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第3話

Autor: フースー
翌朝、悠真が朝食を持ってきた。パン2個と、牛乳1杯だった。

後ろから莉央が顔をのぞかせ、挨拶した。

「紗月さん、おはようございます。私たちはもう食べてきたんですけど、先輩が紗月さんにって、わざわざ買ってきたんですよ」

「私たち」という言葉が、耳に刺さった。

朝食を受け取らなかった。私が牛乳アレルギーだということを、悠真は忘れている。

赤くなった私の目を見ると、悠真は私の額に触れようとした。私は一歩下がる。

伸ばした手が止まり、悠真の目が険しくなった。

「いったいどうしたの?」

その目を、まっすぐ見返した。

「まだわからないの?」

莉央の目に、たちまち涙が浮かんだ。

「紗月さん、私を責めてるんですか?悠真先輩は、私がかわいそうだから、少し気にかけてくれてるだけなんです。先輩が好きなのは紗月さんだけです。私のせいで、仲が悪くなったりしないでください」

悠真は眉を寄せ、莉央を背にかばった。

「莉央は何も求めず、ずっと僕のそばにいてくれたんだぞ。莉央が何か文句を言ったか?それなのに、どうして紗月はそんなに不満ばかりなんだよ」

思わず鼻で笑った。

「じゃあ莉央、悠真はあなたにあげるね」

「紗月、どういう意味だよ!」

悠真が声を荒らげたが、相手にせず部屋へ戻り、荷造りを始めた。この街には、もう1分だっていたくなかった。

鍵をかけたところで、スマホに近くの端末から写真が送られてきた。莉央からだった。そこには、悠真との日々が収められていた。

毎年、悠真は莉央を旅行に連れていっていた。雪に覆われた雪嶺山から、澄んだ海と白い砂浜が広がる澄波島まで。

私には写真を撮るのが苦手だと言っていたのに。莉央を撮る時は、いつだっていちばん綺麗に見える角度を知っていた。

胸の中で風が吹き荒れるようで、画面を見続けていられなかった。

この4年間、私が一緒に旅行したいと言うたびに、悠真は断った。授業が多い、インターンがある、期末テストが近い……理由はいくらでもあった。

いつ私の街に来てくれるのかと聞いても、返ってくるのは、【もうすぐ休みだから、地元で会おうよ】。

それだけだった。

人は、こんなにもあからさまに差をつけられるのだ。

スマホを閉じようとした時、莉央からSNSの友達申請が届いた。承認すると、すぐにメッセージが送られてきた。

【紗月さん、私、あなたの彼氏が本当に好きなんです】

【知ってました?遠距離だった間、先輩がもう寝るって言ったあとは、ずっと私といたんですよ】

【たまに会えた時、紗月さんにキスしながらも、私のことを思い出してたんじゃないかな】

吐き気がせり上がってきた。私は莉央を友達から削除した。

翌朝、誰にも告げずにその街を発った。

自分の住む街に着いて飛行機を降り、スマホの電源を入れた途端、何百件もの通知が押し寄せた。すべて悠真からのメッセージと着信だった。

無視して家に帰り、そのまま留学ビザの書類を揃えることに没頭した。

それから1か月が過ぎた、ある日。激しくドアを叩く音がした。

開けると、スーツケースを引いた悠真が立っていた。状況を飲み込む間もなく強く抱きしめられ、甘えるような声が耳元に落ちた。

「紗月、もう機嫌直してよ。遠距離で不安だったから、別れるなんて言ったんだろ。こっちに来て、一緒にいるから。それならいいよね?」

叱られた子どもみたいに、悠真は私の首元に顔を埋めた。胸の奥が、ほんの少しだけ揺らいだ。

その瞬間、エレベーターがまた開いた。

廊下には、莉央が怯えたように立っていた。莉央もスーツケースを引いていた。

悠真は私の両腕をつかみ、説明した。

「莉央は僕がいないと駄目だから、隣の部屋を借りたんだ。心配しないで。僕たちの邪魔はさせないから」

喉に何かが詰まり、うまく声が出なかった。冷たい笑いだけが漏れた。

今度こそ、心が冷えきった。

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