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210.思いがけない再会

last update Last Updated: 2025-09-04 19:03:50

佳奈side

「なんでここに?」

三人が三人、怪訝そうな顔をして呟いた。

「それはこっちの台詞だよ!」

「それはこっちの台詞だわ!」

そして、同じセリフを口にした。

昼下がりのオフィス街で、私と佐藤、そして凛は、まさかの再会を果たした。今日も可愛く着飾っていた凛は、私たちを交互に見ると、ボソッと小さくつぶやいた。

「……あなた、個人事業主じゃなくて同じ会社の人だったのね。パーティーもこの人に頼まれてカメラマンやっていたの?」

凛は、佐藤さんのスーツの胸元にある社章をじっと見つめている。視線に気がついた佐藤さんは、しまったという顔をして、慌てて手で覆い隠していた。佐藤が慌てる姿を冷たい目で見ていたが、やがて視線を私の方へ移してきた。

「啓介から聞いたわ。本当に結婚するのね。」

「ええ、私も事前に啓介から、あなたに会うと聞いていたわ。」

互いに落ち着いた口調だったが、相手に聞こえるように淀みのないハッキリとした声で言

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