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九十九の願い事①

Penulis: 佐藤紗良
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-29 20:00:12
高校卒業した佐加江は専門学校へ行き、保育士になって二年の月日が過ぎようとしている。

が、二十二歳になった今でも発情の気配はない。

外国から個人輸入で取り寄せている発情抑制薬はお守り代わりに、いつも首から下げているニトロケースに一回分だけ入っている。

「おじさん、仕事行ってくる」

「行ってらっしゃい。無理しないようにな」

「おじさんも、頑張りすぎないでね」

自転車にまたがり、古民家に診療所の看板を掲げた自宅を出る。今か今かと刈り取りを待ちわびる稲が生える田んぼのあぜみちには、今年も曼珠沙華が綺麗に咲いていた。

オメガには発情期があるから定職に就くのは難しいだろう、と言われていた。就職先を選ぶ際、迷っていた佐加江に越乃が勧めてくれたのが、この鬼治村と隣村にまたがって建つ保育園だった。鬼治は越乃の田舎。佐加江も幼い頃から、良く知った場所だった。

「今日も、良い天気だな」

その保育園への就職が決まると、越乃はあっさりと大学病院を辞め、廃墟同然になっていた越乃の実家へ二人で引っ越した。無医村だった鬼治で越乃は、小さな診療所を始めたのだ。ここまでくると越乃の過保護ぶりも溺愛に近いものがあるが、一人暮らしが心配だった佐加江には、心強かった。

最初こそ、山々に囲まれた閉鎖的な村での生活に息苦しさを感じていたが、佐加江は過疎化の進んだ村一番の若手、可愛がられないはずがなかった。

「ひろジイ、おはよう!」

保育園に向かっていると、畑仕事をする老人がいた。

「おはよう、佐加江」

このひろジイ、大学病院で佐加江を診察した藤堂の兄だ。カンファレンスルームでの例の一件もあり、最初は緊張していたが村長である浩志は親切で、何かと佐加江を気にかけてくれていた。今朝も畑仕事をしていた手を休め、日に焼けた顔を皺くちゃにして笑っている。

「今年は、かぼちゃがたくさん採れたんだ。例のあれ、作ってくれないか。あの甘くてとろっとした……」

「かぼちゃプリン?」

「そうそう。あとで診療所に届けておくよ」

「なにそれ、作るの強制じゃん」

「ははは。かぼちゃがあんなに美味いとは知らなかったんだ」

「時間ができたら作るね。診療所に行ったら台所に、このあいだ作った無花果のジャムが瓶詰めしてあるから持って行って。おじさんに聞けばわかるから」

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  • あやかし百鬼夜行   百鬼夜行⑪

    「見栄えが悪いから、毛を剃ろうか」 そのためのカミソリだった。浩太はスマホを構え、笑っている。「動画撮るから、いやらしく塗り広げて」 佐加江は首を横へ振るが、彼は全て無視を決め込んでいる。「佐加江さん、約束するよ。フォロワーが今日中に百人超えたら、このアカウント消してあげる。だから、頑張って」 一度、ネット上に出回ってしまった物は簡単に消す事が出来ないことくらい、佐加江だって分かっている。コピーされてしまえば、元を消したって意味がない。 前屈みになってうずくまり、額を畳に擦り付けて嫌だと無言の抵抗をする。 浩太は聞き分けのない子供に呆れる親のような溜め息を吐き、佐加江の机の中を漁り始めた。「やっぱり保育園の先生って、持ってるものが子供っぽいんだ」 園児からもらった手紙や折り紙などが入った引き出し。その中から浩太が手にしたのは、仕事用に買ってあった薄桃色のマスクだった。 それをつけた浩太に佐加江は目を疑った。 マスクをつけ、目を細めて笑った浩太が自分を鏡に写した顔とよく似ているのだ。 浩太は二人が映るようスマホを置き、背中を抱くようにして佐加江を羽交い締めにした。そして、企みとは裏腹に、優しく手をとってクリームを塗り広げ、カミソリをそっと握らせる。「動いたら、危ないからね」 耳元で囁く浩太は、マスク越しの唇で佐加江の耳たぶを噛む。不織布がカサっと鳴り、ゾクッとして身体が跳ねると同時に当てられた刃先に、佐加江は涙を流しながら猿轡を噛んだ。 サリ、サリ……。 薄い毛が刈られる。 カミソリがクリームをこそぐ感触が手元から伝わってくる。小さな、それこそ子供のような陰茎を握られる。逃げようとすれば、膝を長い脚に絡め取られ、佐加江は大股を開き陰部をレンズの前に晒した。「うぅぅ」 抵抗して足をバタつかせる。すると、剃刀を持つ佐加江の手に添えていた手を浩太は横へと滑らせた。 指先を紙で切った時のような、ツッとした痛みと共に恥丘が薄く裂け、血が滲む。 それに構わず、彼は三本の指先で汚物でも扱うように、使い込まれていない小さな性器を上下に扱いた。クリームのせいでクチクチと水音がし、浩太は強引に射精に導こうとしている。意思と反して芯を持ち始め、浩太の手に爪を立てた佐加江の手は背後に持っていかれてしまった。「気持ちいいだろう?」 肌に残るハンド

