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Novels by みゃー

私を裏切った億万社長、今はもう一度愛して欲しいと求めてくる

私を裏切った億万社長、今はもう一度愛して欲しいと求めてくる

「もう一度、あなたを愛していいですか?」 ズタズタにされた初恋からの再会愛… 子供の頃から不遇に耐えてきた鈴木智也は、就職してからやっと空間デザイナーとしての道を歩き始め、今はやっとの事、順調な生活を手に入れ安定した生活を送っていた。 しかし―― 過去、最も智也を苦しめ深い地獄に落とした男が、今になって再び智也の前に現れた。
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Chapter: 救急車
智也は、本当にそんな予感がした。でも、多分大成の知り合いなので立ち止まらざるを得なかった。だが、すぐには振り返らなかった。そうしたら、本当に嫌な事が起こる予感しかしなかった。「鈴木だろ?」仕方なく智也は、わからないように小さな溜め息をついてから振り返った。するとやはり、智也の予想通りそこにいたのは、あの佐久だった。今日は子分のように後に誰も連れてなくて一人。佐久も下校途中のようで、智也とは違う学校のブレザーの制服だった。「遠くからでもすぐにわかった。鈴木、スゲー目立つから」ヘラヘラ笑う佐久のその言葉に、内心智也はギクっとした。智也は、日頃から出来るだけ目立たないよう、道も端っこを歩いていたつもりなのに。正直言って、小さな頃から智也がその美貌で得する事もあったが、目立ったが為に色々巻き込まれ逆に悪い事の方が多かった。智也が大成みたいな性格ならば、もっと智也の顔をフルに使い武器にして上手く世間を渡りのし上がる事も可能だったろうが、智也はそんなタイプでもないし、今、目の前の佐久にすらどう対処したらいいかわからない。しかも、数日前に大成の家であんな事があったから、普通に「どうしてこんな所に?」すら普通に聞きずらいし、尚更智也から佐久にかける言葉が思い浮かばない。「どう?不破と上手くやってんの?」悩む智也とは対照的に、そう聞く佐久はやはり実に金持ちの子息らしくあけすけで奔放だ。「あっ……」智也は、下を向き返事に迷った。無論智也は、智也と大成は付き合ってると思ってるし、大成は毎日凄く優しい。でも、それを言うべき存在に佐久が値するのかは疑問だった。本当ならテキトーに「うん、まぁ……」くらい言っといて、笑顔でその場をやり過ごせばいい話だが。何にもつけて、全て真面目に考えるのが良くも悪くも智也と言う人間だった。すると、その表情を見て佐久は、急に真顔になって言った。「なぁ……鈴木……お前に話しがあるんだ」「話し?」智也は、不思議そうにして顔を上げた。「あっ……ああ。だからちょっとでいいから、そこら辺でお茶でもしないか?勿論、俺が奢るし。鈴木の好きな物、なんでも頼べばいい」やはり佐久は、大成の家で会った時と違い今は真剣な表情をしていた。しかし、佐久は信用できない男だし、大成の家に早く帰らないと、先に車で着いてる大成が待ってるし
Last Updated: 2026-06-09
Chapter: 潮風
ジェットコースター。 観覧車。 お化け屋敷。 相変わらず大成は何に乗っても入ってもクールで表情は変わらないが、隣りにいる智也が喜んだり、笑ったりするのを見た時だけ大成もクスっと微笑んだ。 智也は、今の大成は、智也と出会ったばかりの時の大成よりよく微笑むようになった気がした。 夕刻前まで目一杯遊んだ。 その後大成は、夕食前に海を見に智也を誘った。 その時まだ水面は黄金色に徐々に染まり始めたばかりだった。 真昼は家族連れやグループの海水浴客で賑わっていたが、今は、カップルがちらほら遠くにいるだけ。 車と運転手を駐車場で待たせ、智也と大成が並んで浜辺に出ると、心地良い潮風が二人の全身を吹き抜ける。 自然とはよく出来ていて、人間が教えたでもないのに、夕刻の海風は、そこはかと間もなく来る秋の冴えた冷たさと匂いをすでに纏わせていた。 