Share

80話

Author: 籘裏美馬
last update publish date: 2025-11-19 08:36:15

どすん!と大きな音が鳴り、びっくりした私はソファから身を起こす。

苓さんがソファから落ちてしまったのでは──。そう思った私は、苓さんに声をかけようとしたけど、私が声を発するより先に苓さんが口を開いた。

「きょ、今日はありがとうございました茉莉花さん。足の怪我、ちゃんと手当てを受けてくださいね。その…っ、俺はここで失礼します!また!」

「あっ、苓さ──」

苓さんは勢い良く頭を下げると、部屋の扉から素早く外に出て行ってしまった。

私は苓さんが出て行ってしまう姿をぽかんとしながら見送るだけしかできなくって。

苓さんが帰り、途端静かになった自分の部屋で1人きりになった瞬間、恥ずかしさがこみあがって来た。

「わ、私は…っ、さっきまで苓さんと…っ」

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (1)
goodnovel comment avatar
知佳子
茉莉花と苓の関係がもどかしい 早く恋人関係になればいいのに 一話ずつの内容が少ない。 せめて行数を詰めて内容を多くしてほしいな もう少しテンポよく話を進めて欲しい やっと元婚約者の執着がはじまるのかな?
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   358話

    ようやく私たちの呼吸も、感情も落ち着いて。 私がお母様が寝ているベッドから立ち上がる事ができた。 そして、病室の入口付近で泣いているお父様の元へ近づき、お父様を立たせる。 ぐっしょりと涙に濡れたお父様の顔。 お父様は私に何度も「すまない」とお礼を伝えながら、震える足で何とかお母様の近くに行き、私が座っていた丸椅子に腰掛けた。 「はる……はる……」 「──な、た」 お母様の名前を、お父様が必死に呼び。 そして、お母様が途切れ途切れにお父様を呼ぶ。 お父様の手は、しっかりお母様の手を握っていて。 その光景を見つめていた私は、自分のバッグからハンカチを取り出して目元を拭った。 そこで、ふと気付く。 さっきまで私の背中を優しく撫でてくれていた手が、いつの間にか消えている。 「──苓、さん?」 私は病室をぐるりと見回したけど、病室に居るのは私たち家族、3人だけ──。 そこに、苓さんの姿はなくなっていた。 もしかしたら、気まずくなって帰ってしまったのだろうか。 私は顔を真っ青にすると、慌てて部屋から出た。 お母様が目覚めた事を教えてくれて。 そして、一緒に病室に残ってくれていたのに。 それなのに、苓さんに失礼な事をしてしまった。 もう、帰ってしまっただろうか。 私は廊下に出て、走り出そうとしたけど、苓さんはすぐに見つかった。 廊下に設置されている長椅子に座り、ぽつんと1人で過ごしている苓さんに、私は近付いて行く。 私の足音に気が付いたのだろうか。 苓さんは慌てた様子で自分の顔を腕で拭い、ぱっとこちらに顔を向けた。 「──藤堂さん」 「苓さ……小鳥遊、さん……」 苓さんの顔を見て、私は驚いて彼の名前を呼んでしまいそうになった。 だけど、慌てて苗字を言い直す。 どうして? どうして、苓さんが。 苓さんの目元は赤く染まっていて。 明らかに泣いていたのが分かる。 苓さんは、私とお付き合いをしていた事なんて覚えていない。 だからきっと、私に付き合い、お母様のお見舞いに来た事だって覚えていないはずなのに。 それなのに、苓さんは泣いてくれていたの? 私は、苓さんの近くまで歩いて行くと、彼が拒まないのをいい事に、少し彼から距離を取って長椅子に腰を下ろした。 「──小鳥遊さん、すみません」 「え……っ?」 突然謝

