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「夫の子を妊娠したのは親友でした。」
「夫の子を妊娠したのは親友でした。」
Author: 琉球狸

第1話 結婚記念日の裏切り。

Author: 琉球狸
last update publish date: 2026-03-25 08:19:29

私の名前は、高橋美咲。

三年前、高橋拓也と結婚した。

郊外に建てられた新築一戸建て。それは、結婚祝いとして父が贈ってくれた家だった。

拓也は、新卒で入社した商社で毎日遅くまで働いている。

忙しくても優しくて、私はそんな彼を尊敬していた。

不自由のない毎日。穏やかで、静かで、幸せな結婚生活。

……そう、思っていた。

だけど。ただ一つだけ、私の中で、埋まらないものがあった。

私は、拓也との子供が欲しかった。

結婚して一年が過ぎた頃、私は一度だけ、その気持ちを彼に伝えたことがある。

「今は仕事に集中したいんだ。ごめん」

困ったように笑いながら、拓也はそう言った。

責めるつもりなんて、最初からなかった。

だから私は、「そっか」と笑って引き下がった。

……でも。

その日からだった。

拓也が、子供の話を避けるようになったのは。

気付けば、最後に拓也に抱かれたのは――

もう一年以上も前になる。

それでも私は、拓也のことを愛していた。

そして明後日は、私たちの結婚記念日。

だから私は、ちゃんと気持ちを伝えようと思っていた。

あなたが、そばにいてくれるだけでいい。

子供は、いつか授かれたらそれでいい。

もし負担になるなら、私は待つから。

ちゃんと、拓也の隣にいられるなら、それで良かった。

そして――

結婚記念日当日。

私は朝から、少しだけ浮かれていた。

拓也を仕事へ送り出した後、料理の準備を始める。

ちゃんと私の気持ちを伝えるんだ。

拓也が大好きなメニューで食卓を埋めていく。

拓也の喜ぶ顔を想像すると、自然と頬が緩んでしまう。

食卓には花を飾って、少しだけ豪華な料理を並べた。

準備は完璧だった。

あとは、拓也が帰ってくるだけ。

それでも、私は待ち続けた。

けれど、彼が来ることはなく、メッセージ一通さえ届かなかった。

21時。

まだ、帰ってこない。

22時。

不安になって、メッセージを送る。

『まだ残業してるの? 帰り道で何かあったんじゃないかって、すごく心配してるよ』

既読は、つかなかった。

23時。

本当に、どうしたんだろう。

残業だとしてもさすがに遅すぎる気がする。

心配だけが、どんどん募っていく

何度画面を見ても、既読はつかない。

「......電話してみようかな」

そう呟いて携帯を握り直した、その時だった。

...ガチャッ...

玄関の鍵が開く音がする。

拓也が帰ってきたんだ!!

ずっと心配してた人が無事に帰ってきた。

その安堵と嬉しさに背中を押されて、私は玄関へと駆け寄る。

「拓也! おかえりなさい! 今日ね……」

結婚記念日の準備を伝えようとする私を遮るように拓也が言葉を返す。

「ごめん、仕事でまだ...少し急ぎの対応がある」

帰ってきたのも束の間に、出迎える私を無視するように書斎に向かう拓也。

「あのね、拓也。今日は私たちの......」

拓也は、そのまま振り返ることなく書斎に入り、

そのままドアを閉める。

期待をしていた瞬間が、崩れていった。

私は準備をしていた食卓に座り、悔しさから頬には涙が流れていた。

準備をしていた赤ワインを開けて、そのほろ苦い渋みを涙に溶かしながら...

結婚生活を振り返る。

拓也と出会ってから今までの事が頭の中で映写機のように景色が流れていく。

楽しかった思い出や幸せな時間...

「どうしてこんなことになっちゃったんだろう......。

こんなふうにはなりたくなかったのに」

心の中から寂しさが決意を侵蝕するような苦しい感情が襲ってくる...

いや、良くない!。

「ちゃんと私の気持ち伝えなきゃ...」

拓也の事を愛してる。

その愛している拓也との子供が欲しいって...

私は、拓也のいる書斎に向かおうと席を立つ。

...書斎の扉が開いている。

「拓也...ちょっと話があってさ...」

扉の先を覗くと誰もいない。

...もう仕事終わったのかな?

...ん?...

気づいたら、落としていたはずの浴室の照明が付いている。

「あれ...ちゃんと消したけどな」

浴室に向かうと...

拓也の静かで、荒い息が聞こえてくる...

私は、ゆっくりと浴室を覗く。

!?!?...

浴室のドアの影から何をしているのかわかってしまった。

1人で欲望を発散している...

私は、目の前の状況に立ち止まってしまう。

「...沙織...沙織...」

その欲望に忠実な荒い息の合間に溢れた名前。

それが、私ではなかった。

「沙織...?」

「沙織ってまさか...だよね...」

伊藤 沙織...

私の高校時代の親友であり、大学から進路が別で離れたが大学卒業後に拓也と結婚をして現在の新生活の最中に再会をする。

今では、良く会う機会が増えて悩みなどを聞いてもらっている。

比較的近所に住んでいる沙織は拓也と良く出かけるスーパーで働いていて。

少し前に、拓也にも紹介をしたばかりであった。

考えたくはない...けども、昔、沙織との関係に植えついたトラウマが蘇る。

...

高校二年の夏。

私が好きだった先輩に、沙織は笑いながら近付いた。

私は何も言えなかった。

一週間後。

先輩の隣には、沙織がいた。

そのショックがぶり返し胸を締め付ける。

「違うよね...きっと、別の人だから...」

私は呆然としたまま寝室に戻った。

……浴室の水音が止まる。

リビングで携帯に小声で話す拓也の声...

「うん...大丈夫だって...」

「バレてない、まだ気づいてないよ...」

「ちゃんと終わりにする、予定通りだから...」

「だから心配しないで待っててくれ...」

「愛してるよ...沙織」

......

通話を切った拓也は、リビングに置かれていた赤ワインのボトルを見つめていた。

そして小さく呟いた。

「ごめんな...美咲」

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