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第61話 心の花

作者: 暁万里
last update 公開日: 2026-06-30 10:39:15

翌週、澪はスケッチブックを抱えてアトリエを訪れた。

 ページを開けば、一番最初に書かれている言葉は変わらない。

――安心。

 何度見ても、その文字が目に飛び込んでくる。

「テーマは、これでいきます」

 綾人へ向き直ると、少しだけ緊張した声でそう言った。

「ああ」

 綾人は静かに頷く。

「じゃあ次だ」

「次……ですか?」

「その『安心』を花でどう表現するのか」

 澪は固まった。

「……」

 テーマが決まれば、生けられると思っていた。

 けれど違った。

 安心って、どんな花なのだろう。

 どんな形なら伝わるのだろう。

「難しい……」

 思わず本音が漏れる。

「当たり前だ」

 綾人はあっさりと言った。

「簡単にできるなら、今頃、世界中華道家だらけだ」

     ◇

 作業台には様々な花が並んでいた。

 白百合。

 トルコキキョウ。

 カスミソウ。

 デルフィニウム。

 枝葉。

 澪は一本ずつ手に取っていく。

「安心……」

 呟いてみる。

 でも分からない。

 白だから、自分は安心したのだろうか。

 丸い花だから安心なのか。

 優しい色だから安心なのか。

 どれも違う気がした。

 気付けば、
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