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09

Author: 仲原
last update publish date: 2026-08-17 21:05:36

「ちょっと待てよ! 楽しむってどういうことなんだよ!!」

 確かに。誰かが言ったその言葉に同意し、無意識に頷いてしまう。

 そもそも、この世界に来てまだ間もない上に、この場所以外にどんな場所があるのかの説明も全く無い状態で、何をどう楽しめば良いのか皆目見当もつかない。それに、これから何をさせようとしているのか、相手の目的が何なのかという部分も分からないのだから、素直に「はい、分かりました」と答える方が難しいだろう。

『それについてはこれから説明するんで、少々お待ちを』

 そう言うと、ライは指を鳴らして背後のモニターに写る映像を切り換える。

『まずは。みんな、自分の利き手の手首をよーく見てくれないかな?』

 何を言っているんだと思いながらも、取りあえずは素直に右腕を持ち上げ手首を見てみることにする。

「なん……だ……? これ……」

 さっきまでこんなものあっただろうか? 覚えの無い奇妙な二つの数字。それが自分の手首にあることに気が付き嫌そうに表情を歪めると、それを察したかのようにライが口を開いた。

『みんなの手首には二つの数字があると思う。それが確認できた人は挙手して欲しい』

 何だか
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  • PLAYER   1st stage:33

    「そんな……」 信じられない。そう思いはしても、手に入れた情報は男の言葉が真実であると言う事を指し示している。「死者からの依頼だなんて、そう簡単に信じられる訳がないじゃ無いか!!」 常識が邪魔をする。信じたくないと本能が警鐘を鳴らす。明らかな異常から目を背けるのはきっと、危険を回避したいと強く願う防衛本能が働くからだろう。「信じたくないと言っても、これが今起こって居る現実だろう? 自分の目で見ても信じられないって言いたいのか?」 突きつけられる事実が現実だと言われた途端、酷く頭が混乱した。「でも……確かに聞いたんだ。電話で、住んでる人達の声を……」「電話の向こう側に本当に【生きている人間】が存在していたと思うのか?」「え?」「電話から聞こえてくる音ってのはな、人の耳に聞こえるように【調整された作られた音】なんだ。その音が本物かどうかなんて、どうやって確かめるんだよ?」「それは……」 モニターの中で四つの顔がこちらを見ている。その眼窩は酷く落ち込み、本来瞳がある場所には真っ黒な空洞があるのみ。「この黒電話ですら周波数を調整して通話の相手に音が伝わっているんだ。顔を見たことの無い相手の声が、俺達と同じ場所から発信されているものかどうかなんて、誰にも分かりはしないんだよ」「っっ……」 頭では分かっている。それを認めてしまった方が楽になるのだと言う事は。「でも、俺は生きているし、今までそんな事に遭遇した事なんて無いんだよ。そうだよななんて、そう簡単に信じられる訳無いだろう……ん」 それでも常識がそれに歯止めをかける。認めてしまうと後戻りが出来なくなる事を感じて居るのだから。「いずれにせよ、毎正時の電話は対応しないといけない」 相変わらず監視モニターの中で此方を見る住人はそこに居続けている。「そうしないとこの場所に捕らわれ、最終的には俺達もこうなる可能性が高いからな」 目の前のガラスの向こうには存在していない彼等の姿が。「悪いが俺はこうはなりたくない」 彼らを睨む男の目には強い決意が宿っていた。「何としてでも、この建物から出る方法を探してやる」 その姿は初めて会ったときの不気味で情けないものではなく、どうしようもな状況を打破するために戦う事を選んだ戦士のような頼もしさを漂わせているもので。「残り時間はあと一日と数時間……」

