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第4話

Penulis: 流星群を抜け出したら
夜が明けたばかりの頃、突然、部屋のドアが蹴り開けられた。

飛び込んできた父に、いきなり頬を張られる。

続いて母が、私の目の前にスマホを叩きつけた。

画面に映っていたのは、美咲が手首を切る前に投稿した、最後の動画だった。

美咲は全身を震わせながら泣いていた。

「初音ちゃんが、私と湊のやり取りをネットに流したの。それで、私が泥棒猫って叩かせて……アカウントまで通報されて……

全部、私が悪いの。

初音ちゃんにあんな冗談なんて言うべきじゃなかった。許してもらおうなんて甘えてた私が悪いの」

そんなやり取りが何を指しているのか、私には見当もつかなかった。

けれど、美咲が涙ながらに訴えたことで、誰もが私の仕業だと決めつけていた。私が裏で美咲にネットリンチを仕掛け、追い詰めたのだと。

母が私を指差し、怒鳴りつける。

「初音、これで満足?

美咲ちゃんは昨日の夜リストカットして、今も病院で処置を受けてるのよ!」

美咲が残した遺書には、私への謝罪がびっしりと綴られていた。

ただみんなを笑わせたかっただけなのに、私の結婚式を台無しにしてしまった。許してもらえないのなら、命で償うしかない、と。

湊が乱暴に私の手首を掴む。その目に浮かんでいたのは、もう嫌悪だけだった。

「たかが一本の動画だろ。そこまでして消させたかったのかよ。美咲の仕事まで潰して……もし美咲が死んだら、お前、一生後悔するぞ」

まだ熱が下がっていなかった私は、何も説明できないまま、3人に連れられて病院へ向かった。

美咲はすでに意識を取り戻していた。

両親と湊が医師を呼びに病室を出ると、それまで目を閉じていた美咲が、ふいに目を開けた。そして私を見て、かすかに笑う。

「7年も湊のことが好きで、1年かけて結婚式の準備までしたのにね。

私が白ヶ島に行きたいって一言言っただけで、湊は花嫁のあんたを置いて、私についてきてくれた。

あんたのご両親だって、実の娘より私のほうが大事みたい」

私は怒りで全身が震えた。

「やっぱり、あのやり取りもネットの炎上も……全部、あんたの自作自演じゃないの!」

その時、廊下から足音が聞こえてきた。

美咲の顔から、勝ち誇った笑みが一瞬で消えた。次の瞬間、いきなり私の手首を掴み、悲鳴を上げた。

「初音ちゃん、お願いだから点滴抜かないで!

ちゃんと謝ったじゃない! どうしてまだ許してくれないの?」

病室に飛び込んできた湊が、力任せに私を引き離した。

「初音、狂ったのかお前は!」

「違う、美咲が――」

説明しようとした瞬間、背中に強い衝撃が走った。父に突き飛ばされたのだ。

「出ていけ!これ以上、美咲ちゃんを刺激するな!」

よろめいた私は、そのまま床に倒れ込んだ。

激痛が一気に全身を駆け抜ける。

次いで、生温かいものが脚を伝って流れ落ちていくのを感じた。

そういえば、今月はまだ生理が来ていない。

結婚式の準備で忙しかったし、精神的にも疲れていた。ただ遅れているだけだと思っていた。

けれどその瞬間、恐ろしい可能性が頭をよぎった。

私は慌てて湊の袖を掴んだ。

「湊……お腹、すごく痛い。

今月、生理も来てなくて、もしかしたら、妊ーー」

言い終えるより早く、ベッドの上から美咲の弱々しい呻き声が響いた。

「湊」

湊はすぐに私の手を振りほどき、美咲のもとへ駆け寄った。

両親も一斉に美咲の周りを取り囲む。

私の声が聞こえていたはずの母すら、背を向けたまま冷たく言い放った。

「美咲ちゃんは目を覚ましたばかりなのに、こんな時まで張り合うのはやめなさい!」

3人とも、美咲を気遣うことしか頭にないようだった。

視界が少しずつ暗くなっていく。やがて私は、そのまま床の上で意識を失った。

再び目を覚ました時、医師から告げられた。

「妊娠6週目でした。

……残念ですが、赤ちゃんを守ることはできませんでした」

私は呆然と医師を見つめた。言われた意味が、なかなか頭に入ってこなかった。

医師が病室を出てから、ようやくゆっくりと手を伸ばし、まだ鈍い痛みの残る下腹部に触れた。

ここに、赤ちゃんがいた。

けれど私は、その子の存在に気づくことすらできなかった。

たったの一度も、守ってあげることもできなかった。

不意に溢れ出した涙が、頬を伝い、止まらなくなる。

私はベッドの上で体を丸め、震えながら泣き続けた。それでも、病室のドアを開ける人は誰もいなかった。

両親は美咲のそばにいる。

湊も、私の顔を見に現れることはなかった。

スマホに届いていたのは、30分ほど前に湊から送られてきたメッセージだけだった。

【美咲はもう目を覚ました。

落ち着いたら、ちゃんと謝りに来い】

私はその2行を、長い間じっと見つめていた。それから一人で退院の手続きを済ませ、新居に戻り、スーツケースを引く。

最後に、流産の診断書と結婚式のキャンセル確認書を、テーブルの上に並べて置いた。そして一度も振り返らず、空港へ向かった。

13時間後、飛行機は遠く離れた地へ降り立った。

一方その頃、湊はいつまで待っても私から返事が来ないことに、ようやく違和感を覚え始めていた。

最初は、また拗ねているだけだと思っていた。けれど十数回電話をかけても、一度も繋がらない。

胸の奥に生まれた小さな不安は、次第に焦りへと変わっていった。

急いで新居に戻ったが、中には誰もいなかった。

テーブルの上に、2枚の紙だけが残されている。

1枚は、結婚式のキャンセル確認書。

そしてもう1枚は、流産の診断書だった。

【妊娠6週。外部からの強い衝撃による流産】

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