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名前だけの家族

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-07-01 12:00:00

私⃞に⃞家⃞族⃞は⃞い⃞な⃞い⃞。⃞愛⃞し⃞て⃞く⃞れ⃞る⃞家⃞族⃞は⃞。⃞

 物心つく頃、既に私の両親の間に愛は存在していなかった。

 シンガーソングライターの白石しらいし壮司そうじと舞台女優のつつみ光里ひかりは、互いに売れない時期に出会い、恋に落ちた。

 それから間もなくして母である光里は私を出産したが、いつまでも互いの夢を捨てきれずにいた二人の幸せな日々は、長く続かなかった。

 母は結婚と出産によって自分の夢が絶たれた事を父のせいにするようになった。

 「あなたのせいよ……!

 あなたのせいで私の夢が途切れてしまった!」

 そしてそれは父も同じで。

 「それを言うなら俺だってそうだ……!

 君と侑の為に朝も夜もなく働いて…

 シンガーソングライターとして、活動する時間が無さすぎる!」

 狭いワンルームで両親は頻繁に喧嘩し合い、その度にコップや皿が割れた。

 思い描いていた人生とは違うと、いつしか互いに不満を抱き、罵り合うようになっていったのだ。

 幼かった私は、ただいつも片隅で震えている事しかできなくて。

 「何よ……!私のせいだって言うの!?」

 「ああ、そうだよ!君が妊娠なんかしなければ……」

 「ひどい……!全部私のせいにする気?

 こんな事なら…あなたなんかに出逢わなければよかった!」

 「そうだな……!君と出逢わなければきっと…俺はもっと上手くやれてた!」

 若い二人のすれ違いは、修復不可能なほど深くなっていった。

 その後父は逃げるように女を作り、ほとんど家に帰っ
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