  • PLAYER   1st stage:32

    「逃げるぞ」 緊迫した空気の中、震える彼の声が廊下に響く。「逃げるぞ!!」 言い終わった瞬間、彼は一目散に階段を目指し走り出した。「お、おい! 待てよっっっっ!!」 慌てて彼の後を追い、自らも階段へと急ぐ。背後からはエレベーターの扉が開く気配。それを確かめたいと思いながらも、彼の見せる異様な焦りに引っ張られるようにして、振り返ることなく急いで階段を駆け下りる。 三階、二階、一階……と階を移動し辿りついた管理人事務室。捲し立てられるようにして鍵を開けさせられると、彼に肩を掴まれ無理矢理部屋の中へと押し込まれる。 続けて彼自身が部屋の中に飛び込み扉を閉め鍵をかけた瞬間、管理人事務室の窓が激しく動き、大量の手形がガラス一面を覆い尽くした。「ひぃっ!?」 何かが居る。姿は見えないが確かにそれがガラスの向こう側に居る事ははっきりと分かる。「……はぁ……はぁ……」 男は以前にも同じ事を経験しているのだろうか。遭遇している現象に怯えている自分とは異なり、比較的落ち着いた様子で目の前のガラスを睨み付けているところを見ると、その可能性は高そうである。「思ったよりも早い」 窓ガラスを叩く音は激しさを増し、いつか枠から外れて割れるのでは無いかとすら思えて、ますます震えが止まらない。いつ終わるかも分からない恐怖体験は、朝が来るまで続くのだろうか。 壁に掛けられた時計の数字を確認すると、時刻は一時四十六分。朝が来るまであと五時間以上も残っている状態。「この状況って、一体何なんだよ!?」 耐えられずそう叫ぶと、その声に反応するかのように窓ガラスを叩く音がピタリと止んだ。「…………え?」 先程までは耳を塞いでも音が止む気配は無かったのに、今は耳が痛い程の静寂がガラスの向こうに広がっている。「……何……が……」 ガラスに残された無数の手形。ただ、それらは時間の経過と共に一つずつ視界から消えていく。「消え、た」 最後の手形が消えた瞬間、一気に疲れが押し寄せその場に崩れ落ちる。漸く不可解な現象から解放されたという安心感のせいか、膝が笑って力が入らない。情けなく笑い終わったんだよなと男に声をかけると、男は一瞬だけ此方を見た後でモニターをのぞき込み渋い表情を見せた。「集まってきた」「…………え?」 集まってきたとはどういうことなのだろう。「何を言ってる

  • PLAYER   1st stage:31

     異様に静かな廊下には、生暖かく湿った空気が漂っている。 玄関の硝子の向こう側で激しく降り続ける雨が止む気配は無く、耳障りな雨音が途切れること無く続いている。雨脚が強いため外の様子は分からない。ただ、ぼんやりとした灯りが見えることから、今日は正常に電気が来ているらしいことだけは分かった。「あれ?」 エレベーターの前でシンジゲーターを確認すると、そこに表示されている数字は【一】となっており、昇降機自体もそこに存在している事に驚いてしまう。「なぁ。エレベーターが動く音って聞こえたか?」 エレベーターが始め、何階で止まっていたのかは分からない。ただ、シンジゲーターの数字を信じるのであれば、この機械は本来、四階に止まっていないとおかしいことになる。現在のフロアに機械を下ろすのであれば必ず、何かしらの音が聞こえるはずなのに、今までそのような音は一度も聞いていない。そのことを隣に立つ男に尋ねるのだが、男自身も不思議に思っているらしく、小さく首を振って「いや」とだけ言葉を返してくる。「動いている音は聞こえなかったし、モニターを見ている限りでは動く気配すら無かったぞ」「それじゃあ、何故……」 考えられる可能性は、始めからエレベーターは動いていなかったというもの。だとしたら、あの映像は一体なんだったのだろうか。 改めてシンジゲーターに表示されている数字を確認するのだが、その数は一のままで変化する気配は全く感じられない。方向ボタンを押して中に入り操作盤を確認してみても、ボタンの数は三階までのものしかないため、四階のフロアが存在しているという事実はなさそうである。試しに一番上のボタンを押しフロアを移動してみるが、到着したのは三階で、これ以上、上のフロアに移動することは無かった。「よく……分からないな」 それでも、確かに表示されていた四と言う数字を見たのは事実だ。今確認したことと、先程画面越しに見た情報。大きな矛盾が目の前に突きつけられ、頭が混乱してしまう。無意識に階段へと視線を向けるが、上がった先にあるのは朝に見たのと同じ金属の扉で、そこを開けると屋上に繋がっていて住居スペースは存在しない。 三以上の住居スペースが無い以上、モニター側の不具合である可能性が高くなってきた。「映像が差し替えられている可能性とかあったりするんかなぁ?」 一番

