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蓮華草の花言葉⑦

Auteur: 佐藤紗良
last update Date de publication: 2025-06-10 21:26:42

青藍と蘇芳の夕飯の支度をした佐加江は、寝巻き代わりの浴衣へ着替え、早めにベッドへ入った。

あの後、青藍の書斎を出た佐加江は真っすぐに隣の桐生の元へ向かった。

『桐生さん』

『どうした?』

『あの、……発情抑制薬、持ってますか?』

『持ってないよ。使った事ないし、佐加江君だってもう必要ないでしょ? 鬼君と番になったんだから』

窓の外で、ヌエがヒョーヒョーと鳴いている。この声を聞くと、あやかしは夜が来たと眠るのだが、その勇ましい遠吠えが佐加江には人の声のように聞こえる。「怖いよ」「寂しいよ」と物悲しくて寝つけなくなってしまうのだ。鬼治で聞いたフクロウの鳴き声に、そんな哀愁を感じたことはないのに。

佐加江は、布団をかぶり目をつむって爪を噛んだ。いつから、そんな癖があったのか覚えがないのだが、気がつくとそうしていることが多い。

(姿を見られず鬼治へ行く方法がないか、青藍に聞いてみよう……。
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    「お早い出発ですね」 「……」 駅へ向かうオースチンの中で、佐加江はうつむいて爪をいじっていた。どことなく、しらけた雰囲気に蟇田は黙り込む。 「佐加江。実はですね、私もーー」 青藍は佐加江に耳打ちする。 「え?」 「あまりにも可愛らしくて、やっちまったです」 「……いくつの僕と?」 「出会った頃の佐加江です」 佐加江がシートからズルッと滑った。 「痛い、痛いという割に、尻は普段通り良い具合でしてね」 「ダメダメ、言っちゃダメ!」 青藍の口を両手でふさいだ佐加江は、また赤い顔をしていた。赤くなったり、青くなったりクルクルと佐加江は表情を変える。 「もう、どこまでが現実だったのかわからないよ。夕べはご飯を食べた辺りから記憶がないし」 「本当ですか」 そういえば食事のあと、やけに「コミコミプラン」と言っていたような気がする。鞄の中へしまった通知表のような大国主命の評価表を改めて見た。 「佐加江、そういえば」 佐加江の耳元へ唇を寄せ、「子供は出来る」と大国主命の心強い言葉を伝えた。すると表情がぱあと晴れて、ここへ来た時のような笑顔になった。 「本当に?」 「私の頑張りが少し足りないようです」 そもそも、この評価表にある硬度や濃度をどうやって測ったのか。 「佐加江、身体の不調はありませんか」 「平気だよ」 大国主命が佐加江にとりついて、青藍の性技をチェックしていた可能性はある。 運転席の蟇田を見ると、ルームミラー越しに目が合った。瞳孔がシュッと細くなり、何か言いた

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    「ん……」 振り返ると佐加江がゆっくりと何度か瞬きをして、ぼうっと宙を眺めている。 「ヒィィッ」 「佐加江、どうしました」 「ご、ご、ごめんなさい!!」 目が合った瞬間、佐加江が叫び声をあげて布団にくるまってしまった。 「佐加江、おはようございます」 そばで正座をしていたが、待てど暮らせど返事はない。どうしたというのか。また怖い夢でも見たのかもしれない。 布団越しの佐加江に身を寄せ、背中を摩る。 「寝てしまいましたか」 布団をかき分けると、佐加江が真っ赤な顔をしていた。 「そんな泣きそうな顔をして、どうしたのです」 どうやら、悪夢を見たわけではなさそうだった。 「……やっちゃた」 「何をです」 「青藍。身体、おかしかったりしない?」 「平気ですよ」 「ちっちゃい青藍と、えっちな事たくさんしちゃったよぉ……」 佐加江が両手で顔を隠している。おそらく、さきほど大国主命が言っていたことだろう。 「子供の私はどうでしたか」 「皮を剥いてあげてね、初めてだって言うからあまりにも可愛くて、小さな角をしゃぶったりねーー。そんな願望、僕にはない!保育士として失格だ」 「どのみち、私は佐加江が初めてでしたよ」 ジタバタと暴れる佐加江の動きがピタッと止まった。 「子作りが初めて……って」 「まぐわいは、すべて子作りの為ですからね。子供の私と他には、どのようなことをしたのですか」 「言えない!」 先ほどの紙に、佐加江のことも書

