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急発進

Auteur: みゃー
last update Dernière mise à jour: 2025-11-14 20:25:35

公園を出るとすぐ目の前に2列の広い車道があり、信号を渡ると緑地に囲まれた翼のマンションに向かう一本道がある。

その直線の一本道への入り口のある横筋には、コンビニや喫茶店などの店々が立ち並び、理久はそれを見て自分の世界に帰った実感がした。

理久、クロ、翼は、並んで青信号を渡った。

理久は、翼のカバンの中を気にしながら、翼の前で平静を取り繕うに必死だ。

しかし、理久同様カバンの事を知ってるクロは、至って平然としていた。

(やっぱ……ここがクロが王様な所だよな……態度に全く出ない)

理久は、横断歩道を歩きながらそう思うと、理久とクロが友達と言ってる手前、少しだけなら大丈夫かと横目でクロをチラリと見た。

すると、クロも理久を見ていた。

外灯の明かりだけでクロを見てもクロはやはり怖い位美形で、理久は、翼に理久の気持ちを悟られまいと慌ててクロから目を逸らす。

理久は、獣人のクロと再会したばかりの時より今の方が、クロに視線を向けられると気恥ずかしい感じがして戸惑う。

そして同時に……

(クロ……まだ俺の事、本当に好きでいてくれてるのかな?本当に翼より、俺の事好きかな?)

理久はそ
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    気を失っている翼は、クロにおんぶされ、王城内の客人用にしつらえられた絢爛豪華な部屋に運ばれ、シルクのように軽く白く輝くカーテンのある天蓋付きの大きなベッドに寝かされた。真夜中で、灯はベッドサイドのランプの仄かな光だけ、獣人と人間の体の作りが近い事から、熊獣人の医師が眠ったままの翼を診察した。アビから、理久はメイド、クロは城の衛兵の扮装から魔法が解かれいつもの姿に戻り、ベッドサイドからその様子を見守った。幸い、翼は、胸の傷以外はどこも治療は必要なかった。医師が退出して、ならと、意識の戻らない翼をクロが再びおぶって、理久と共に理久の世界に戻る案もレメロンから出た。しかし、翼の意識がないままの異世界転移は人体にどんな影響があるかわからないとアビが反対して、やはり、今は理久もクロも翼も動けなくなった。理久の世界では、理久の両親、翼の両親が、息子達が夜中になっても帰らないのを心配してるだろう。でも、翼がいつ目覚めるかわからないので今すぐは帰れない。そして、もう夜明けも近い。アドオン国王がこのクロの城に入り、クロと調印式を行う時間も迫っている。これからどうするのか?クロと話しあう必要があり、アビもレメロンも退出し、部屋には理久とクロと翼だけになる。どうしようか理久は頭を悩ますが、穏やかな息をして心臓の動く翼の寝顔を見るとほっとした。「翼は、代わりの者に看護させる。理久、これからどうするか話し合おう。今から俺の部屋へ行こう。それからお前も少し休め」クロが、理久の背後から理久の肩に手を置き、やさしく囁く。「でも……翼が……」「ここではお前と話し合えない。大丈夫。この部屋にはアビが魔物が入らないよう特別結界を張っているし、外の廊下や部屋にも衛兵を入れる」確かに、こんな状態の翼の横で話し合えない。それに、クロにも休息が必要で、理久は頷いた。クロに強く肩を抱かれながら、昨日の夜も一緒に過ごしたクロの寝室に入った。やはりここは流石にこの王城の主の部屋で、更に広く、カーテンから家具に至るまで極めて華美で品質が良いのが誰にでもわかるのに、気品と威厳に満ちている。翼も大変な時で、調印式まで時間も無いのに、理久は、すでにクロに肩を抱かれ二人きりになる事に心臓の鼓動がうるさいくらいに高鳴っている。途端に、クロは理久をお姫様抱きし、天蓋付きの大きなベッドに

