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第48話 氷壁の飛竜 ~マリーサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-04-24 21:05:55

「なんだ! あの大きいドラゴンは?」

あいつが大きな声を出す。

そんなに大きな声を出さなくても見ればわかるわ。

「あいつは確か、アルゲオという氷属性のドラゴンじゃったかな。

 氷壁の飛竜とも言われとるはずじゃ」

ねえさま、さすがいろいろ知ってらっしゃる。

「ボクも名前だけは聞いたことあるけど、実際に見るのは初めてだねー」

フォルトナはずいぶん呑気に構えていますわね。

「グォーーーーーー」

氷壁の飛竜アルゲオが一吠えすると、猛吹雪がマリーたちに向かってくる。

風雪に耐えながら、みんなが戦闘態勢を整え始める。

特にねえさまからは闘志がみなぎって見えるわ。

「さてと……

 ワシの出番じゃのぅ」

ねえさまが一歩前へ出るところにマリーが割って入ります。

「ねえさま、ここはマリーに任せてほしいの」

やる気まんまんのねえさまだけど、マリーもいいところ見せたいし。

今回はねえさまには悪いけど、マリーに戦わせてほしいわ。

「ん? なんじゃ、マリー。

 お前がやるというのか……」

ちょっと怪訝そうな口調でねえさまがマリーを見てきた。

「ねぇ、お願い、ねえさま。

 せっかく助けてもらったのだから、少しは役に立ちたいわ」

ねえさまが戦いたいのはわかるけど、任せてばかりでは立つ瀬がないわ。

ここは是非にでもやらせてほしいという思いもあり、今回は一歩も引かないつもり。

「うーん。

 仕方ないのぅ。

 マリーに任せよう」

マリーの覚悟を受け取ってもらえたみたいで良かったわ。

ねえさまにいいところを見せないとね。

「ねえさま、ありがとう」

ねえさまの胸に飛び込んでお礼を言うと、氷壁の飛竜の前へと向かった。

「なぁ、ゾルダ、マリーに任せて大丈夫なのか?」

あいつが、何か心配をしているようだけど、これぐらいの敵、マリーは大丈夫。

「まぁ、本来の力を出せれば、問題なかろう」

ねえさまはさすがわかってらっしゃるわ。

安心してマリーに任せてね。

「さぁ、氷だらけのドラゴンさん。

 マリーが相手しますわ。

 かかってらっしゃい」

氷壁の飛竜がマリーの方を向くと、また一吠えする。

「ガォーーーーーー」

そんな遠吠えを何度しても無駄ですわ。

荒れ狂う竜巻のような風雪がマリーの方に来たけど、一向に気にしないわ。

「それだけしか能がないの?

 このドラゴンさんは。

 それ以外してこないなら、こちらから行くわよ」

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  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第59話 ムルデの行く末 ~アグリサイド~

    まだゾルダは怒っている……当分は荒れそうだ。いいかどうかは別にして、一応これで騒動は落ち着いたのだと思う。領主であるランボは魔族となり消えた。傍若無人に振舞っていた領主がいなくなったことで、この街は救われるのだろうか。「マリー、申し訳ないけどあの鉱山に一度戻ってくれないか。 ゾルダも、いつまでも怒っていないでさ…… ちょっと付き合ってほしい」ただ落ち着いたとは言え、俺はなんかずっとモヤモヤしている感じが残っている。まずは生贄の儀式で助け出せなかった人たちのもとへと向かおうと思った。「なんでマリーが連れて行かなといけないの?」「悪いとは思うけど、お願い、マリー。 どうしても助け出せなかった人たちを……」「弱い者がどうなろうと知ったことではないですわ。 マリーにはその気持ちはよくわかりませんわ」マリーは文句を言いながらも、鉱山まで連れて行ってくれた。ゾルダはと言うと「もうやってられん。 ワシは剣の中に戻るぞ」と言い残し、剣の中に姿を消した。まだまだ怒りが収まらずというところなのだろうけど……外で暴れるよりかはマシかな。鉱山に着くと生贄の儀式があった場所まで歩いていく。あれほど居た憲兵たちも大半が魔族だったようで、ランボに付いていなくなった。残った憲兵たちはランボたちの恐怖に怯え、仕方なくといった感じだったのかもしれない。人気が少なくなった坑道を歩いていくと、先ほどの大きな空洞に着いた。そこでは何名か救えた人たちと、残った憲兵が、生贄の儀式で犠牲になった遺体を並べていた。「すまなかった…… 救い出せなくて……」そこにいた男の人にそう声をかけた。自責の念が大きく、何か気の利いた言葉は出せなかった。それでも、生き残った人たちは「そんなことないです。 この街は生きている心地がしなかった。 あのまま生きていても死ぬ以上の苦しみがあったのかもしれません。 それを救ってくださったのだから……」「それでも、俺は何も出来なかった……」「何も出来なかったなんて、言わないでください。 確かに多くの犠牲も出しましたが、それでも大半の領民は生きています。 その領民たちの多くがあなたに感謝していますよ」そう言われても何も成せなかった気がする。もっとうまくやれたのではないかと……しばらく遺体の整理を見届けていると、

