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第396話
最新チャプター
永遠の毒薬 第410話
そして、彼女はこの2年間で「隠れた大物」に変わった。しかし、これらのことはまだ紗希には伝えていなかった。「それなら、安心した！」紗希はほっと息をついた。「それで、直人との関係はどうなったの？」この三年間、紗希は一度も直人のことを話さなかった。でも、ニュースでは直人についての情報をいくつか見たことがある。渡辺家と桜坂家が結婚するというニュースが流れた直後、舞衣の父親が突然、一番の地位を退いた。そして、舞衣の母親が亡くなった。その後、舞衣もなぜか研究所を辞めた。1年足らずで、舞衣はみんなに羨まれていた優秀な女性から、哀れなお嬢様に変わってしまった。それでも、渡辺家は結婚を解消することはなかった。その時、紗希は舞衣の父親のことを秘密裏に調べた。しかし、この件は徹底的に隠されていて、何も分からなかった。そのため、ますます怪しく感じて、直人との関連を疑ったこともあった。「もうずっと会ってない」紗希は冷静にそう言った。彼女と直人との関係は、もう行き詰まっている。解決策は見つからない。だから、この3年間、ずっと引き伸ばしてきた。「それなら、これからどうするつもり？他に考えていることはある？」どんなことがあっても、紗希には幸せを見つけてほしいと願っていた。「今は、男を追うより、お金を追ったほうが楽しい！」紗希はそう言うと、自分で笑ってしまった。「男を追うって、どういう意味？」晴嵐が急に聞いてきた。紗希は驚いて沈黙した。三歳の子供でも、重要なことを言い当てるなんて！乃亜はすでに晴嵐のこうした言動に慣れており、冷静に答えた。「つまり、恋愛のことだよ」紗希は心の中で思った。三歳の子供が恋愛の意味を理解しているわけがない......「わかった！」晴嵐は真剣な顔で言った。「パパはママが追っている男だよ！」乃亜は恥ずかしそうに顔を赤らめた。違う！私はそんなことしてない！紗希はその言葉に大笑いした。本当に面白い！かわいすぎる！三人は笑いながら駐車場に向かって歩いた。車に乗った瞬間、乃亜は凌央がキャンピングカーから降りてきたのを見かけた。紗希は乃亜が見ていないと思い、こっそり言った。「凌央だ！」「見えたよ」乃亜は淡々と答えた。こんなに早く会うとは思わなかっ
永遠の毒薬 第409話
晴嵐は突然、先ほどの女性のことを思い出し、顔を指さして言った。「トイレの前で変なおばさんに会ったんだ。引き止められて、悪口を言われて、顔をつねられた。それに、男の子の服を着るなって言われた！」璃音のことは言わなかった。母親が妹のことを思い出してしまうかもしれないからだ。乃亜は驚いて急いで尋ねた。「そのおばさん、どんな人だった？」「そのおばさん、すごくブスだった！まるでおばあさんみたいだった！」晴嵐はその女性にひどい目にあったので、特に悪感情を抱いていた。だから、彼女のことを良く言うわけがない。乃亜............晴嵐はまだ小さいが、仕返しを忘れない性格だ。誰かにひどいことをされれば、必ず報復する。でも、なぜその女性が彼を悪口を言い、顔をつねったのかは分からない。拓海は晴嵐の顔を向け直し、さっきは気づかなかったが、今見ると白い顔に赤い痕が残っているのを見つけた。「君たちは車に行ってて、俺はちょっと電話をかけてくる」拓海の表情が真剣に変わった。乃亜は彼がその女性のことを調べに行くのだと理解し、特に質問せずに頷いた。そして、荷物を押しながら紗希と一緒に急いで出発した。晴嵐はおとなしく紗希の首に手を回して、ふわふわした声で言った。「ママ、どこに泊まるの？」「じゃあ、私と一緒に住んでもいいよ？」紗希はすぐに話題を繋いだ。乃亜は笑って言った。「忘れたの？今、私はスーパービリオネアだから、家がたくさんあって、どこでも住めるよ！」紗希も笑いながら言った。「そうだね、私たちのデザイン会社や法律事務所があちこちに広がっているし、私も富豪だよ！」三年前、乃亜が桜華市をあんな形で離れた時、彼女は本当に死んだと思い、しばらく一人で悲しんでいた。しかし、ある日、突然子供の写真が添付されたメールが届いた。その時初めて乃亜は死んでいなかったことを知り、二人は再び連絡を取り合い始めた。乃亜のことをすべて知ることになった。そして、乃亜は言った。ネットで話題の漫画「くず社長とその女たち」の作者は彼女で、儲けがすごいと。その後、乃亜はお金を出して、紗希にデザイン会社と法律事務所を開かせた。三年間で、紗希は桜華市で有名な女社長となった。しかし、紗希は知らなかった。乃亜が裏でずっと彼女をサポートしていたことを。「僕もお
