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4話

作者: 籘裏美馬
last update 公開日: 2025-10-09 23:25:19

「虎おじさま!」

「茉莉花ちゃん、大きくなったね。美人になった!」

駆け寄った勢いそのままに、私は虎おじさまに抱きつく。

虎おじさまは危なげなく私を抱きとめると、嬉しそうに目尻を下げて私の頭を撫でてくれるのだが、撫でてくれる行為も、虎おじさまの言葉も、私が子供の頃から変わらなくて。

私は頬を膨らませて虎おじさまに返す。

「虎おじさま。私はもう25です。子供じゃないのですよ」

「ははは、立派なレディーになったね。失礼した」

「ふふふっ、許してあげます」

虎おじさまは、昔と変わらない優しい目で私を見つめる。

虎おじさま。

田村琥虎(たむら ことら)はお父様の大学の後輩で、昔から仲良くしてもらっている。

いくつも会社を経営していて、普段は海外に在住しているのだが、こうしてたまに帰国した際にお父様に挨拶をしに来て、私とも会ってくれる。

「虎おじさま。今回の滞在はどれくらいの期間なのですか?今日は本家に泊まります?それとも、家に?」

私が矢継ぎ早に質問していると、お父様が苦笑しつつ「落ち着きなさい」と話す。

「琥虎は、本家には戻らない。今回の帰国は事業に関してだから、そんなに長くは滞在しないんだ」

「まぁ…そうでしたの?残念です…。本日のお夕食はもう決まっていますか?」

仕事で帰国したのならば、贅沢は言えない。

せめて、食事を1度でもできたら、と思い私が虎おじさまにそう聞くと、虎おじさまは深く頷いてから答えた。

「今回は、茉莉花ちゃんの家で食事をとる時間はないんだが…。仕事関係でパーティーを開くんだ」

「パーティー、ですか?」

「ああ。政界の人間や、業界の人を呼んでいる。少し広い会場だし、招待客が多くて…あまり話す機会は取れないかもしれないんだが…茉莉花ちゃんが良ければ、パーティーに招待してもいいかな?」

「!勿論です!お招きありがとうございます!」

虎おじさまの言葉に、私はぱっと表情を明るくする。

きっと、虎おじさまはお父様にパーティーの事を話しに来たのだろう。

それを裏付けるように、虎おじさまはスーツの内ポケットから招待状が入った封筒を2枚取り出した。

1枚は私に。

そうして、もう1枚はお父様に渡すのだろう、と考えていたのだけど、何故か虎おじさまは招待状を2枚とも私に手渡してきた。

「え?お父様は…」

私の疑問はすぐに分かったのだろう。

お父様は苦笑いを浮かべたまま、私に答える。

「今回のパーティーは、私は不参加だ。その日、どうしても仕事で外せない予定があり、その日は国内にいないんだ」

「そう。藤堂先輩は来られないようでね。だから、茉莉花ちゃん。もし良かったら、婚約者と一緒に参加したらどうかな?」

「婚約者…御影さんとですか?」

私は、招待状を受け取ったまま、笑顔が固まってしまう。

誘えば、御影さんは私のパートナーとしてパーティーに参加する事になる。

そして、虎おじさまにも一緒に挨拶に行く事になるのだが、御影さんは絶対に嫌がるだろう。

例え、虎おじさまが有名な経営者だとはいえ、御影さんが快くパーティーの招待に応じるとは思えない。

もしかしたら、私1人での参加になってしまうかもしれない。

虎おじさまのせっかくの好意を無下にしてしまうかも、と私が悩んでいると。

虎おじさまは優しく私に話しかけた。

「もし、茉莉花ちゃんのパートナーが都合が悪ければ、茉莉花ちゃん1人でも構わないよ。その日は、私の妻も参加するから茉莉花ちゃんを退屈させてしまわないよう、妻にも言っておくし」

「奥様も参加なさるのですね」

それなら、虎おじさまの言う通り奥様と話していれば、退屈はしない。

虎おじさまの奥様とは見知った仲だ。

奥様も昔から私を可愛がって下さっていて、帰国した際は一緒にお茶を楽しんだりしたいた。

虎おじさまと奥様の間には、息子が2人で、女の子には恵まれなかった。

昔から娘が欲しかったらしくて、私を実の娘のように可愛がってくださっていたのだ。

奥様とお話できるのは、とても楽しみだ。

私は虎おじさまに顔を向け、笑顔で頷いた。

「それでしたら、是非!ご招待、ありがとうございます。父の代わりには及びませんが、東堂家として、ご招待預かります」

「良かった!パーティーは2日後だから、楽しみにしているよ茉莉花ちゃん」

虎おじさまはそう言うと、お父様と私に挨拶をして部屋を出ていった。

きっと、お忙しい中、わざわざ足を運び、直接お誘いにいらしたのだろう。

東堂家の恥を晒さぬよう、私もパーティー当日までに準備をしなくては、とお父様と少し話したあと、急いで自宅に戻った。

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