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66話

Penulis: 籘裏美馬
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-12 08:41:24

温かくて、柔らかくて、ふわふわする──。

微睡みの中で、俺は目の前の柔らかな物に擦り寄った。

いつまでも触っていたくなるような、そんな感触。

何かが邪魔をしていて、俺は無意識のうちに手を動かした。

手のひらに吸い付くようなしっとりとした手触りが気持ちよくて、力を込めてしまう。

瞬間。

「──んぅ」

「……っ!?」

頭上から甘い吐息が聞こえ、俺は一瞬で目が覚めた。

ばちっと目を開けて、目に飛び込んで来た光景に硬直する。

「ま、茉莉花さん…!?何でっ」

俺が顔を埋めていたのは、とんでもない事に茉莉花さんの胸。

そして、自分の手が何をしているのかを認識した瞬間、すぐに茉莉花さんの服から手を引き抜いた。

真っ赤になったまま、考える。

何でここに茉莉花さんが。

俺は昨夜何をして、と考えた瞬間全て思い出す。

そうだ、俺は茉莉花さんのお父様とお祖父様に誘われて酒の席に。

そして、2人の酒豪っぷりに驚き、勧められるままに酒を飲み続けて──。

「──くそっ」

そして、俺は廊下で茉莉花さんと会って酔った状態のまま彼女を部屋に連れ込んだんだった。

酒に酔い、彼女に甘え、みっともない姿を晒していた。

いくら酔っても記憶が曖昧にならない自分の体質を、今だけは呪う。

こんな醜態を晒すくらいなら、全て忘れてしまいたかった。

好きな女性に子供のように駄々を捏ね、絶対に彼女を困らせた。

しかも、こんな風に彼女を部屋に引き込み、ベッドに連れ込んだなんて──。

嫌われていたらどうしよう、と頭を抱
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