし、目を見開く私と佐野くん。

「えっ。もしかしてあなたたち、知り合いなの?」

「う、うん。同じ高校のクラスメイト……」

私はお母さんに、正直に答える。まさか、佐野くんが来るなんて……どういう展開?

それから再び、4人掛けのテーブル席にお母さんと並んで座るも、心臓のドキドキはなかなか治まらない。

だって私の目の前には、仏頂面の佐野くんが座っているんだもの。

「初めまして、陽菜ちゃん。僕は、佐野光佑といいます。そして、こっちは息子の伊月」

「……」

光佑さんに紹介されるも、佐野くんは黙って窓の外を見つめているだけ。

「はっ、初めまして、陽菜です。いつも母がお世話になってます」

私は立ち上がり、光佑さんと佐野くんに向かって軽く頭を下げた。

「それにしても驚いたわ。まさか陽菜と伊月くんが、同じ高校のクラスメイトだったなんて。すごい偶然ね〜」

「本当だね。誕生日は伊月のほうが先だから、お兄ちゃんかな?」

そうか。お母さんたちが結婚するってことは、佐野くんが私のお兄ちゃんになるんだ。

何日か前に、ほんの少しでも佐野くんに近づけたら良いのになとは思ったけど。

まさか、元カレが義理の兄になるだなんて……そんなことあるの!?

「翔子さん。もしかしたら、運命って本当にあるのかもしれないね」

「やだわ、光佑さんったら。子どもたちの前で、恥ずかしい……」

ふふ。お母さん、嬉しそうだなあ。光佑さんと笑顔で話すお母さんを見て、私は目を細める。

それからコーヒーや紅茶を注文して、待っている間みんなで他愛もない話をした。

お母さんと光佑さんの出会いから、私と佐野くんの学校の話など。

といっても、佐野くんは終始無言だったから。ほとんど3人で話していたのだけど。

光佑さんは、今日会うのが初めてだとは思えないくらいに、すごく話しやすくて。お母さんのことを、とても大切に思ってくれているんだってことが会話から伝わってきた。

「陽菜ちゃん、伊月。僕は、翔子さんと一緒になりたいと思ってる。だけど、もし陽菜ちゃんや伊月が嫌っていうのなら……」

真剣な面持ちの光佑さんの言葉に、私は向かいに座る佐野くんをちらっと見る。

佐野くんは、二人の結婚をどう思っているのか分からないけど。

お父さんが亡くなってからのこの10年間、お母さんは朝から晩まで働いて、ご飯も毎日作ってくれて。私をここまで育ててくれたから。お母さんには、幸せになって欲しい。

だから……私と佐野くんの過去のことで、お母さんたちの幸せを奪っちゃダメだよね。

「あっ、あの……!」

私は席から立ち上がり、勇気を振り絞って口を開く。

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