  • PLAYER   1st stage:30

     その口ぶりから受ける印象は、完全なる消失を意味しているだろうということだ。「俺の目の前で消えたんだ。まるで、始めからその人が存在していなかったかのようにぱっとな」 この言葉を聞いて感じる怖気。本来ならば訳の分からない場所から解放されたことを喜ぶべきなのだろうが、この話はそんなに単純な事では無い気がして落ち着かない。「まぁ、元の場所に戻ったから、もうここには居る必要がなくなったって感じなんだろうけど、なんて言うかなぁ……もう二度と会えなくなるのかと思うと、なんとも言えない気持ちにはなるよなぁ」 男の言う元の場所とは、どこを指しているのだろう。現実なのか、夢なのか。それともこことは別の雨月マンションの中なのか。残念ながら、その答えを知る前任者は、もう既にこの建物の中から居なくなってしまっている。「まるで、ゲームみたいだ」 現実味の無い生活。思った通りに進むことが無い時間。自由の無い空間の中で、決められたタスクを淡々とこなす。日によって行う任務の内容は変わるが、その行動自体はいつもと同じ。 確かに現実世界でも、日々の生活において繰り返しの行動が無い訳では無い。そでもこんな風に、やらなければ取り返しがつかない妙な義務感というものは、そう頻繁に起こる事では無いだろう。「なぁ……聞いても良いか?」 いつの間にか監視モニターを覗き込んでいる男に向かって声をかける。「もしさ。この世界がゲームの世界だとしたら、無事に生きて出られると思うか?」 自分でも馬鹿な事を聞いているという自覚はある。しかし、どうしてもその言葉を口に出さずには居られない。「俺には良く分からないけど、生きて出る事は可能なんじゃないかな?」 相変わらず男は此方に目を向けることも無く、目の前のモニターをコツ、コツと叩いているだけ。「依頼を達成出来なくても死ぬことは無かったから、怪我をすることはあっても、条件を設定している奴らに殺されるってことは無いと思う」 まるで何かを探すように、映し出される空間を行き来する視線。「まぁ、…………………………。って感じではあるけどな」「……………………」 どうしてこうなったのだろう。改めて、今まで自分の身に起こったことを振り返りながらそんなことを考える。「…………ダメだ。わかんねぇ……」