永遠の毒薬 第408話
晴嵐は痛みで顔を歪め、白くなった顔で女性の腕を噛みながら叫んだ。「あなた、どうかしてるんじゃないの！？」女性の手が強く握られ、手首が折れそうになった。一瞬、晴嵐は「良かった」と思った。もしあの小さな女の子が代わりにされたら、どれだけ痛かっただろう。「璃音、誰が私を噛ませて、しかも悪口を言ったの？」女性は晴嵐の顔を強くつかみ、憎しみを込めて見つめた。「すぐに謝りなさい！そうしないと、後で小さな部屋に閉じ込めるわよ！」晴嵐は大声で泣きながら叫んだ。「助けて、悪いおばさんが殺すって言ってる！」晴嵐は必死に叫び、周りの人々が集まり始めた。「こんなに可愛い子に、どうしてそんなことができるの？」「こんなにひどいことをするなんて、絶対に親じゃないね！」「最近、継母って怖いよね！ニュースで見たけど、継母が子供を洗濯機に入れて洗っていたんだって！」周りの人々の声を聞いた女性は、さらに怒りがこみ上げ、晴嵐を引き裂きたくなった。「璃音、今日はどうしたの！？後で覚えておきなさい！」「もし手を放さないなら、児童虐待で警察に言うよ！」晴嵐は周りの視線を感じ、自信を持って言った。女性は晴嵐をじっと見つめ、「今日はどうしたの？私に逆らうなんて！」と怒りを爆発させた。それでも、女性は手を放した。もし誰かがこの状況を撮影してネットに投稿したら、彼女が三年間作り上げてきた優しいイメージが崩れてしまう。それだけは避けたかった。晴嵐は自由になり、勢いよく女性に足を蹴り、荷物を押して人混みを抜け出した。彼はまずママのところに行き、妹を助けるために急いでいた。晴嵐は出口まで走り、ママの姿を探しながら、まだ見つける前に体が突然抱き上げられた。「わあ、大きくなったし、かっこよくなったね！」晴嵐はその声で反応し、ぷくぷくの小さな腕を必死に女性の首に回した。「おばさん、どうしてここに？」「俺も来たよ」男性の声が響き、晴嵐は嬉しそうに、「パパ！」と叫んだ。「ほら、パパが抱っこするよ！」男性は手を広げ、優しい笑顔を浮かべていた。「拓海、ちょっとやりすぎじゃない！せっかく晴嵐に会ったのに、あなたは私と争ってるの？」女性は晴嵐を抱きしめたまま、彼に渡さないようにした。「一週間ぶりだし、俺も会いたかったんだよ！」拓海は堂々と言った。「
永遠の毒薬 第407話
「ママ、トイレに行きたい。ちょっと待っててね」小さな男の子は頭を上げ、隣にいる美しい女性を見上げて、甘い声で言った。「行っておいで、出口で待っているからね！」女性の声は柔らかく、笑顔を浮かべ、とても美しかった。「わかった！」男の子は手を振りながら、荷物を押してトイレに向かって走っていった。「久遠晴嵐、荷物を持っていって！」女性が呼びかけたが、男の子はすでに遠くに走り去っていた。女性は彼の背中がどんどん遠くなるのを見ながら、思わず笑った。三歳の小さな男の子は、勇気もあって、たくさんのアイデアを持っている。彼女が産後うつで最も辛かったとき、この子が希望と力を与えてくれた。支えてくれたおかげで、生きることができた。この三年、彼女は神様からこの子を授かったことを 感謝していた。晴嵐は荷物を押して、トイレへ向かって走りながら、何度も言っていた。「ねぇ、待ってって！」結局、トイレの前でその女の子に追いついた。「ねぇ、君の名前は何？」晴嵐は息を切らしながら、きれいな大きな目を女の子に向けて、まるで昔から知っているような強い親近感を感じた。女の子は彼を見て、警戒心をむき出しにして言った。「あなた、誰？私はあなたを知らない！ママが言ってた、知らない人に話しかけられても話しちゃいけないって！だから、遠くに行って！」女の子はそう言って、すぐに背を向けて歩き出した。晴嵐は急いで手を伸ばして彼女を止めた。「私は悪い人じゃないよ。晴嵐って言うんだ、ママは乃亜だよ。君の名前は？」女の子は迷うことなく答えた。「私は蓮見璃音だよ」その声は柔らかくて、とても可愛らしかった。「君の名前を覚えたよ！これからは友達だね！じゃあ、これを君にあげるよ」晴嵐は荷物を開けて、小さなウサギのぬいぐるみを取り出し、彼女の手に渡した。「これは僕のママが妹のために準備したもの、君にあげる！」パパは言った、妹は生まれてすぐに亡くなったから、ママは産後うつになって、死にたくなるくらい辛かったんだ。パパは仕事を辞めて、ママと一緒に世界中を旅行して気分転換させた。ママは治ったけど、妹のことをいつも思い出している。夜中に起きると、ママがこっそり紙を見ていることがあって、何が書いてあるのかよくわからないけど、変な感じだった。「じゃあ、どうして妹にあげな
永遠の毒薬 第406話
