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Nox.II 『歴史秘書のお仕事』III

Author: 皐月紫音
last update Last Updated: 2025-07-16 06:01:06

「レイフくん、ちょっと良いかな」

「うん? ローランか、さっきはありがとな」

講義を終えて廊下へと出ようとしていたレイフに声をかけたのは、先ほど紙飛行機を飛ばしてくれた生徒エミリー・ローランだ。

「ううん、まぁ先生にはバレてたみたいだけどね〜」

「いや、あれでバレないって方が無理だろ……」

「あはは! それもそうだね。でもレイフくんって、ヴィオレタ先生と仲良いよね〜」

「はぁっ? どこがだよ?」

「お互いに遠慮なく、何でも言い合える関係って素敵だと思うけどなぁ〜」

「あの教師が、ズレてるからツッコミ入れてるだけだっての……」

——「くうぅ! おのれヤンキーめ! 俺のウルバノヴァ先生とおぉ!!」

「おい、心の声がダダ漏れだぞ、ブラン……」

声が聞こえた先へと目をやると、クラスメイトのジャック・ブランが射殺すような視線を向けていた。

彼はレイフの前の席に座る生徒だ。

よく言えばムードメーカー、悪く言えばバカであるというのがレイフ評だった。

偏見の目を向けてきたり、陰口を叩いてくる生徒よりは遥かにマシだが、ヴィオレタに憧れを抱いているようで、レイフにやたらと対抗意識を向けてくる。

「そんなことよりもレイフくん!!」

「な、なんだよ、ローラン」

「私の友達に勉強教えるの手伝ってくれない!?

私だけだと手が足りなくてさぁー、ほら、ヴィオレタ先生の問題意地悪だし。

あと私のことはエミリーで良いからね!」

エミリーは教科書を手に、レイフを拝むように「どうか……どうか……」と頭を下げてみせる。

「あっ! 俺も! 今回のマジでヤバそうなんだわ〜。あと俺の事もジャックって呼んで良いぜ。

あ、でも先生のことは譲らねぇからな!!」

「お前はいつもヤバいだろ、あとあいつのことは勝手にしろ」

「その余裕がムカつく!!」

——「おい、ヘ、ヘーデンストローム……」

声に反応して後ろを振り向くと、声をかけてきたのは、いつも遠巻きにレイフのことを悪く話していたグループだ。

そわそわとしながら、彼らは必死に言葉を探すように目を泳がせる。

彼らが、チラチラと後ろを気にする様子を見せているのは、背後からニコラとレオノールが、鋭い眼光を飛ばしているためだろう。

クラスのカーストトップである二人に睨まれれば、さぞ生きた心地はしないだろう。

「その……お前のこと、いつも好き勝手、言って悪かなったな……」

「私もごめんなさい。よろしければ、私にも課題の勉強教えてくれるかしら……」

彼らの態度に掌返し感がないといえば嘘になる。

今すぐに彼らのへの見方を変えることができるかといえば、それは否だ。

だが、人間が集団心理に流されやすい生き物であることは否定し難い事実だ。

幼いころから、権力者の父やその息子である自分に媚びてくる人間を多く目にしてきたレイフは、そのことをよく理解していた。

彼らがこれから変わっていけるかは、今後次第だろう。

――それにしても……。

思えば学院に入学する以前から、ずっと|排他的《はいたてき》な目ばかりを向けられて生きてきた。

まだ、怯えた様子の生徒達は別にして、エミリーやニコラ、レオノールの目には明らかに自分への好意と言って良いものが見える。

だから、こういう時にどうすれば良いのかを彼は知らない。

ちなみにジャックの視線には、禍々しい嫉妬が浮かんでいて、少し安心した。

彼には是非、そのまま変わらないでいてほしいとレイフは思う。

「あぁっ! そういうのやめろ!!

普通に教えてやる。勉強するならどっか行くだろ?

申し訳ないと思うなら夕飯でも奢りやがれ。あと俺のこともレイフで良い……」

周りの生徒たちがニマニマしてるのは気に食わないが、これ以上反応しても、また面白がられるだけだということは理解している。

「ねぇ、レイフくん」

「何だよ、エミリー」

「ヴィオレタ先生はやっぱり、良い先生だと思うよ。

本当のレイフくんをみんなにこうして伝えてくれたわけだし、私たちにも新しい友達を増やしてくれたからね」

「まぁ、つまんなくはねぇ教師かもな……」

——今度、ケーキでも差し入れてやるか。

その後、ケーキを差し入れられたヴィオレタが何故か不機嫌になり、レイフの仕事量が二倍増しになったのは、また別の話だ。

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