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    クロは、すぐに理久とアビを、広い北棟側の一番端に連れて行った。 そこは丸々2階階まで吹き抜けになった外国の要人をもてなすための巨大な宴会用のホールになっていた。 広い南棟と北棟全てにアビが結界を張り、魔物がこのホール以外の部屋に入ったり、窓から逃げる事も出来ないようにした。 結果、魔物が取り憑いている翼も、廊下や階段を逃げながらホールに行くしかない。 そしてクロは、魔導通信機器で連絡を取り合い、密かに獣人騎士達に翼をこのホールに向い追い込ませ始めた。 しかし、アドオン人の使者達に気づかれないよう静かに翼を追い立てるのは、やはり獣人騎士達の知力、体力が高い必要があった。 メイド姿の理久は、学校の体育館ほどあろうかという広さのホールの真ん中に立ち、一人囮になり翼を待つ事にして、クロとアビは柱の陰に潜む事にした。 天井には沢山のシャンデリアがあった。だが、クロとアビを隠すためにも、その幾つかにしか魔法由来の明かりは無く、ホール内は仄かに明るいくらいでしかない。 アビはすぐに隠れた。 しかし、クロはそうする前に再び理久を抱き締めた。 「必ず、必ず、お前を守って、翼を捕獲する」 クロが、再び理久に約束してくれた。 そしてクロは、理久にそっと口付けした。 一瞬、理久の心臓が止まるかと思うくらいに大きく爆ぜた。 そして、アビが遠くから見ているかも知れなかったが、もう女装の自分に嫉妬の無かった理久は、キスを従順に受け入れた。 クロは、いつも理久への愛情が直情で昂ぶると、いつもの国王としてのクロの冷静さが嘘のように、本当の犬のように誰が側にいようとどこだろうと理久にそれを表してくる。 恥ずかしがりの日本男児の理久は、未だにそれに戸惑う時はあるし、クロにちょっとは人前での愛情表現の待てを教えないとと思うが、出来るだけクロの想いは受け入れたかった。 そして、二人きりなら、いくらでもクロの愛情表現は受けたいし、理久とクロには体格差がかなりあるが、クロのあの大きな体全ても理久の体全てで受け止めたい。 そして今はこんな時なのに、クロの唇が離れると寂しくて心がギュっとなった。 すると、クロの頭の獣耳がピクピクした。 「どうしたの?」 理久が聞いた。 「翼がこっちに来てる、微かな音がする」 流石に五感の能力

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    クロが先頭になり、理久、アビと続き、翼を助けに城の赤絨毯の廊下を早足で向かう。アビがついさっき魔法をかけたので、今、クロとアビは城の警備兵の格好をしていて、アビは、魔法の杖も消して隠し持っている。そして、一階に下りる為に大階段の前に来て、みな一旦立ち止まる。理久の着るメイドドレスは、スカートはいかなる作業もしやすいよう、長さは足首より少し上で歩きやすい。しかし、理久がいつもの男子の理久でズボンを履いていようが、クロはどんな時も階段や歩き辛い所では理久を気遣い手を差し出してくれる。そう、大切な姫君にするかのように。そして今回も、クロは立ち止まり横にいる理久に手を黙って差し出した。さっきまでの、女装している理久に妬いていた理久なら、このクロの手を拒んだかも知れない。しかし、今は、理久は笑顔で素直に頷きクロの手を握りクロと並んで階段を下り始め、アビがそれに続いた。もう、理久にこだわりは無かった。クロが女装した理久をキレイだと言ってくれたのは、女装した理久ではなく、理久本人に言ってくれたとわかったから。クロは、階段で何度も理久に視線をやり、ギュっと理久の手を強く握ってくれた。一階のエントランスに着くと、そこにいたのはレメロンだけて、集まっていたはずの獣人騎士20人と上級魔法師長がいない。「陛下。先程また理久様の従兄弟殿の目撃情報があり、このままではアドオンの使者達に従兄弟殿が勘付かれるのも時間の問題ですので、騎士達を数グループに分けて先にアドオンの使者達のいる棟に捜索に行かせました。上級魔法師長は、念には念を入れ他の魔法使い達と城内の結界の確認に向かわせてございます。騎士達全員を捜索に向かわせましたので、私はここで何かあった時の為に待機いたします」レメロンが、クロに頭を下げながら冷静な声で報告した。クロが頷いた。「うむ。流石レメロンだな。それで良い。我々も後を追う」こう言う時のクロは、獣人王の威厳に満ちた声を出す。レメロンがよく出来た臣下であるのは、理久もなんとなくわかっていたが、それを新ためて今感じ取る。そこに、レメロンが、クロに何か差し出した。「では、これを……騎士達にはすでに渡しておりますので」それは、まるで理久の世界のイヤホンのような物一つと、何か小型の長方形の機械だった。「これは?」思わず理久がクロに尋ねた。「ああ

