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第四話——消えた温もり

ผู้เขียน: 桜庭結愛
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-11-10 17:36:06

最寄りの駅に到着して、見慣れた近所の道を静かに歩く。手は繋いだままだった。

「もう手は繋がなくてもいいんじゃない?」

少し照れ臭くて蓮から顔を逸らして言う。

長い沈黙が二人の間に流れる。今の言葉、良くなかったのかな、と考えていると、突然充電が切れたかのように蓮の足が止まった。私に向けた顔からは、何かに怯えるような目が覗いていた。震えた声で蓮は言う。

「さっきの告白の件だけど、忘れてくれていいから」

「……え」

「いや、もちろん少しでも意識してくれたら嬉しいけど、陽菜のこと困らせたいわけじゃないし」

「……」

何も言えなかった。ただ、勇気を出して伝えてくれた言葉を無かったことにはしたくない。私が口を開くより先に、蓮が言葉を続けた。

「怖かったんだ。もう今までの関係じゃいられないと思うと……」

抱えきれなくなった不安を落とすように、次から次へと口にする。

「陽菜が遠くに行っちゃうような気がした。心も、物理的にも。俺は何よりも陽菜が大切なんだ。だから……っ」

そこで蓮は言葉を詰まらせる。やがて、蓮は開きかけていた口を閉じた。

蓮から会話のバトンを受け取り、一番伝えたいことを告げる。

「離れていかないよ」

決意に満ちた視線で蓮のことを見つめた。思っていたこと全てを取り逃さないように、途切れさせることなく言葉を紡ぐ。

「絶対、どこにも行かない。蓮の気持ちも忘れない。私は嬉しいよ、蓮に好きって言われたこと」

蓮は無言のままだった。言葉の意味を確かめるように、じっと私を見つめている。

「私にとって翠と蓮は同じくらい大切な存在だよ。だからさ、蓮も自分の気持ちを大事にしてよ。忘れてなんて言わないで」

告白を断った私にそんなこと言う権利がないのは分かっている。でも、蓮がどれくらい勇気を持って気持ちを伝えてくれたかは理解しているつもりだ。乾いたはずの涙が、また頬を伝う。

涙を堪えるように視線を落とすと、繋がれたままの右手をそっと引かれた。その瞬間ふわっと全身に温もりが広がる。

蓮に抱きしめられたのだと理解するのに数秒かかった。上からは鼻を啜る音が聞こえてくる。顔は見えないがきっと泣いているのだろう。広がった温もりが少しずつ安心に変わっていくのを感じ、心の奥までじんわりと染み渡るようだった。

――暗闇の中、しばらく二人はお互いの感情を静かに、でも確かに共有していた。

あれから特に大きな出来事もなく、平穏に生活をしていた。

一つ変わったことがあるとすれば、蓮が自分の気持ちを素直に言葉にするようになったことだろうか。

朝は毎日蓮と一緒に登校をする。最近図書委員の仕事はサボっているらしい。なんでも、「陽菜と登校することの方が有意義だ」と、同じ図書委員の子に言ったのだとか。恥ずかしげもなくよくそんなことが言えるな、と感心してしまう。

「なぁ、聞いてた?」

「ごめん、どうしたの?」

休み時間も一緒にいることが増えた。告白されたあの日から心の距離がさらに近づいた気がする。翠がこの光景を見たら驚くだろうな、と想像して心が温かくなった。

「今日の髪型も似合ってるな」

「ふぇ?」

突然のことすぎて、素っ頓狂な声が漏れてしまう。

「急にどうしたの?」

「自分の気持ちを大事にって言ったのは陽菜だろ?」

「まぁそうだけど……」

あの日伝えた言葉が蓮の心に響いたのか、思ったことをすぐ口にするようになった。流石に教室ではやめて欲しいのだけど……。

「愛されてんね」

「面白がってるでしょ」

「そりゃそうよ」

「ん〜もう!」

志織に揶揄われるのも日課になってきた。それでも灰色の世界に比べたら、眩しいくらいに彩り豊かな生活だ。でも勘違いされるのは嫌なので、後できちんと蓮に言っておこう。心の中で決心していると、新たな事実が耳に入ってきた。

「そういえば、直宏なおひろに、蓮と陽菜の関係について聞かれたよ」

「……嘘だよね?」

「ほんとほんと。本人に聞けば?って言っといた」

「不安なんだけど」

直宏は、私たちのクラスメイトで、よく蓮と一緒に話しているところを目にする。それよりも――

「やっぱり勘違いされてるよね」

「あんだけ蓮の態度が変わればそりゃあねぇ」

やっぱり蓮には控えてもらうように伝えよう。

蓮にどう伝えようか考えていると、さらに驚くべき事実が耳に入り込んできた。

「陽菜との関係について、蓮が質問されてるところをよく見るよ」

「え、ほんとに?なんて答えてるんだろう……」

「仲良い幼馴染だよって」

「え、そんなので納得してくれるの?」

「うん、大体はね」

「便利な言葉すぎる……」

それで納得してしまう直宏の単純さと、飾らない蓮の素直さに思わず笑ってしまう。

少し照れくさいけど、今の賑やかな日常が陽菜にとってとても心地良かった――

いつもと同じく学校終わりに蓮と病院へ向かう。階段を登り二階に着くと、翠の病室から看護師が慌ただしく出ていくのを目にした。胸がざわつき、私は思わず早足になる。

扉を開けるとベッドの上で翠が体を起こしていた。

「翠……!」

昨日まで閉ざされていた瞼が開き、瞳がこちらを映している。その姿に安堵が広がり思わず抱きつきそうになる気持ちを必死に堪える。しかし、次に返ってきた言葉で私の視界は真っ黒に染め上げられた。

――すみません。どなたですか?

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