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二十二話 ラクーは使い魔?

Author: Tubling
last update Last Updated: 2025-06-09 22:47:38

 「魔力が回復してきたみたいだから、少し練習をしてみようかな」

 「そうだな。今は私もいるし何かあれば必ず助けるよ」

 ジークが力強くそう言ってくれたので、不思議と怖い気持ちがなくなり、前向きな気持ちでこの新たな魔法と向き合おうと思えた。

 意を決して学園で使った聖魔法を試してみる。

 あの時は確か必死でカールを操っている魔法を解除するように祈っていたのよね。

 今回は――――ジークがお疲れのように見えるから何か回復魔法を使ってみようかな。そんな気持ちを込めて祈りを捧げるように両手を組んで目を閉じた。

 すると庭園の時のように胸の奥が熱くなってきて、私の体が光り輝き始める。

 その状態を確かめる為に目を開いてみると、発光しているかのように私自身が白い光に包まれていた。

 そしてあの時も感じた、妙に懐かしい気持ち。

 この光に包まれていると、何だか家族に見守られているかのように感じてとても落ち着く。

 ジークの方を見るととても驚きながら目を見開き、私を凝視していた。

 でもその瞳に恐怖は感じられなかったので、内心ホッとしている自分がいる。

 新たな自分を受け入れるのにまだ戸惑っているのに、ジークにまで怖がられたら今の自分を受け入れる事が出来なくなりそうで、その事の方が怖かったのだ。

 彼が拒絶しないでくれている事が嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。

 「ふふっ、そんなに驚かなくても私は私よ」

 全身発光している状態で言う言葉ではない気がしたけれど、驚き固まっているジークにこの状態で会話してみた。

 「すまない……なんだか、女神様みたいで…………」

 「……………………」

 凄く恥ずかしい事を言われた気がする……顔に熱が集まってくるのが分かる。

 そんな風に見えていたの?

 とにかくこのまま聖なる力を宿した状態でいても仕方ないので、何か魔法を使ってみよう。

 そう考えた瞬間、私の目の前にラクーがぴょこんっと現れる。

 「クゥゥ――」

 「ラクー!」

 そしてあの時のようにまたラクーと私は共鳴し合い、1つになるような感覚を覚えたかと思うと、胸の奥から1つの魔法が浮かび上がってきた。

 「[治癒魔法]キュアプレアー」

 その言葉を発した途端に光は1つに集まり、ジークの中に溶け込んでいった。

 そして彼が一瞬だけ光った後、回復したジークのお肌はツヤツヤになっていた
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  • 孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~   二十話 仲直り

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