  • PLAYER   1st stage:29

    「このエレベーターってさぁ、今、一体、どこにあるんだろうな?」 画面に映る数字は相変わらず、存在するはずの無い四つ目のフロアを示したまま動く気配が無かった。「…………ひょうじ……エラーじゃ……ねぇの……?」 きっと、機械の不具合でインジケーターに不具合が出ているだけだろう。何も不思議なことなんて無いと強く否定するのに、男は意味深に笑いながらこちらの言葉を否定してくるのは何故だろう。「どうなんだろうなぁ?」 男の指が画面をゆっくりと撫でる。「本当かどうかを確かめるなら、エレベーターを呼び出してみれば良いんじゃないか?」 さも当たり前のようにそう言われて思わず言葉に詰まってしまう。「そう……だけど……」 頭では分かっている。男の言った通り、異常を見せるエレベーターを直接見て確認することが、何よりも簡単で確実な方法だという事は。 ただ、それを躊躇っているのは単純に、何が起こるのか分からないという怖さを感じて居るせいである。 幾ら人が増えたとは言え、この男のことを心から信用出来るほど付き合いが長い訳では無い。余りにも気楽に話せていたせいで忘れて居たが、彼との出会いは最悪な状態からのスタートなのだ。身元どころか、未だに分からない事が多すぎるのに、男の言葉を信じて行動が出来るほど強い精神力は持ち合わせて居ない。「何なら、一緒に確認しに行ってやろうか?」 いつまでも行動を起こさない此方に痺れを切らしたのだろうか。机の上に置いてあった懐中電灯を手に取ると、男はそれを差し出しながらどうするのかと尋ねてきた。「一人で行く訳じゃないし、距離だってそんなに遠くない。ほんの数メートル移動するだけじゃ無いか。何をそんなにビビってんだよ?」「……それは……」 エレベーターと管理人事務室までの距離はそれほど離れている訳では無い。だから、何かあっても直ぐに管理人事務室に引き返すことは可能である。ただ、それでも向かうのを躊躇ってしまうのは、未だに窓ガラスに残されたままの手形が気になって仕方ないからだ。「でも、この部屋の外には何かが居るんじゃ…………」 大きな音が聞こえたとき、手形を付けたものの正体までは見えなかった。ガラス越しに廊下の様子ははっき見えていたはずなのに、姿無き者が残した奇妙な痕跡。もしかしたらその正体が分からない何かは、未だ

  • PLAYER   1st stage:28

    「じゃあさ、フレンドにならねぇか?」 思った以上にゲームの話題で盛り上がれたことで気分が大分良くなっていたからだろう。せっかく出しフレンド登録をしないかと誘ってみると、相手は直ぐにその提案に乗ってきた。「やったぜ!」 互いにユーザーIDを調べるため携帯端末の電源を入れて画面を操作し始める。自分の端末は直ぐにアプリのロードが終わりホーム画面が表示されたのに、相手の端末はアップデートをこれから行うため、中々アプリが起動出来ない。「あ」 極めつけに表示されたのは【アップデートに失敗しました。データ容量を確保してください】というアラートで、端末の中を整理しない限りはアップデートを終わらせるのは難しい状況になってしまった。「うわぁ……マジかよぉ……」 差し出された画面を見て、思った以上に落胆している自分に気が付き自分でも驚く。「せっかく一緒にプレイ出来ると思ったのに」 そう言うと、相手は申し訳なさそうに「ごめん」と謝り、画面を見て悩み始めてしまった。「どうしたんだよ?」「いやぁ……何か、消せるアプリが無いかなぁと思ってさぁ」 こちらの落胆に申し訳なさを感じてくれたのかも知れない。男は真剣に端末の中のアプリと睨めっこを始め、次々に不要と判断したアプリを削除していく。それでも中々確保出来ない空き容量に、次第に諦めの気配が漂い始め、遂にはお手上げだとギブアップを宣言してしまった。「スマン。なんとか空き容量を確保しようと頑張ったんだけど、今すぐには無理そうだ」 聞いてみるとクラウドにバックアップ出来ていないデータも端末に入れっぱなしにしているとのことで、それらのアップロードが終わらないと、ゲームのアップデートが進められないようだ。こればかりはどうしよう無いことなので、アップデートが終わった時に改めてフレンド登録をしようということにし、一端は諦めることになった。「それにしても……未だ二時にもなっていない、のかぁ……」 あれから随分と話し込んだと思っていたが、時計を見ると針は未だに一時台を指したままだ。「時計が止まった後は、時間の進み方が異様に遅くなるんだよ」 相変わらず携帯と睨めっこを続けながら、男はさも当たり前だと言うように答える。「正確には時計の進でいる速度は昼と大して変わらないんだろうけど、体感的には昼間よりも何倍も遅く時間が進んでいる感覚に

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