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133話

Author: 籘裏美馬
last update Last Updated: 2025-12-16 19:23:58

「すみません、苓さん。この部屋は、お店のご好意でお借りしている部屋なんです。お店の人に言って、新しい部屋に案内してもらいましょう?」

この部屋は、一時的に借りているだけ。

腰を据えて話すのであれば、新しく案内してもらわないといけない。

苓さんが告げた「夕食のために来た」と言うのは待ち合わせしていたのがバレてしまわないように、口実だけど、実際苓さんはさっきまで仕事をしていたのだから、食事はまだなはず。

食事を摂りながら、さっき志木チーム長が話していた事を苓さんにも相談してみよう、と私は考えた。

部屋を移動した私たち。

新しい個室に入り、席に座って、軽く喉を潤していると正面に座っている苓さんがふと口を開いた。

「茉莉花さん、さっきの彼……何があったんですか?トラウマって言っていたけど……尋常じゃない様子でした……あんなに取り乱して、顔色も悪かった。相当な事があったと思うんですが……」

「それが……私も全てを聞いた訳じゃないので詳しくはお話できないんですけど……前の会社で、不当解雇?されたようで……」

「不当解雇?」

私の言葉に、苓さんが眉を顰める。

「ええ。その後も転職活動が上手くいかなかったようです。チーム長は、仕事のできる人なのでうちが引き抜いたと思っていたんですが、普通の手順で中途採用されたみたいです」

そもそも、志木チーム長の様子がおかしくなったのは、バイクに轢かれそうになった私を助けてくれてから──。

交通事故にトラウマがあるって言ってた。

それに、被害者じゃなくて、逆の立場……?

そして、志木チーム長は「確かに見た」と言っていた。

うちの会社が、前の会社の影響力が及ばない……って?

志木チーム長が口にした言葉を整理していると、何だか嫌な予感がむくむくと膨れ上がっていくのを感じる。

「──り、さん。茉莉花さん?」

「──っ!す、すみません苓さん……。少し考え込んでしまっていて……」

私は、苓さんがいるのに1人考え込んでしまっていたようで。

慌てて苓さんに頭を下げつつ、耳の横にぱさり、と落ちてきた髪の毛を耳にかける。

すると、苓さんの顔つきが変わった。

「──茉莉花さん、その手どうしたんですか!?擦りむいてる」

「え、あ……本当ですね。気づかなかった……」

「薄っすら血が滲んでるじゃないですか!」

そう言う
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