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    だが、理久が変わったのは、そこだけじゃ無かった。 「理久……頭に、耳が……」 クロが、抱いている理久を見詰めながら唖然としたような声を発した。 「えっ?何?!」 理久の右手が、自分の頭にいく。 触ると、明らかに理久の頭にも、毛のある獣耳が生えていた。 そして、声も、女性のものになっていた。 「見てみろ……理久……」 クロは、目を細めた優しい視線を理久に向け呟くと、理久を抱いたままくるりと反転した。 すると、少し離れた壁に、縁の部分の美しい花の紋様に色とりどりの宝石を散りばめた大きな丸い鏡が飾ってあり、そこに、城の黒のメイドドレス姿の理久と、その彼女?を抱くクロが映る。 「えっ?!」 理久の頭にはやはり、ほわほわの白毛の獣耳が生えていて、黒のメイドドレスのスカートの部分の細工から、もふもふの白い尻尾も上手く出ていた。 しかも、何も練習しなくても、自然とその獣耳も尻尾もピクピクと動かせる。 「う……そ……」 理久自身が目を見開き驚く程違和感無く、理久は女性になっていたし、獣人になっていた。 だが、よくよく鏡の中の女装した理久とクロを見ると、次に理久の胸に去来したのは―― やはりクロの横には人間の男子の理久ではなく、獣人の女性の姿が本当にピッタリでよく似合ってるという事だった。 特に、堂々とした獣人王のクロの横には、華やかなドレスに身を包んだ美しい獣人女性のお妃様がよく似合っている。 そして、今さらながら新ためて思い知るのは、男の理久では、クロとどんなに深く身体も心も交わり合い愛し合っても、クロの赤ちゃんを産めないという現実。 すぐに理久の胸に、翼が理久に言い放った「違う世界の者同士は一緒に生きていけないし、幸せにはなれない!」と言った言葉が蘇り突き刺さり、掻き乱される。 途端に、鏡に映る理久は下を向き表情が曇った。 だが、それを見たクロもアビも、理久が女装姿にただ戸惑っているだけだと思った。 だから―― クロは、理久を抱く腕に更に力を入れて、理久の耳元で甘く囁いた。 「理久……凄くキレイだ……」 すると、理久の心に、雷に打たれたような衝撃が走った。 (信じてたのに……クロって……本当は、獣人の女の人好きなんじゃ?……) 思わず理久は、クロの腕の中でクロに顔を向けて

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    アビは、すぐに異世界同士を繋ぐ魔法陣の近くに行き、呪文を唱えた。 すると、すぐに魔法陣の赤い文字や図形が黒く変色した。 理久は、これが魔法陣の力が停止したという事だと―― 理久の世界とこちらの世界が、完全に行き来不可能となったと悟った。 わかっていて魔法陣を止めたが、理久自身が元の世界に帰れ無い事より、今一時期にしても翼を帰してやれなくなった事に新ためて背筋が凍り、目眩がしそうだった。 「理久……理久……大丈夫か?」 クロが、クロの胸の中の表情の固まる理久を強く抱き締めた。 クロがいれば、理久は強くなれる気がして、出来るだけ気丈な声を出した。 「大丈夫……」 理久も、クロを抱き締締めた。 そこに、部屋に戻ったレメロンの冷静な報告が部屋に響いた。 「陛下。間もなく上級魔法師長と腕に信用のおける騎士20人が参りますが、理久様の従兄弟殿らしき姿が、アドオン国の使者達が宿泊している棟の方に消えたと言う情報がありました」 理久がクロに抱かれたままクロの表情を見上げると、沈着な中にも状況の厳しさが伺えた。 「やはり……あの魔物か何かはアドオン国の仕業かも知れないな。だが、まだアドオンの仕業と決まった訳でないし、間違い無く怪しまれるから、こんな深夜に無闇に王としての俺と騎士の大人数でアドオン国の者達がいる棟に踏み込めない。明日条約を締結すると言っても、アドオンと我が国はそれ程友好関係は無い。一旦ここでアドオン国と何かあれば、すぐに大きなモメ事にもなる。俺と騎士達は城の警備兵に化けて、少人数に分かれて慎重に潜入する。レメロンは連絡対応でこの部屋に残れ」 クロは、動揺一つ見せずレメロンに指示しすると、レメロンは「御意」と一言の後頭を下げた。 理久は、今もクロに抱かれながら、クロのこういう所が、獣人王だと実感する。 「どうした?」 クロが、クロを見詰める理久に視線を向けた。 「クロって、本当強い王様だと思って」 素直な理久の言葉。 それがクロの頭の犬耳に入った途端、又クロは、褒められて反応した本当の犬の時のクロのように体をビクってさせて、犬耳と尻尾がピンと立った。 そして、クロは理久を抱いたまま体を屈め、クロの唇を理久の耳元に寄せ問う。 「強い、王なだけか?」 「えっ?……」 理久が戸惑う。

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