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第2話

مؤلف: にゃー
婚姻届の手続きを済ませた後、凛音は海斗に何度も電話をかけた。大事な報告をしたかったが、彼は一度も電話に出ることはなかった。

無理な輸血が続き、凛音の体は限界を迎えていた。もう疲れ果てて、帰宅して横になるしかなかった。

翌日、凛音は病院へ向かった。病室の入り口に、海斗がいるのを見つけた。

彼はベッドサイドに座り、雑炊を器に取り、冷ましてから景子にゆっくりと食べさせていた。その手つきは、どこまでも優しかった。

凛音はそれを静かに見つめた。前世の自分が何度輸血の後に意識を失っても、海斗は一度も見舞いに来なかったことを思い出す。自分が笑えるほど哀れに思えてきた。

深呼吸を何度も繰り返して気持ちを整え、凛音は意を決して扉を叩いた。

こちらを向いた海斗の表情から、笑みがスッと消えた。

彼は顔をしかめて病室を出て、扉を閉めた。「電話に出なかったら、今度はここまで来たのか?一体何のつもりだ?」

充血し、深いクマの刻まれた海斗の目には、苛立ちが滲んでいた。

凛音は躊躇せず、景子のバッグを返し、婚姻届を提出したことが分かる写真を見せた。

「ただ伝えたくて来たの。婚姻届は、もう出してきたから」

海斗は冷ややかな目で凛音を一瞥し、冷たく言い放った。

「黙れ!景子は事故から目覚めたばかりだ。俺が結婚したなんて事実、今は景子に知られたくないんだ!」

「違う。あなたと私じゃなくて、届けを出したのは……」

凛音は事実を説明しようとしたが、景子という言葉を発する前に海斗の低い声に遮られた。

「もういい!忘れるな、景子のために籍を入れただけだ。思い上がるな。このことを言いふらすことも、景子の前で見せびらかすことも許さない!」

そう言って海斗は景子のバッグを取り上げ、写真など眼中にないといった様子で、病室へ戻って行った。

凛音は説明を諦めるしかなかった。

どうせもうすぐここを去るのだ。いつか海斗も、本当の妻が誰だったのかを知るだろう。

それ以上そこに留まることはせず、凛音はエレベーターへと足を向けた。

たまたま乗り合わせた看護師たちが、下の階へ向かう途中で噂話をしていた。

「特別病室に入っているのは高木グループの社長だって。さすがよね。入ってるのは彼女さんかしら?何日も付きっきりで看病して、引退した専門医まで呼んでくるなんて、すごい愛情よね」

「彼女さん、運ばれてきたときは危ない状態だったらしいよ。それを高木さんが、あらゆる手を尽くして助けたんだって。大怪我だったのに、高額な治療も惜しまず受けさせて、しかもどこからか適合する血液まで用意して、そこまで愛されてるなんて、本当に幸せよね」

凛音は静かに聞き入っていた。

海斗は確かに、周囲がそう思うほど深い愛を注いでいた。

その愛情のすべてを景子に向け、残りの人生の幸せすら差し出してでも、景子を生かそうとしている。

それほどに愛しているのだ。

だが、もう二度と海斗がそこまでの自己犠牲を払うことはない。自分は完全に、彼を景子のもとへ返したのだから。

そして自分自身も同じ道を繰り返さない。新しい未来が、ここにはあるのだ。

そんな思いを抱えながら、凛音はビザの申請に向かった。

前世は、海斗の側にいるためなら、海外留学の機会すら投げ出していた。

今回は海斗から離れて、自分自身の夢だったデザイナーの道を歩もうと思っている。

職員は凛音の書類を確認し、申請手続きを進めた。

「申請結果が出るまで2週間ほどかかります。結果は改めてご連絡しますので、一度戻ってお待ちください」

期日を確認し、凛音は外へ出てタクシーを拾った。

帰宅後、家の中にある海斗との思い出の品々を整理し始めた。

隠し撮りした数千枚の写真。卒業時に海斗が捨てたのを拾った制服。クリスマスに、彼が交換に出したプレゼントを人づてに買い取ったもの……

15歳で好きになり、22歳で妻となり、29歳で死んだ。部屋中が、海斗の物で埋め尽くされていた。

まる2日間かかって、ようやくすべて片付けた。

家中の不用品として箱詰めし、外に出して捨てようとしたその時だった。

積み上げられた荷物の先に、1台の車が停まるのが見えた。

窓が開くと、冷たい目をした海斗が、その荷物の山を見下ろしていた。

「景子はまだ体力が落ちている。だから、俺の家で世話をすることにした。お前との婚姻届は出したかもしれないが、勝手に引っ越すなんてことは許可しない」

凛音は一瞬呆気に取られたが、誤解されているのだと気づいた。

「違う、これは処分するために出しただけで、引っ越すなんて考えていないわ」

「引っ越してこないなら、何を捨てようが興味はない。早く乗れ」

海斗は有無を言わせず運転手に指示を出した。

事の成り行きが分からず、凛音は困惑を隠せなかった。

「どこに行くの?」
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