  • あやかし百鬼夜行   番外編「十六夜楼♡コミコミプランでご宿泊」⑧

    「ククク。お前も一人前にあんなことが、できるようになったのだな」 「何をおっしゃっていますのやら」 「その点、佐加江は嫁として申し分ない。問題はお前だ」 煙管を咥えた閻魔が立ち上がり、窓を開けて煙を細くくゆらせる。 冷たい空気が部屋に流れ込み、佐加江を見た青藍は笑みを漏らす。布団にくるまって穏やかな寝息をたてていたからだ。 空が白み始めている。 とこかで烏がカーと一息だけ鳴いて、また静寂に包まれる。 「精進します」 「みことちゃんに怒られたわ。庄をかけ過ぎだって。そんな事をしたら、出来るものも出来ないってな」 「それは」 「まあ、楽しみにしておる。お子ができ、お前があの世へ戻らねば、わしも隠居できないからの」 「佐加江が閻魔様に饅頭を買っていましたよ。土産です」 話を逸らすように、青藍は土産の饅頭を渡した。 閻魔の隠居――。 佐加江にまだ言っていない。閻魔の後継が自分であることを。世襲ではなく、何年にもわたる科挙を経て、決まったことだった。それはつまり、佐加江も立后する日が来ると言うことになる。 「ほうほう。こんなものを貰い受けるのは初めてだ」 閻魔は目尻を下げて喜んでいた。 「閻魔様。かねてよりひとつ、お聞きしたいことがありました」 「なんじゃ」 「私の父は、どのような方だったのでしょう」 閻魔が青藍を見つめ、煙管を咥えた。 「お前の父も母もわしだ。生まれたころより、そうであったではないか、何を今さら」 「誤魔化すのはおやめください。佐加江が、あのような酷いことをされても父親代わりの男を許す意味が分からず、その存在はそん

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  • あやかし百鬼夜行   番外編「十六夜楼♡コミコミプランでご宿泊」⑤

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  • あやかし百鬼夜行   百鬼夜行⑱

    「……出るな」 「でも」 「ごめんください」 キャッキャッとはしゃぐ子供の声が聞こえた。「早く片づけて」と浩太に言い残し、佐加江は土間へ急ぐ。 「さかえしぇんしぇー!!」 傘を放り投げ、佐加江に勢いよく駆け寄ってきたのは黄色い雨がっぱと同じ色の小さな長靴を履いた太郎だった。インディゴブルーのステンカラーコートを着た父親も雨だと言うのにサングラスをかけ、胸のところでハットを持って土間に立っている。 「太郎君パパ?!」 驚きつつも微笑んで太郎を抱き上げようとした。が、佐加江は膝からガクっと崩れ落ちてしまった。 「……すみません。こんな情けないところ、お見せして

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    「さんざん探したけど、残るのはこの金庫だけだ。佐加江さん、誕生日いつ?」 越乃がいない時に、浩太がふっといなくなる事は良くあった。「……三月二十三日」 「西暦は」 浩太は素早くデスクにあったメモ用紙に佐加江の生年月日を書き取っていた。そこには既に試したであろう幾通りかの数字が書かれていて、線で消されている。 越乃が診察時に使うライトを手に、ダイヤルを回し始めた浩太の額には脂汗が滲んでいた。「こ、浩太さん。何をしているの?」 内部でカチッと、かんぬきが座にはまる音がした。「やっと開いた。越乃さんも人の親なんだな」 浩太がライトを置き、金庫の把手をさげた。 中には平積みされた

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    あれから数週間ーー。 田んぼの稲が刈り取られても、浩太が東京へ帰る気配はなかった。 今日は神事前に村人総出で鬼治稲荷の掃除をすると言っていた。が、今にも雨が降り出しそうな空模様。どんよりと黒い雲が立ち込めていて時折、ヒュルッとつめたい北風が吹く。「佐加江、行ってくるよ」 「僕は行かなくていいの?」「最近、疲れてるだろ。休んでいなさい」「ありがとう」「仏壇の前に届いた着物が置いてあるから、袖を通しておきなさい。佐加江の好きな曼珠沙華の刺繍が入った反物で作ってもらったんだ。とても気にいるはずだよ」 掃除に参加する浩太は先に外へ出て、こちらをジッと見ている。視線を逸らした佐加江

  • あやかし百鬼夜行   百鬼夜行⑭

    「佐加江。カルテの整理はそれくらいでいいから、夕飯の支度を頼んでもいいか。 往診へ行ってくるから」 「あの、おじさん」 青藍の元へ逃げ出す機会は、全くなかった。 診療所を手伝っていた佐加江は、着ていたカーディガンの前を合わせる。浩太が面白がって、佐加江の裁縫道具の中にあったミシン糸で両の乳首を縛りあげているからだ。シャツに擦れるだけで、身体がビクッと打ち震える程に佐加江の身体は作り変えられていた。「あの、お塩がなくて、買ってこないといけないから出かけてもいい?」 「往診に行きながら買ってくるよ。太田さんのところだから、すぐ帰れば夕飯の支度には間に合うだろ」「あ、うん。あの……」

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