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第4話

Auteur: 人類補完計画
真言の帰宅はますます遅くなり、迎えに来てくれることもなくなった。

会社に仕事が山のように積み上がっていて、どうしても抜けられない――彼はいつもそう言うだけだった。

私の誕生日に、私は真言の好物を食卓いっぱいに並べ、朝日が昇る時から日が暮れるまで、ただひたすら彼を待ち続けた。

だが、彼はその夜、帰ってこなかった。電話もつながらないままだった。

真夜中を過ぎ、ようやく目にしたのは、千枝のインスタに投稿された一枚の写真だった。

豪華なクルーザーの上で、セクシーなビキニ姿の千枝が、真言に絡みつくように寄り添っている。

写真に添えられたキャプションは、こうだった。

【ダーリン、誕生日サプライズを用意してくれてありがとう】

そうか。千枝と私は、誕生日が同じ日だったのだ。

真言の会社に乗り込み、その写真を突きつけても、彼は冷ややかな表情を見せた。

「もういい加減にしろ。ビジネスパートナーだって、あれほど言っただろう?それでも俺を信じられないのか?」

「ビジネスパートナーで、肉体関係まで必要なの!?」

私は泣き叫び、スマートフォンを真言に向かって投げつけた。

彼は避けることもなく、スマートフォンの角がこめかみをかすめて床に落ちた。一筋、血がにじんだ。

「ああ、そうだ。千枝と付き合っている」

「なぜ?」

「俺が欲しいもの、千枝が全部くれた。でも、お前はそれができない」

真言は私を見据え、一語一語を突き刺すように、容赦なく言い放った。

「美穂ちゃん、お前を愛している。だが、愛だけでは人は生きていけない。もう、人に頭を下げるような生活はごめんだ」

私は発狂するかと思っていたが、そうはならなかった。ただ静かに彼を見つめ、離婚を切り出した。

「離婚なんてしないよ」

真言は私の手を掴み、哀願の色を滲ませた口調で言った。

「美穂ちゃん、もう少しだけ時間をくれ。会社が安定したら、千枝とは断つ。お前は永遠に俺の妻だ。それだけは変わらない。約束する。千枝が持つものは、お前にも与える」

妻?

彼は、私を何だと思っているのだろう。都合のいい予備の女か?

だが、私を待っていたのは、真言の謝罪ではなく、千枝の露骨な挑発だった。

ある日、患者の診察をしていると、千枝がわずかに膨らんだ腹部を突き出し、診察室へ押しかけてきた。

彼女はエコー写真と婚姻届受理証明書を、私の顔に叩きつけた。

「中村美穂、図々しいにも程があるわよ!私の夫を誘惑するなんて、いったい何様のつもり!?」

私は呆れ果て、思わず失笑した。スマホを掲げ、私と真言の婚姻届受理証明書の写真を突きつけた。

「よく見て。どちらが不倫相手なのよ!」

千枝はそれにちらりと目をやり、唇に浮かべた嘲笑をさらに濃くした。

「ええ、よく見たわ。こっちの方が本物よ。

あら、ごめんなさい。真言、あなたに言うのを忘れてたみたいね。

あなたのそれ、偽物なのよ」

その証明書をよく見ると、印鑑、日付、番号――くっきりと写るそれらすべてが、紛れもなく本物だ。

その瞬間、私は誰からも白い目で見られる不倫相手へと堕とされた。

そこで、思い出はぷつりと途切れた。

私は頬がひんやりとしていることに気づく。

雅子がティッシュを差し出し、泣き声混じりに言った。

「先輩、もう泣かないで」

私は頬に触れて、知らぬ間に涙でぐしょぐしょになっている自分に気づいた。

そして、深く息を吸い込み、話を続けようとした。

その時、宿舎の入り口に人影が現れ、外の光をすべて遮った。

真言が、アイリスの花束を抱え、熱を帯びた眼差しで私を見つめている。

「美穂ちゃん、もう一度だけ、チャンスをくれないか?」

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