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   357話

    私がお母様の頬を撫でると、お母様の睫毛がぴくりと動いた。 ふるふる、と痙攣する。 私がその光景に驚き言葉を失っていると──。 ゆっくり、お母様の瞼が持ち上がった。 「お、お母様……?」 お母様はぼんやりとした目をしていたけど、私の声が聞こえたのだろうか。 酷くゆっくりと、緩慢な動作でお母様の目が動き、それに連動してお母様の顔がゆっくりと私に傾けられる。 お母様が、私を見た──。 その瞬間、お母様の瞳に様々な感情が浮かんだ。 そして、一瞬にしてそれが消えて。 「ま……つ……」 「──っ、はいっ、はい……!お母様!私です、茉莉花です!」 お母様の唇がぶるぶると震え、確かに私の名前を呼んでくれたような気がする。 お母様の声は聞き取るのも酷く難しいくらい掠れ、小さかった。 だけど、確かに私を認識して、私の名前を呼んでくれた気がする。 その証拠に、お母様の目には沢山の涙が溢れんばかりに溜まり、とうとうそれが零れ落ちた。 私がお母様の手を優しく、だけど力強く握ると、お母様の手にも微かに力が籠る。 そして、弱々しくだけど。確かに私の手を握り返してくれた──。 それが、嬉しくて嬉しくて。 どうしようもなくて──。 私は声も出せず、お母様のベッドに顔を伏せ、泣いた。 そんな私の背中を、苓さんが優しく撫でてくれている。 私の事を覚えていないはずなのに。それなのに、苓さんの優しさは変わらない。 その優しさに、また私の目からは涙が溢れて。 私が泣いていると、廊下からバタバタと忙しなく駆けて来る足音が聞こえ、そして次の瞬間、勢い良く病室の扉が開かれた。 「──羽累!!」 お母様の名前を叫びながら病室に駆け込んできたお父様は、今まで見た事がないくらい慌てた様子で。 いつもはきっちりと整えられている髪も、スーツも、焦って走って来たからだろうか。 信じられないほど乱れていて。 お父様の声に反応したお母様が、ゆっくり顔を動かしてお父様を見たような気配がする。 私は、涙で視界が滲んでしまっていたけど、確かにお母様の顔がお父様の方に向いているのが見えて。 背後から、どしゃりと膝を着いたような音が聞こえた──。 そして、聞いた事がなかった、お父様の涙に濡れる声が聞こえて。 お父様が泣いている──。 それが分かった瞬間、収まってきていた

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   356話

    苓さんと一緒に、お母様の病室に向かう。 病院内を進む苓さんは、記憶がないからだろう。 通い慣れたお母様の病室までの道を、物珍しそうに見ていた。 きょろきょろと周囲を確認する苓さんの前方を歩き、別館に向かった私達は、お母様の病室にようやく着いた。 病室の前と、中には医師や看護師がいるのが見えた。 「──先生!」 私は、病室に駆け寄りつつ声を上げる。 すると、私が来た事に気が付いたのだろう。主治医の先生が私の顔を見て安堵の表情を浮かべた。 「藤堂さん……!良かった、戻られたのですね」 「は、はい……!母の意識が戻った、と……!」 「ええ、驚く事に……。とても喜ばしい事です。先程、指先が動きました。その後、目を覚まされましたよ」 「──っ!本当に、本当に!?奇跡のようです……っ」 「ええ、今はまた眠ってしまっておりますが、意識は戻りましたのでご安心ください。明日、精密検査をしましょう」 「はいっ、はい……!よろしくお願いします!」 お母様の状態を一通り確認し終えたのだろう。 主治医の先生は病室を出て行き、看護師さん達が「何かあればお声かけくださいね」と柔らかい表情で去って行った。 私は、お母様の意識が戻った事が嬉しくて嬉しくて。 私は、ふらふらとしつつ病室の扉に手をかける。 「藤堂さん、危ないです。俺が開けますよ……」 「──あっ、ありがとうございます、小鳥遊さん……」 私を気遣ってくれたのだろう。 苓さんは、私に触れるか触れないかの距離まで近付くと、私の代わりに病室の扉を開けて中に入るよう促してくれた。 「その……、危ないので手を……」 「何から何まで、すみません……」 苓さんが躊躇いがちに手を差し出してくれる。 私は、その心遣いを有難く受け、手のひらを差し出してくれた苓さんに自分の手を重ねた。 苓さんは、重ねられた私の手を見てぎゅっと強く握ると、私の背中に手を添えて支えながら入室した。 「──お母、様」 私がお母様の眠るベッドの横に辿り着いた瞬間、かくんと足から力が抜けてしまった。 「──危ない!」 「ご、ごめんなさい……、小鳥遊さん……」 その場に膝を着いてしまいそうになった私を、苓さんは慌てて支えると、丸椅子に座らせてくれた。 そして、苓さんも眠るお母様をじっと見つめている。 お母様には、今まで

