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7. 元カレからのメッセージ

last update publish date: 2026-09-09 21:47:36

「あなたの事情は、分かったわ。

 私にも、あなたを拾ってきた責任があるし、とりあえずは、しばらくうちに置いてあげる。

 でも、これだけは約束して」

 私は、コウヤに向かって、三本の指を立てて見せた。

「一つ、人前で勝手に犬に変身しないこと。

 二つ、家では、別々に寝ること。妙なことをしたら、外で寝てもらうから。

 三つ、働かざる者、食うべからず。

 私が仕事に行ってる間は、家のこと……掃除・洗濯・料理をしてちょうだい。

 まぁ、あまり長く居つかれても困るけど……」

 コウヤは、納得のいかない顔をして首を傾げる。

「妙なことって?

 俺は、ファムの嫌がることは、絶対にしない。

 ファムの喜ぶ顔が見たいだけだ」

 顔が赤くなるようなセリフをよく言えるものだ、と私は関心した。

「とにかく、あと人前でキスしたり抱きついたりしないこと!

 私は、あなたの番つがいになるなんて認めてないんだからね。

 あなたの居た世界では、女性の同意もなくキスなんかして許されるの?」

 コウヤが気まずそうに首をすくめる。

「う……そ、それは……わかった。

 ファムが嫌なら、誰も見てない時だけにする」

「そうそう、誰も見てないところで……って、違う!

 誰も見てなくても駄目!!」

(これは、躾しつけに苦労しそうね……)

 私は、無理やりコウヤに約束をさせると、しばらくの生活に必要なものを買い揃えてから、家へ帰った。

 荷物を置いて一息つくと、スマホに着信があることに気が付く。

 婚活サイトにコウヤの写真をアップしておいたので、早速たくさんの連絡が入っていた。

(職業「不詳」って登録していたのに、リアクション率が高いなぁ~。

 やっぱり、人間、顔·が重要なのね、顔·が)

 いずれも年収の高い女性たちからの連絡ばかりだ。

 私は、コウヤに彼女たちからのメッセージと写真付きプロフィールを見せた。

「どう? コウヤに興味があるって女性たちがこんなにいるのよ。

 この中から番つがいを選ぶってのは、どうかな?

 コウヤ好みの女性はいる?」

 すると、コウヤは、むっとした表情でそっぽを向いた。

「俺は、他の女に興味は持たない。

 俺には、ファムだけだ」

「そ、そんなこと言わないで、見るだけでも見てみたら?

 ほら、選択肢は、多い方がいいでしょう。

 この女性なんて、女の私から見ても美人だし、高物件……」

 私は、スマホの画面をコウヤの顔の前に突き出して見せた。

 すると、コウヤがおもむろに私の腕を掴む。

「ファムは、俺がこの中の女たちと番つがいになってもいいのか」

「え……そ、それは……」

 至近距離でコウヤに見つめられ、私の胸が無意識に高鳴る。

(あれ、なんだろう、これ……)

 純也と別れてから、感じることのなかった心の深い部分が揺り起こされていく感覚。

(きっと、勘違いよ。

 こんなに真っすぐな気持ちをぶつけられたことがないから、驚いているだけ……)

 私の腕をつかむコウヤの手に、力がこもる。

「どうしたら、わかってもらえる?

 俺は、ファムと番つがいになりたいんだ」

 コウヤの黄緑色の瞳が切なく私を見つめている。

 ゆっくりコウヤの顔が近づいてきて、そのまま口づけされるのだとわかった。

 一瞬、ほだされそうになったけど、純也にされた仕打ちが頭をよぎる。

「男なんて皆、どうせ一緒よ……」

 キスされる寸前で、思わず、心の声が私の口をついて出ていた。

 コウヤが顔を引き、戸惑った表情で私を見る。

「それは、どういう……」

 その時、私が手にしていたスマホが鳴った。

 私は、またコウヤ宛へのメッセージが来たのかと思い、画面を見る。

 しかし、そこに表示されていたのは、婚活サイトからのメールではなく、

 私の元彼――純也からのチャットメッセージだった。

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