ログイン大学入学共通テスト一日目。僕は同じ会場のクラスメイトたちと学校で落ち合い、一緒に出発することになっていた。しかし、恋人の二宮朝香(にのみや あさか)は、なかなか現れない幼馴染の藤村駿(ふじむら しゅん)を待つために、出発時間を遅らせていた。 しかし、試験開始まで残り1時間もなかった。このままでは確実に間に合わない。 前世で学級委員だった僕・神崎嶺(かんざき れい)は、みんなに先に試験会場へ向かうよう忠告した。 だが、返ってきたのは感謝ではなく、みんなからの冷たい視線と不満の声だった。 「駿と朝香の仲が良いから嫉妬してるんだろ?駿が受験に間に合ってほしくないって思ってるでしょ!」 土砂降りの中、僕が必死に頼み込んで、ようやくみんなは重い腰を上げた。試験開始5分前、僕たちはなんとか会場へ滑り込んだ。 しかし、試験後に駿に会場の窓から突き落とされ、僕は無残な姿で死んだ。 それなのに朝香は、クラスメイト全員を引き連れて警察に嘘の証言をした。 「駿が共通テストを受けられなくなったのは嶺のせいです!嶺はその罪悪感で飛び降りたのですよ!」 駿はその一件で世間の同情を買い、ネットで人気者になった。 母は僕の潔白を訴え続けたけれど、真相を知らない世間は彼女にまで容赦なく誹謗中傷を浴びせた。心をすり減らした母はある日運転中に事故を起こし、そのまま崖下へ転落して亡くなった。 命を落として初めて、すべてが駿の仕組んだ罠だったのだと知った。 ふと目を覚ますと、朝香がクラスメイトと駿を待っていたあの日に時を遡っていた。 今度こそ、僕は手を差し伸べない。あの恩知らずたちが自滅するというなら、その結末を見届けるだけだ。
もっと見る「甘いけど、そのあとには死ぬほど苦い味が待ってるのさ」朝香は顔を歪め、苦しそうな表情を浮かべた。僕は希望を失ったクラスメートたちを振り返ることなく、母と共に試験会場を後にした。帰宅してから、ふと気になったことを母に尋ねた。「母さん、どうして藤村くんは僕に執着するんだ?あの最後の捨て台詞を聞くと、単にうちがお金持ちなのを妬んでいただけじゃない気がするんだよね」そう、ずっと疑問に思っていたことだった。すると母が何枚かの資料が入ったファイルを僕に手渡し、その中身を確認した時、全てを察した。「なるほど。藤村くんがいきなりうちのクラスに転校してきたのも、最初から僕が目当てだったのか」昔は、てっきり奴は朝香が好きだから、彼女を奪うために僕を排除しようとしているのだと思っていた。だが本当の理由は、駿の母親にあると知って驚いた。駿の母親は、もともと神崎グループの財務部長を務めていたが、その立場を利用して何億円もの資金を横領していたらしい。それを僕の母に見抜かれ、警察に突き出されて逮捕されたのだ。駿の母親が捕まると知るや、駿の父親は速攻で離婚。駿は贅沢三昧の御曹司生活を失った。その一件から2週間も経たないうちに、駿は元いた進学校を辞めてうちの高校に来たというわけだ。他にもっと良い選択肢があったはずなのに、わざわざうちの学校を選んだ理由もこれで明白だった。完全に、僕を狙っていたんだ。事情が分かってからは、もう駿のことを考えるのはやめた。家で心ゆくまでゲームをして、そのあとは親友と旅行に出かけた。共通テストの点数が出る日になってから、僕は遊び足りないまま帰路についた。ところが、帰ってみると自宅の玄関先には、朝香と拓海を含むクラスメートたちがそこに立っていた。「嶺……」顔を真っ赤にしてしばらく黙り込んでいた朝香が、やっとの思いで口を開いた。「この前のことは、本当にごめんなさい」拓海たちも、力なくうつむいたまま口を開いた。「俺たちのせいだ。藤村の言葉を信じて、お前を苦しめるようなことをして」彼らの入試の結果は、前世のような良いものにはならなかっただろう。試験科目を一つ受けなかった影響は大きく、上位の大学を目指していた人は、第一希望を変更するしかないはずだ。ほとんどのクラスメートたちにとって
駿が警察に連行された。パトカーに乗り込む直前、駿は鼻で笑って僕を見つめた。「俺はネットで稼げなくなったけど、お前も俺と同じ、共通テストを受け損ねたんだ!金持ちの家に生まれたからっていい気になるなよ。この一件は、お前の人生にずっと残るからな」その言葉を聞いて、僕は思わず笑ってしまった。僕を陥れることに失敗し、結局そんな理由で自分を慰めることしかできないようだ。だが、僕はもう前世の単純な自分ではない。前世で、駿は僕の家族を破滅させ、計り知れない汚名を着せたのだ。今世では、駿の策略をただ阻止した程度で、復讐を済ませるつもりはない。駿を少しでも不幸にできることは、何でもするつもりだ。僕は駿に向かってニヤリと笑った。「ひとつ言い忘れていたことがあったな!」僕はあえて声を張り上げ、その場にいる全員に聞こえるように言った。「僕は2ヶ月前に、東都中央大学の推薦枠を獲得しているんだ。だから、共通テストを受けようが受けまいが……僕には何の関係もないことなんだよ!」その知らせを聞いて、駿はその場で崩れ落ち、声を荒らげた。「そんなはずはない……嘘だろ?どうせ家の力で推薦枠を買ったんだろ?結局、お前は家の金を頼ることしかできないってわけだ!」僕は何も答えず、ただ静かに笑った。すると母が冷ややかな声を上げた。「うちの息子の推薦枠は、本人の努力によるものよ。家庭の力なんて関係ないわ。