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    「佐加江さん、鬼に喰われるんだ」「別に構わない」「純潔を奪われたのに、まだそんな口利けるんだ。強気だねぇ」「浩太さんが、初めてだったわけじゃないもの。僕が純潔を捧げたのは、浩太さんなんかじゃない。あんなんで奪ったとか言われちゃ、堪んない。子供のくせに」 部屋まで付いてきた浩太に背後から腰のあたりを蹴られ、敷きっぱなしだった布団の上へ転んだ。「俺が初めてじゃないって、どういう事だ。せっかく優しくしてやったのに、使い古しかよ」 「あれで優しく?!笑わせないで。僕は、本当に心の優しい人を知ってる」「オメガの分際で」「浩太さんを産んだのは、オメガよ。自分の親にそんな事、言えるの!?」 「黙れ。お前は、鬼に喰われるんだ」 浩太の瞳には佐加江に対する、いや、オメガに対する深い憎しみがあるように見える。何か触れてはいけない部分に触れてしまったような気がしたが、浩太が表情を崩したのは一瞬で、また笑っていた。「そういえば……。さっきの顔射写真、評判いいよ」 浩太に見せられたスマホの画面には、『越乃 佐加江』と実名アカウントのSNSがあった。 そういうものがある事はもちろん知っているが、特に興味も関心もなかった。「なにそれ……」 浩太が指先でスワイプした先には、画像が投稿されていた。浩太が見下ろしたアングルから撮った写真だ。精液に溺れそうになっている顔だけでなく、申し訳程度に生えた陰毛と性器まで写り込んでいる。そんな卑猥な画像が、加工されることなく公開されていたのだ。 刻々とリプライが表示される。 この一時間足らずで、多くの人が目にしているようだった。「ちょっと、そんなおかしな事やめてよ!」「珍しい名前だし、知ってる人が見たらすぐわかりそうだよね。なんなら、住所も公開してみる?」「やめて」 スマホを取り上