創世、社長室凌央は書類を読んでいると、山本がドアを開けて入ってきた。「裕之様は今、留置所に行っている。弁護士も一緒に行ったようだ。彼は美咲を助け出したいみたいだ」凌央は顔を上げ、冷たい目で山本を見た。「どうするべきか、俺が教えなきゃいけないのか？」山本は少し考えた後、続けて言った。「裕之は渡辺家の娘と結婚する準備をしているようです」凌央の眉がわずかに動いた。「渡辺家が承諾したのか？」「渡辺俊介は次の選挙に出る予定で、昇進する可能性が高いです。渡辺家は今、イメージアップのために結婚を急いでいます。桜坂家は桜華市の名門で、桜坂さんの父親は政界で俊介よりも高い地位にいます。渡辺家と桜坂家の結婚は、強力な結びつきです。安藤家は四大家族の一つで、金が多いのは確かだ。渡辺家と安藤家が結婚すれば、まるで動く金庫を手に入れるようなものだ。もし俊介が支援を必要としたら、安藤家はお金を出すだろう。安藤家が渡辺家と結婚する理由は、裕之に強力なバックが必要だからだ。渡辺家の背景は彼にとって最適だろう」山本は一気に話を終え、凌央の反応を見た。凌央がどう考えているのか、山本にはわからなかった。凌央にもお金は十分あるが、もし他の三家が連携した場合、三対一の状況で勝てるかは不確かだ。凌央は冷たく言った。「それなら、雪岳寺の住職を呼んで、安藤家と渡辺家の結婚の良い日を見てもらえ」山本は即座に理解し、電話をかけて手配を始めた。「乃亜の資料は見つかったか？」凌央が続けて尋ねた。「一部見つかりました。メールで送ります」山本が答えた。「おじい様との連絡は取れたか？」凌央はさらに質問した。山本はその真剣な表情を見て、驚いて言った。「本当におじい様にプロジェクトを渡すつもりですか？」最初、山本は冗談だと思っていた。凌央は眉をひそめ、「もちろん、本気だ」と言った。「わかりました、すぐに手配します！」「乃亜の妹を会社に呼んでくれ」凌央は突然、拓海が言っていたことを思い出した。三年前、乃亜と彼が一夜の過ちを犯したのは誰かの策略だった。あの時、乃亜に一番近かったのは久遠家の人間だった。もし彼らが関与していたら......「久遠家に住居を手配して、引っ越しをさせろ。その後、三年前に乃亜と一緒に過ごしたホテルでの出来事を調べろ」三年前の
永遠の毒薬 第405話
凌央はしばらく呆然としたまま、思考を整理していた。あの出来事の背後にこんな真実が隠されていたとは、全く想像していなかった。「乃亜は、両親に苦しめられながら育ってきた。彼女はとても気の強い性格で、少しの困難で死ぬだなんて言うような人じゃない！だから、彼女の死は自殺じゃなくて、他殺だと思う」拓海は体が弱っていたが、勢いよく言葉を並べ、顔色が青くなり、息が荒くなった。凌央はその言葉を聞いて、手を握りしめ、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。呼吸すら苦しくなるほどだった。彼が拓海を訪ねてきたのは、乃亜が生きていると証明するためだった。だが、拓海は乃亜が殺された可能性があると言い出した。その瞬間、凌央は自分の持つ力がいかに無力であるかを痛感した。乃亜一人さえ救えない自分が、ただ虚しく感じられた。「他に聞きたいことがあれば、何でも言え。俺が知ってることは全部教えてやる」拓海は、凌央の苦しそうな顔を見て、少しは心が軽くなった様子だった。乃亜が死んだことを一人で悩んでいるのは嫌だ、だから凌央も一緒に苦しんでほしかった。「ゆっくり休んでくれ。病院の費用は全額免除だ」凌央はそう言い、病室を出た。拓海はその歩き方を見て、凌央が少し動揺していることに気づいた。「乃亜の葬儀はいつだ？」拓海が聞いた。凌央の足が止まり、少し間を空けてから静かな声で答えた。「遺体が見つかっていない。だから、乃亜はまだ生きている」葬儀を行った時、それは乃亜が完全に死んだことを意味する。「彼女が生きていた時、どうしてお前は彼女を大事にしなかったんだ？死んだ後になって、なぜそんなふうに深い情を見せるんだ？」拓海は冷笑した。凌央は言い返さなかった。確かに、過去に彼は乃亜を十分に大切にしていなかった。その後、裕之は弁護士を連れて留置所に向かった。美咲は彼を見た瞬間、涙がこぼれた。「裕之お兄さん、もうここにいたくない！どうにかして私を外に出して！」この数日、どこに行っても誰かにいじめられていた。ほんの数日で、まるで何年も経ったように感じていた。このままだと、裁判が始まる前に命を落としてしまうかもしれない。恐怖の中で過ごしてきた彼女は、心も体も壊れていた。自由の大切さを、この数日でようやく実感した。彼女は誰かに助けを求めていた