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   355話

    ──待って、今苓さんはなんて言ったの。 私の手を引き、前方を走る苓さんを唖然と見つめながら、私は足を動かし続ける。 道路を駆け、病院に戻ってきた苓さんは、驚いたままでいる私に振り向き、事情を話した。 「警備会社から、俺の所に連絡が来たんです。藤堂さんに連絡が繋がらなくって、俺の所に……!」 「え、え……」 「藤堂さんがお母様の病室を出て暫くして、お母様の指が動いた、そうです。病室内の様子を確認するために時間を決めて、毎回窓から中を確認しているようで……その時、警備員が確認した時にちょうど──」 「お母様の指が動いた、と……?」 私の言葉に、苓さんは強く頷いた。 苓さんが、焦って私を探しに来てくれた理由はこれで分かった。 だから私は、腕を掴んでいる苓さんの手に自分の手を重ね、離してもらうようにぐっと力を入れた。 「ありがとうございます、小鳥遊さん。……すぐに教えていただき、助かりました。谷島さんとお話をしていたから、電話に気づかなくて。……ご迷惑をかけてしまいましたね」 困ったように眉を下げ、私がそう口にすると。 苓さんは何とも言えない、何かを言いたそうな表情で私を見た。 だけど、今の私には苓さんが何を口にしたいのか──。 全く分からない。 私の手を離してもらおう、と力を込める。 すると、私の行動の意を汲んでくれた苓さんは、ゆっくりと手を離した。 「ありがとうございました、小鳥遊さん。……では、私はお母様の所へ向かいま」 「──あのっ、俺もご一緒してもいいでしょうか?」 私がその場を離れようとした時、それまで悩むような顔をしていた苓さんが、意を決したように声を発した。 「え……、どうして、小鳥遊さんが……」 「その……、間違っていたらすみません。だけど、このスケジュールアプリに書かれている茉莉花さんって、……藤堂さんの事ですよね?」 茉莉花さん。 苓さんの口から、凄く久しぶりに私の名前が呼ばれて。 私の視界は瞬時にぶわり、と涙で滲んだ。 そんなに長い期間じゃなかったのに。 苓さんに「茉莉花」と名前で呼ばれなくなった事が、とても寂しかったんだ、と実感する。 苓さんに名前を呼ばれただけで、懐かしく感じて、凄く嬉しくて。 涙が溢れてくるなんて。 「と、藤堂さん……?」 苓さんは、突然涙ぐんだ私に驚き、戸惑ってい

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   354話

    ◇ 病院からほど近いカフェに移動した私と谷島さん。 飲み物を頼み、それを待っている間は谷島さんと世間話をして時間を潰す。 お互い注文をした飲み物が来て、私達は席に着いた。 カフェ店内は、落ち着いた雰囲気で、店内にもお客さんはぽつりぽつりと居る程度。 病院に近いカフェだからか、利用客は病院に用があって、来ている人達ばかりのような気がする。 穏やかな空気が流れる店内で、私と谷島さんは飲み物を一口飲み込んでから顔を見合わせた。 「……はは、そんなに緊張しないでください、藤堂さん」 「すみません……これから話す内容に緊張してしまって……」 「そうですよね……。我々のような仕事をしていないと、中々耳にする機会が少ないでしょうし……」 困ったように眉を下げて笑う谷島さん。 そんな彼に、私も苦笑いを返した。 「先程、病院で話した内容ですが……汚れ仕事を専門的に扱う組織がいる、と言ったでしょう?」 「──はい」 「そういった組織は、実際に存在しているんですよ。……金さえ積めば、何でもやる非人道的な組織があるにはあります」 「──っ、なんてこと……」 「ただ、藤堂さんが口にしていた、速水家との関わり……。そこは、はっきり言って盲点でした。……正直に言ってしまえば、古くから続くお家や、大企業には、そういった組織と通じている場合もあります」 まさか、そんな事があるなんて。 だけど谷島さんは警察関係者だ。 そんな人が、嘘を言う訳がない。 「古くから、国の中核を担う方々にはそんな組織と繋がっている事も珍しくはありません。悲しいけど、これは世界のどの国でも有り得る事なんです、我が国だけではなく……」 「……必要悪、があると言う事ですね」 「ええ、悲しいけどこれが現実ですから……」 谷島さんは目を伏せた後、迷うように視線を彷徨わせた後、改めて口を開いた。 「速水家が、そんな組織と繋がっている可能性はない、と無意識に除外していました。……今後は、その線も見越して捜査しますね」 「──は」 はい、と私が言おうとした瞬間。 「藤堂さん!」 カフェの店内に、慌てたような苓さんの声が響いた。 「──え、……小鳥遊、さん……?」 「良かった、見つけた!」 息を乱し、肩で息をしている苓さんが私と谷島さんに近付いてくる。 突然の苓さんの登場に呆