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    「青藍……」 ーー鬼治稲荷へ行こう。 佐加江は唇を噛む。服を着て部屋へ行き、昨日、帰ってきて押し入れに隠した白いスニーカーを持って窓を開けた。 と、煙草の匂いがする。 「そうそう。え? あれ、男だよ。ヤバいだろ」 スマホで話しながら、くわえ煙草をふかす浩太は乾いた笑みを浮かべ、佐加江の手からスニーカーを奪った。 「ネット配信とか出来るかな。ここ田舎だから、めちゃくちゃ電波悪いんだよね。またあとで連絡するわ」 火を靴裏で消した浩太は、吸い殻を指先で庭へ弾き飛ばし、佐加江を押し戻して部屋へと上がって来る。 「佐加江さん、 髪が濡れたままどこへ行くつもりなの」 ならば、と佐加江は土間へ向かった。その気などさらさらない癖に、気遣う言葉を浩太は羅列する。わざとらしい大きな声に気づいたのか、診療所から顔を出した越乃に見つかってしまった。 「佐加江、ちょっとおいで。髪を乾かしてからでいいから」 まるで軟禁だった。あっけなく逃亡は阻止され、佐加江は振り返らずに越乃の元へと逃げ込んだ。 たまにカルテの片付けを手伝う診療所の壁紙は、柔らかい雰囲気になるよう越乃と選んだものだ。パステルクリームを基調にした小花模様で、通り抜けた待合室は穏やかな陽射しが差し込んでいた。が、ここが診療所であることを主張するようにクレゾールの独特な匂いが漂っている。 診察室のカーテンを覗くと、普段着の越乃がデスクで書き物をしていた。 「髪はいいのか? いつも気にしてるオシャレさんが」 いつ青藍に逢うことになるか分からなかったから、佐加江はいつも身だしなみだけは気を配っていた。 「うん……」 書いていた紙を足元の金庫へしまった越乃が、診察室にあるタオルを取って髪を拭いてくれる。 「風邪をひいたら、大変だ」 「そうだね」 「少し身体を見ておこうな。調子はどうだ」 「あまり……」 ついさっき浩太に弄ばれた身体。佐加江はシャツの裾を躊躇しながらたくし上げ、越乃に胸を晒した。聴診器を手のひらで温めてから、真剣な顔で診察する越乃は、浩太につねりあげられた跡が残る腫れた乳首を見て、ふっと笑った。 「発情あとだし、ほどほどにな。DVDがそのままになってたぞ」 「あ……」 「脈が早くなってる」 聴診器を外した越乃が、笑いながら何も書かれていない

  • あやかし百鬼夜行   百鬼夜行⑧

    佐加江を風呂へ放置し、診療所内を物色していた浩太は越乃が診察の際に使っている椅子に腰かけ、考え事をしていた。 初等部の頃、浩太は友達と運動会のスターターピストルの火薬を盗んだ。ただ派手な音を鳴らすだけではつまらない。浩太は庭の排水溝を開け、そこを住処とする可愛がっているガマガエルを手に乗せた。 いつもそこに隠れている事を、もう何年も前から知っている。 冬眠のたびに大きくなるガマガエルは見た目よりもズッシリと重く、太陽の下で目玉がシュッと横に細くなった。 (かわいい……) 尻に火薬をめいっぱい詰めるが案外、抵抗しない。急につまらなくなった浩太は何を思ったのか、真っ白な家の外壁に向かってガマガエルを投げつけた。 パーン、と閑静な住宅街に鳴り響いた火薬の破裂音。 運動会の時よりも湿り気を帯び、くぐもった音に聞こえた。母親が驚いた顔でカーテンを開け、浩太の事を嫌悪した目で見ていた。思えば、物心ついてから母親と目が合ったのは、それが初めてだったかもしれない。 それに満足したかのように、浩太は笑みを漏らす。 対象は少しづつ大きな物に変わって行き、中等部になると、最後まで親友と信じてくれていた同級生のKをカイボウして遊んだ。 その頃は、彼が浩太にとってのガマガエルーー。 どんなに頭の良い学校でもガラの悪い連中はいる。そんな高等部の奴らとつるみ、浩太はKと一緒にいるところで絡まれるふりをした。どんな因縁をつけられたかは忘れたが、Kが制服を脱がされるのを腹のなかで笑いながら、浩太は「やめろ!」と涙ながらに訴えていた。 それは、どれくらい続いただろうか。 金銭も身体も搾取され、ボロボロになったKがやっと浩太の望む事をしてくれた。 『浩太君、もうやめよう……』 Kは最期まで浩太を親友だと信じていた、と思う。 もうあれから一年以上経った今年の夏休み、卒業した中等部から呼び出しを食らった。 外部高校の受験を苦にした同級生の自殺が蒸し返され、遺書もそれっぽいものを一緒に書いてやったと言うのに、どこからかカイボウの件がバレた。 浩太は反論するどころか、自分がした事を知らしめたかったのかあっさりと認め、親が金銭で解決したものの表向きは留学準備のための退学として、学校は辞めさせられた。 小さい頃から、なかなか治らない素行。父