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第58話 ゾルダの怒り ~アグリサイド~

    俺は今、空を飛んでいる。といっても浮遊魔法が使えるようになった訳ではない。マリーに吊り下げられて飛んでいる。ゾルダがランボを追うために一緒に連れてこられている。マリーはぶつぶつ文句を言っている。「なんで浮遊魔法ぐらい使えないの。 マリーがなんでこんなことしないといけないの。 これじゃ、ねえさまのサポート出来ないじゃないの」ごもっともです。それはそれで申し訳ないとは思うが……封印の所為である一定の距離から離れられないんだから仕方ないじゃん。でもさ、こう汚いものを持ち上げる見たなように持たなくてもいいじゃん。もっとしっかり持ってほしいんだけどな……俺、高いところ苦手なんだよね……そういう話はおいて、ランボを追いかけてきたけど、アスビモが登場。どうやらゼドに封印を嗾けたのはこのアスビモらしい。「おい、アスビモとやら! 逃げるでないぞ」ゾルダの怒りは相当なようで、誰の目から見てもその怒りがわかるくらいだ。アスビモが行く方へ先回りをして、足止めをしていた。「私は逃げていませんよ。 もとより戦うつもりもございませんので。 あなたが勝手に戦おうとしているだけではありませんか?」こうなんかいちいち癇に障る話し方をするな。このアスビモって奴は。さらにゾルダの怒りが増している気がする。「お前の意思など知らん。 ワシがお前を倒さねば気持ちが収まらんのじゃ」アスビモは首を振りながら呆れた顔をしている。「ふぅ……仕方ありませんね。 ランボ様は私の大切な商売相手でございます。 私とランボ様はこの場から去らせていただきますが、別のお相手を用意させていただきます」「別の相手なぞいらん。 お前とランボとやらが相手せい」ますます会話が成り立っていないというかなんというか。ゾルダは聞く耳を持っていない。「あの……儂は…… あと、儂のこと『商品』って言ってなかったか……」状況にランボが戸惑っているようだ。ゾルダを相手にしているのを止められていたので、どうしたらいいかわかっていないようだ。「ランボ様、あなた様な方が相手するような方々ではございません。 ここは私の配下にお任せください。 あとランボ様のことは『商品』と言ったのではなく『商売相手』と言っています」アスビモはランボをフォローすると、配下を召喚し始めた。召喚の魔方

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第57話 悪魔の商人 ~ソフィアサイド~

    「おやおや、これはまた懐かしい顔ぶれで……」このワシに後ろから不意打ちをしおった奴か。なにやら、ワシたちを知っておるようじゃが……「あなたは確か…… アスビモ!」マリーが何か思い出したように、コイツの名前を叫びおった。「アスビモとな……」うーん。聞いたことがあるような無いような感じじゃのう。「マリー様におかれましては、いつも麗しいお姿でいらっしゃいますな。 そして、ソフィア様も、前にも増してお美しくなられたようで」あいつ、ワシの気にしている名前で呼びおったな。「おい、お前! その名前で呼ぶな! ワシはゾルダじゃ」アイツに向かってワシは怒鳴り散らした。「ソフィア……!?」あやつが不思議そうにワシの嫌う名前を言っておる。ここは思いっきりなかったことにしておかないといかん。「そんなことは気にするな。 まずはコイツ……アビスモ? アモビス……」「ねえさま、『アスビモ』です」上手く思い出せんワシにマリーが小声でフォローをしてくれたのじゃ。さすがじゃのぅ。「そうそう、アスビモとやらの話じゃ。 なんかワシらを知っておるようじゃが……」どこで会ったのかサッパリわからんのじゃがのぅ。アイツの口ぶりだと、だいぶ前に会っているようじゃのぅ。「失礼しました。ゾルダ様 私、マリー様が覚えていらっしゃった通り、アスビモと申します。 以前、ゼド様に大変お世話になりました」アスビモとやらはどうやら、ゼドの奴の近くにおったようじゃのぅ。「そうそう、ゼドっちのところに出入りしていた商人ですわ!」マリーが思い出したように、アスビモとやらの話をし始めた。「たしか、『悪魔の商人』と呼ばれていて、どこにも属していない一匹狼と聞いていますわ。 自分の利益になることであれば、どんなことでもすると……」ほぅ、その心意気は悪くはないのだがのぅ。「くくくくっ…… 私の事をそんな言い方しなくてもいいではないですか。 私は最大の利益が出るために動いているだけですよ。 商人の鏡ぐらいに言ってほしいところです」どうやらアスビモとやらは『悪魔の商人』と呼ばれるのは嫌なようじゃな。「そこが問題なのでしょう! 利益が出るなら、どんな手段にも出るという話ですわ。 敵であろうとなんであろうとコロコロ変わる風見鶏ってところですわね」マリーはアスビモ

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