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第3話

Author: アカリ
裁判所の担当者から電話を繋いでもらうと、すぐに翼の怒鳴り声が聞こえてきた。

「凛菜、いい加減にしろよ。君がグループチャットで通話録音をばらまいたせいで、日和がネットで叩かれて、精神的に不安定になって入院したんだぞ。そのせいで、お腹の子まで危なかったのに、それでもまだ足りないのか?

今度は誰かに担当者のフリをさせて、離婚調停だと?日和がその話を聞いて、どれだけ自分を責めたか分かってるのか?死んで詫びしようとしたんだぞ。君は日和を追い詰めないと気が済まないのか?」

その怒り狂ったような声を聞いて、私はやっと理解した。翼は裁判所からの電話に応じていなかったわけではない。離婚調停の通知を、私のいたずらだと思い込んでいただけなのだ。

はっと我に返り、私はすぐに言い返した。

「杉本さんがわざと嘘をついて私を陥れた時は、私が悪いと言ったわよね。今度は相手がしっぺ返しを食らっているのも、私のせいになるわけ?

それと、最後に言っておくけど、調停は本当にやることよ。もしあなたが……」

でも私の言葉を最後まで聞かず、翼はイライラした様子で話を遮った。

「もういい!凛菜、その茶番に付き合ってる暇はない。

日和は今、妊娠中で精神的にも不安定で、とても仕事ができる状態じゃない。君が日和の仕事を引き継げ。今夜の会食にも代わりに行って、彼女のクライアントをしっかりもてなしてこい。

ちゃんとやり遂げたら、君がやきもちで起こした騒ぎは特別に許してやる。事務所での立場も保証してやろう」

まるで王様か何かのように偉そうな翼の命令口調に、私は思わず鼻で笑った。

彼は忘れているらしい。昨日まで、ネットで叩かれていたのは日和だけじゃなかったということを。

弁護士という仕事柄、クライアントや相手方の家族から責められることは避けられない。

以前、ある刑事事件の弁護を担当したことがある。被告の罪を軽くすることに成功した直後、私は原告の家族に水を浴びせられ、「人殺しの味方!グルになってるんだろ!」と罵られた。

ひどいときには、ネットに個人情報を晒されて、実家の両親まで巻き込んで中傷されたこともあった。

あの頃の私は怖くて家に閉じこもり、スマホを開く勇気さえなかった。

でも翼は、それが当たり前だという顔をしていた。私を慰めるどころか、逆に感情的すぎるとか、心が弱いと責めてきたのだ。

弁護士になったからにはプレッシャーに耐えることを学べ、自分の感情くらいコントロールしろ、この業界ではよくあることだ、と。

この程度のプレッシャーに耐えられないなら、時間の無駄だからさっさと転職しろ、とまで言った。

笑えることに、当時の私は翼の都合のいい言葉を本気で信じていた。「自分が未熟で、弱いからだ」と思い込み、その後は必死で働いた。クライアントや相手の家族に侮辱されても、歯を食いしばって笑顔で耐え、「強くならなきゃ」と自分に言い聞かせてきた。

それなのに、日和がグループチャットで少し悪く言われただけで、翼はまるで世界の終わりのような顔をしている。おまけに日和を休職させ、その仕事まで私に押し付けるなんて。

何よりひどいのは、私が少し前に、働きすぎで胃の手術をしたばかりだと知っていることだ。まだ本調子じゃないのに、翼は私を少しも気遣わず、日和の代わりに会食に行けと言う。

事務所には男性弁護士だってたくさんいる。なのに、わざわざ手術したばかりの私に行かせようとするのだ。

要するに、私のことなんて都合のいい道具としか見てない。だから、私の体や気持ちなんてどうでもいいんだろう。

愛があるかないかで、ここまで態度が変わるなんて。本当にひどいダブルスタンダードだ。

我に返った私は、もう翼の言いなりにはならなかった。そして、冷たい声で、きっぱりと断った。

「翼、私は手術したばかりでお酒は飲めない。

それに、これは杉本さんの仕事だわ。私が代わりにやる義務はない」

その言葉に、電話の向こうは一瞬静まり返った。

いつも言いなりだった私が逆らうなんて、思ってもみなかったのだろう。翼はすぐに激怒した。

「凛菜、これは決定事項だ。相談してるんじゃない。

俺が君に給料を払ってるんだから、俺の命令に従う義務がある!」

でも、私はもう翼の言いなりにはならず、すぐに言い返してやった。

「なら、辞めるよ。

私も相談してるわけじゃなくて、これは決定事項よ!」

そう言うと、翼が何か言う前に、私は一方的に電話を切った。

調停は結局、不成立に終わった。そのまま訴訟に進み、離婚を認める判決が下りた瞬間、私はすぐに国際電話をかけた。

「イーサン先生、お話をお受けします」
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