嶺が高校の3年間、全国模試でずっと県内トップだったことは知ってる?あなたたちが泥のように眠っている夜中も、ずっと勉強していたのよ?」結局、駿は絶望した目でパトカーに乗せられていった。彼にとって一番受け入れがたいのは、人生の全てを懸けても僕に何の打撃も与えられなかったという事実だったのだろう。「神崎くん、ごめん!酷いことをした。本当に悪いと思ってる」駿が連行された後、クラスメイトたちが申し訳なさそうな表情で僕を見ていた。僕は首を横に振って言った。「謝罪なんて必要ない。これからは関わらないことにしよう」運転手が提出したドライブレコーダーの映像は、この人たちがわざと出発を遅らせたことをすでに証明していた。そのような行動をとれば、誰にどんなに謝ってももう遅い。一科目でも欠席すれば、難関大学への道はほぼ絶たれたの
画面には、駿が店の中でのんびりと買い物をしている様子が映っていた。そして店の店長は訝しげに彼に尋ねた。「君、高校3年生だろ?今日は共通テストだっていうのに、そんなにのんきに買い物なんかしてていいのか?そんなことで間に合わなくなったらどうするんだ」しかし、駿は悪びれもせず言い返した。「へへっ、いいよ。どうせ合格する気なんてないから、共通テストなんて行かなくてもいいんです」最後には店長の呆れた視線を背に、駿は飴を何袋も購入し、まるで散歩しているかのような足取りで店を出た。店の入り口付近。防犯カメラに映り込んだ場所で、駿は雨宿りをしていた野良猫を力任せに草むらへと蹴り飛ばした。猫の姿こそ隠れたものの、凄まじい猫の悲鳴が動画から響き渡った。それを目にした瞬間、駿の顔から血の気が引いた。この瞬間、すべての真相が白日の下に晒された。僕は冷ややかな笑みを浮かべ、クラスメートたちを見渡した。駿を待つためにわざとバスの発車時間を遅らせた彼らも、信じられないものを見る目で駿を見ていた。「お前……わざと遅刻してたのか?」駿が必死に弁解しようとするが、もうそんな猶予はなかった。事実は目の前にある。駿を待って一緒に出発したかったのに、まんまと彼に利用されていたのだ。それだけでなく、自分たちの将来まで駿に捧げてしまったのだ。自分たちが利用されたのだと悟った瞬間、クラスメートたちは人の目を気にせず、一斉に駿に殴りかかった。駿の苦悶の叫び声が響く。駆けつけた警察が皆を引き離した時には、すでに体中が痣だらけになっていた。着ていた服はズタズタに引き裂かれ、腕や体には至るところに生々しい噛み跡が残っていた。腕力の弱い生徒までもが、怒って駿に噛み付いたのだ。「ああ……最悪だ!本当に最悪。駿みたいなクズ男の言うことなんか聞くべきじゃなかったんだ!」その場で顔を覆って泣き崩れ、自ら頬を叩いたり、地面に頭を打ち付けたりする者もいれば、ただ呆然と立ち尽くしている者もいた。僕は悲惨な姿の駿と、クラスメートたちの涙を見つめた。心の中には、爽快な気持ちが広がった。前世で母と僕が味わった絶望に比べれば、大したことじゃないだろう。この連中は、自業自得に過ぎない。ついさっきまでコメントで僕を罵倒していた視聴者たちも沈黙し、コメ
画面に映し出された最初の動画には、みんなが雨の中で出発を待っている様子が映っていた。駿が提示した写真と違う点は、ただ一つ。僕は、バスの中ではなくみんなと一緒に雨の中に立っていて、必死に出発するように説得しようとした。「僕が家から出たとき、会場までの道がすでに水没し始めていたんだよ。急いで出発しないと、大渋滞に巻き込まれて間に合わなくなる。藤村くんが遅れてしまっても心配いらない。その時は先生たちに連絡して、車で試験会場へ直行できる。共通テストに遅れることもない」その動画が流れた瞬間、配信で僕と母を罵っていた視聴者たちは静まり返った。コメントが一瞬止まり、しばらくしてから再び流れ始めた。【この動画は本当?もしそうなら、俺たちはこの子を完全に誤解していたことになるな】【そうだな。むしろ全員のことを思って行動していたのか!しかも最善策も考えた】【もしかして、俺たち……この藤村ってやつに騙されていた?】風向きが完全に変わった様子を見て、駿は慌てふためき、モニターを指さして叫んだ。「嘘だ!これは絶対、神崎の母親が業者に頼んで作った合成映像だ!」朝香とクラスメートたちは俯いた。彼らはこれが合成なんかじゃないと分かっている。出発する前、僕が必死に彼らを説得していたからだ。しかし僕の言葉は、彼らによって悪意ある企みだと誤解されていた。「これはバスのドライブレコーダーの映像です。皆さんが疑うならすぐにでも確認できます」母は冷ややかに駿を見つめた。警察の対応も迅速だった。動画の真偽が明らかになっただけでなく、バスの運転手にも事情聴取をした。数十万人の視聴者と、会場前にいる保護者たちを前に、運転手は溜息交じりに証言した。「動画は本当ですよ。藤村くんが来る前、確かに神崎くんはこの子たちに今すぐ出発したほうがいいと言っていました。でもこの子たちが、藤村くんが来るまで絶対に動かないと……藤村くんを置いていくなんて無理だと言って、結局絶対に間に合わない時間になってから出発したんです」運転手の説明が終わった途端、現場では怒号が飛び交い、配信のコメント欄も混乱に包まれた。担任の表情はみるみるうちに険しくなった。「君たちは共通テストを何だと思っているんだ?特に藤村!皆を試験に遅れさせただけでも許しがたいのに、いい提案をし