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第3話

Auteur: キララ
多分愛されてる側はいつもそれだけ好き勝手できるんだろう。きっと翔のなかでも、どんなに私を傷つけても、私が全部受け入れるのが当たり前なんだ。

その直後、キッチンからガシャンと大きな物音がした。

二人がこんなに騒いでるせいで、私はすっかり目が覚めてしまった。

それからリビングでは、しばらく笑い声が混じった声が続いた。やっと静かになったと思ったら、今度はラインにボイスメッセージが届いた。

紬からだった。それは翔が小さな声で子守唄を歌って、彼女を寝かしつけているものだった。

私は鼻で笑ってスマホを放り投げた。そして、何もなかったことにした。

30分後、部屋のドアが開いて、翔がそっと入ってきた。

「紬は寝たよ。

美優、最近ずっと忙しかったからな。結婚式が終わったら、ハネムーンに行ってゆっくりしよう」

それを聞いて私は適当に返事をした。「またその時になったら考えればいいよ」

翔も私のそっけなさに気づいたんだろう。埋め合わせでもするみたいに、彼の手がゆっくりと私の肩に伸びてきた。

そして、翔の顔がだんだん近づいてくるのにつれ、紬がつけていた香水の匂いが、ふわりと香った。

さらに息がかかるほどの距離で、彼の首筋にくっきりと残されたキスマークのような赤い痕が目に入ったのだった。

それに私は吐き気がするほど、気持ち悪かった。

翔が次の行動に出ようとした瞬間、私は思いっきり彼を突き飛ばした。

呆然としている翔を無視して、私は毛布にくるまって部屋を飛び出した。

……

次の日、私が目を覚ましたときには、もう家には誰もいなかった。

今日、ここを出ていこう。でも、その前に、翔とはちゃんと話をつけなきゃいけないと思った。

5年も付き合ったんだから、終わりぐらいはちゃんとしなくちゃ。

それからいつものレストランを予約して、荷物をまとめるためのスーツケースを二つ買ったあと、家に着くと、翔がリビングに立っていた。

彼の目は、氷のように冷たかった。

夕食の話を切り出そうとした瞬間、頬に乾いた音が響いた。翔に平手打ちされたのだ。

「美優、お前はなんて卑劣なんだ!」

突然のことで、私は呆然として何が起きたのか理解できなかった。

すると、寝室から紬が出てきた。彼女の右の頬には、くっきりと平手打ちの跡がついていた。

「安藤さん、私は一晩泊めていただいているだけなのに……どうして、いきなり私を叩いたりするんですか?

私、何か悪いことでもしましたか?

私に翔のそばにいてほしくないなら、もう二度と現れませんから」

その瞬間、私は紬が仕組んだ芝居に気づいた。

一方で翔は、さっと紬の肩を抱き寄せた。そして私に向き直ると、その目には私を焼き尽くさんばかりの怒りの炎が燃え盛っていた。

「お前のことは、ただ嫉妬深くて面倒な女だと思ってた。だが、まさか手をあげるほど陰湿だったとはな」

こんな下手な芝居に、彼はあっさりと騙された。

私は、何の感情もこもっていない、平坦な声で言った。「私はそんなことしてないわ」

すると、「まだ言い訳するつもりか?」

翔の声が一段と大きくなった。「今日この家にいたのは、お前と紬だけだぞ。お前じゃなきゃ、他に誰がいるんだ!」

彼の言葉に、私はその場で固まってしまった。

その瞬間、積み上げてきた愛情も信頼も、一気に崩れ去った。5年もの間、毎日一緒に過ごしてきたのに、それが今、彼は紬の言い分だけを信じて、私を完全に敵扱いしているのだ。

そこで紬は、タイミングを見計らったように苦しそうな声を漏らした。翔の意識は、すぐに彼女へと引き寄せられる。

彼は紬の腕をしっかりと支え、心配そうに覗き込んだ。

「もう腫れてるじゃないか……」

そう言って再び私に視線を戻すと、彼の目にはあからさまな軽蔑が浮かんでいた。

「今すぐ紬に謝れ!さもないと、来週の結婚式は中止にするぞ」

そう言われて私は翔の目をまっすぐ見返した。そして心の中では怒りよりも、ただ深い疲労感だけが溢れかえっていった。

「ええ、中止にしよう」

彼は一瞬言葉を失ったが、すぐに馬鹿にしたような笑みを浮かべた。「美優、俺が冗談を言ってるように見えるのか?

今日お前が謝らないなら、結婚式は本当に中止だ。式場を予約していようと構わない。

招待状を送った後だって関係ないさ。よく見てろ」

翔はスマホを取り出して電話をかけると、わざとスピーカーにした。

すると、電話の向こうから、彼の母親の日和の声が聞こえてきた。どこか不思議そうな声だった。

「翔、どうしたの?」

「お母さん、俺は美優との結婚式を取り消すことにした」

そう言った翔の声は決然としていたが、その目は私をじっと見つめていた。まるで、私が降参するのを待っているかのようだった。

しかし、電話の向こうは数秒間黙っていたが、やがて戸惑ったような声が返ってきた。

「翔、結婚式はとっくにキャンセルになってるじゃない。

美優さんからは、とっくに婚約解消の連絡が来てるのよ。あなたは知らなかったの?」

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