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   353話

    歩いて行く後ろ姿。 小さくなっていく藤堂さんの後ろ姿を見て、俺はその場から暫く動く事ができなかった。 藤堂さんが時折隣を歩いている谷島に話しかけられ、笑顔で言葉を返しているのが見える。 そんな藤堂さんを見て、俺の胸にはもやもやとした形容しがたい感情が溢れてくる。 「……くそっ。こんな気持ちになりたくないからあの人と距離を取っていたのに」 あの人の隣にいるのが、谷島なのが気に入らない。 どうして、藤堂さんは谷島と楽しそうにしているんだ。 藤堂さんの隣にいていいのは俺だけなのに──。 そんな事を考えてしまっていた俺は、ハッとする。 「何で……俺は、藤堂さんを知らないのに……」 どうしてこんな気持ちになるのか。 知らないのに、知っているような。 記憶なんてないのに、俺は藤堂さんの笑顔を知っている。 あんな風に藤堂さんに笑顔を向けられるのは、俺だけだったのに。 「──は?俺は、何を……」 俺だけが笑顔を向けられていたって何だ? どうしてそんな事を思うんだ。 俺は、藤堂さんを何も知らないのに──。 俺は、本来ここに来た理由が入っているスマホを入れているポケットに視線を向けた。 どうしてあの時、俺は藤堂さんに聞かなかったのだろうか、と後悔の念が込み上げてくる。 スマホにスケジュールされた、ある予定。 その予定に、どうして藤堂さんの名前が書かれていたのだろうか。 どうして、俺はその名前を見ただけで彼女だと、藤堂さんだと思ったのか──。 スマホのスケジュール。 今日の日付には、しっかりと書かれていた。 「茉莉花さんと病院」と。 「茉莉花さん──」 どうして、しっくりとくるんだろうか。 それに、どうして茉莉花と言う名前が藤堂さんだとすぐに分かったのか。 どうして、懐かしい気持ちになるのか──。 「……くそっ」 何が何だか分からなくて。 もう1度藤堂さんに会ったら、何かが分かるだろうか。 谷島と、どこに行った──? 俺はあの2人を探し出そうと思い、駆け出そうとした。 その瞬間。 ポケットに入れていたスマホが、着信を知らせた。 ぶるぶると震えるスマホに、ハッとして俺はスマホを取り出す。 すると、そこには──。 「警備会社……?どうして、俺に……?」 どうして俺に警備会社からの電話が? そう思ったが、何か

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   280話

    扉が開き、隣の部屋が見える。 中には、マジックミラーの向こう側に2人の人間が座っていた。 小さなテーブルを挟んでお互い向かい合うように座り、1人は谷島さんと同じようなスーツを着ているから刑事の方だろうか。 そして、その刑事の方の向かいにその人物は居た──。 お世辞にも、綺麗な服とは言えない。 汚れた衣服を見に纏い、無精髭を生やした中年の男性が項垂れるようにパイプ椅子に座っていた。 その顔は、痩せこけていて。 目も窪んでいて。 「──っ」 私には、見覚えのない人物、だ。 私は隣に居るお父様をちらりと見上げた。 お父様は目を細め、暫く無言でいたけどゆっくりと首を横に振り、

    last updateLast Updated : 2026-04-04
  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   271話

    ◇ それから、数日。 お父様が警察関係は全て対応して下さっているからだろうか。 私は、普段通り会社に出社して、自分の仕事に集中する事が出来た。 報道機関への対応も、お父様を中心にお父様の秘書である上尾さんが対応してくれているからか、記者が私に話を聞きにやってくる事は無かった。 一時、落ちてしまっていた藤堂グループの株価も今では回復の兆しを見せていて、世間の反応も日が経つにつれて変わっている。 最初は懐疑的で、疑いの目を向けていた一般の人達も、もしかしたらお祖父様が故意に傷付けられた可能性がある、と言う情報と、警察が捜査を開始したと言うニュースが報道されると、皆が手のひらを返した

    last updateLast Updated : 2026-04-03
  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   252話

    私が部屋で着替えを終え、リビングに移動して来てからどれくらい時間が経っただろう。 コーヒーを用意して飲んでいたのだけど、そのカップの中が空になった頃。 ようやくバスルームから物音が聞こえてきた。 「──っ!」 苓さんがお風呂から上がったのだ。 私は、手にしていたカップをテーブルに置き、リビングのドアを振り返った。 私が振り返るのと同時。 リビングの扉がガチャリ、と言う音と共に開かれ、苓さんが姿を現す。 「れ、苓さ──」 「あ、茉莉花さん……」 苓さんの名前を呼ぼうとした私の声は、最後まで言葉を紡ぐ事なく、途切れてしまう。 苓さんは温かいシャワーで体が温まったのだろう。

    last updateLast Updated : 2026-04-02
  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   250話

    ドサドサ!と、私たちが脱衣所に倒れる派手な音が聞こえる。 広い脱衣所だから、私たち2人が床に倒れ込んでも十分なスペースがあったみたいで。 私も、苓さんもあちこちに体をぶつける事は無かった。 だけど、絶対に頭を打ってしまうだろう、と覚悟していた私に、いつまで経ってもそんな痛みは訪れなくって。 それに、何だか私の体が温かい──。 私は、無意識に瞑ってしまっていた目をそろそろと開ける。 すると、思った通り、苓さんがあんな状況でも、私を庇うように抱きしめてくれていたみたいで──。 私が後頭部を打たないように、苓さんの大きな手のひらが後頭部に回り、引き寄せてくれていた。 だけど、私を

    last updateLast Updated : 2026-04-02
More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status