  • あやかし百鬼夜行   百鬼夜行⑦

    翌日、佐加江が目を覚ますと昼過ぎだった。 家の中は、物音ひとつしない。 気を遣った越乃が、起こさなかったのだろう。休診日ということもあり、いつもだったら隣り村まで買い物へ出かけている時間だった。 佐加江は着替えを持って、風呂へ向かった。 昨夜、点滴をしている間、越乃が蒸しタオルで拭いてくれた髪を丹念に洗い、泡を流していると急に給湯が止まり水になった。リモコンを操作しても給湯器の電源は入らず、佐加江は頭に泡を残したまま腰にタオルを巻いて台所にあるブレーカーを見に行った。すると、居間で寝っ転がりながらスマホをいじっていた浩太が肩を揺らして笑っている。「佐加江さん、おはよう」 ブレーカーを上げ、浩太を無視して風呂へ戻るとまた、ブレーカーが落ちる。それを何度か繰り返すうち寒気がしてきた佐加江は、苛立ちを隠せなくなった。「浩太さん、もういい加減にして!」 そう言い放った佐加江を追いかけてきた浩太がドアを蹴り、靴下のまま浴室へ入って来る。 「な、なに!?」「今、誰に口利いた」 「ちょ……っと」「一発、ヌかせろよ」「え?」「いいよね、佐加江さん。女みたいな体した男がウロウロしてたから、勃っちゃったよ。ちんぽが好きなんだろ、佐加江さんは」 「何言ってるの!?」 風呂から出て行こうとした佐加江は、引き戻された。「越乃さん。神事の会合だって出かけたから、時間はたっぷりあるよ」 両手を背中で合わせ持たれ、タイルの壁に押し付けられた。浩太はボディソープを手に取り、楽しそうに佐加江の尻で泡立てている。「不浄の穴だから綺麗にしないと」 「や、やめて」「さっきまでの威勢はどうした」 双丘の狭間を何度か行き来した指がヌプッと後孔へ入り込む。「浩太さん、なんでこんなことをするの……、やぁぁッ!!」

  • あやかし百鬼夜行   百鬼夜行⑥

    「佐加江、今日はどうしたのですか」 社の裏でギュウッと抱きしめられた。溺れてしまいそうなほど青藍の胸は広く、小さな佐加江は必死にしがみついている。「……あのね。僕、子供が大好きなの」「保育園の先生ですものね。好きでなければ、できぬ仕事でしょう」「このあいだ、天狐様の仔狐ちゃんたちが青藍のこと、父様って呼んでるのが可愛くて」 「あやつらはうちの庭を遊び場にしていますから、いつでも会えますよ」「違う」「違うのですか」「……青藍も子供が好きなら、いつか僕が」 青藍の胸に顔を埋めた佐加江の声は、夜の闇に溶けてしまいそうなほど小さかった。「僕、本当の家族が欲しいんだ」「佐加江」「僕にできる紋は幸せがいっぱい詰まってる。僕ね、青藍と番になりたい。青藍しか考えられない」 互いに頬を染め、黙り込んでしまった。頬を寄せる青藍の胸からは、やけに騒がしい鼓動が聞こえる。「初めての事で、私もうろたえていて……。その、あちらの方の相性は良さそうですか」「あちらって、どちら?」「身体の相性は大事だと。つい先日、桐生に教わりました」 青藍を見上げると、視線をよそへ向けている。「ちょっと待って」 「はい」 「初めてって、何が?」 佐加江を抱きしめる腕に力がこもる。「……子作り、です」 「こ、子作りか」「いかかがでしたか」 真剣な眼差しで聞いてくる青藍に、佐加江は顔を真っ赤にして小さな声で「良かった」としか答えられなかった。「佐加江は、あのような感じが良いのですね。わかりました、精進します」 「いや、普通で。もっと普通で良いと、思います」 「佐加江が不安に思っておらぬなら、良いのです」 青藍は目尻を下げ

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