智也は、地平線に視線を向けた。 そして、今日の朝からの夢のように楽しかった事を思い出した。 風も波も凪。 夢のように美しい。 智也の口角はうれしそうに少し上がったが、すぐにキュッと唇が噛まれた。 もう何日かしたら、智也は自分の家に帰らないとならない。 色々あった、智也には色々ありすぎた夏休みももう……終わる。 智也の胸が、ズキッと痛んだ。 そんな事を考えていたら、智也の肩に触れる位にすぐ横にいて、やはり広い海原を見詰める大成のボソっと言った呟きが夏の終わりの潮風の音に混じった。 「なぁ……智也。お前やっぱあの大学行くのか?」 智也は、日本で最高位と言われる東京の大学を受験する。 本当は、難関の美術大学に行きたかったが、母親が絵では絶対に食べてはいけないとそれにいい顔はせず猛反対に合い、智也は諦めた。 後数日して新学期が始まれば、智也の毎日は受験に本格的に追われるだろう。 「あっ……うん……受ける」 智也は、大成の横顔に答えた。 大成の、キラキラしたまばゆい光に照らされた横顔は、全てが調和されまるで芸術品のように完璧で美しく、智也は、この瞬間を永遠に忘れたく無いと心から思った。 今すぐ筆を走らせその大成を描き、この思いごと永遠に閉じ込めたいとも思う。 すると大成は、不意に智也の方を向き、真剣な表情で訴えるように言った。 「智也。お前、夏
Last Updated: 2026-06-08
Chapter: 惑溺
やがて、大成の舌が、智也の口内に入ってきて智也の舌に優しく触れた。こんな、自分の体内奥の無防備で敏感な生の肉を、他人に触れられる事は一生無いと智也は思っていた。でも、やはり、大成なら智也の拒否反応は起こらなかった。それ所か智也は、大成の舌の動きを健気に真似て、大成の舌に自分のそれを絡めた。クチュ……クチュ……クチュ……明らかに官能的な水音が繰り返すようになり、智也の脈動が激しく打つ中息も上がってきたが、それ以上に、大成の息がすでに荒かった。いつもクールなはずの大成のその今の姿は、獲物を前に余裕無い野生の獣を思わせ、智也の体を更に熱く熱した。大成は、更に激しい息遣いと供に、智也の口内で二人の舌を執拗に交わらせた。不意に、智也にこのままだと大成とのセックスに向う予感がよぎる。智也は、確かに大成を受け入れていたし、このまま接触恐怖症の症状が出ないか試してもいいと思った。でも、半分、まだセックスは怖かった。それなのに――「あっ……ふっ……」智也は、背中を強く震わせながら、思わず艶のある声を喉の奥から発した。それは、確かに智也の歓びの反応だった。智也の体は、歓喜していた。でも――大成は、智也の体の震えを感じ取ると、智也の接触恐怖症を懸念してサッと智也から唇と体を離した。「ハァ……ハァ……ハァ……ごめん……急にやりすぎた……」大成が乱れた自分の息を整えようとしながら呟いた。本当なら、智也を落とせるかどうか賭けをしてる大成にとって、今なら智也の体をすぐ何とか出来た大チャンスだったのに。賭けに勝てたのに。賭けの存在を知らない智也も、いつも周りに不尊な態度の大成が謝ったのを、大成と言う普段何もかも自分の意のままにする男が興奮と欲望を必死で抑えようとしているような姿を、智也は不思議そうに見詰めた。それでも大成は、壁に両手をつき、背中が壁に着いている智也をその中に囲い、しっかり絶対逃さないとでも言うようだ。「本当に悪かった。お前が……お前が、接触恐怖症を起こさないように、もっと大切にする。慎重に触る。セックスは今すぐじゃなくていい。でも、セックスはまだでも、もう智也の心も体も……全部俺のものだ……」智也は、大成を見詰めてすぐに返事が無かった。でも、それは智也が大成に対してNOと言う意味じゃない。大成が智也を大切にしたいと言ってくれた
Last Updated: 2026-06-04
Chapter: 罪人
一瞬、何が起こったかわからず、智也は息すら止め、頭の中が真っ白になった。だが、智也の唇に重なる大成の力強い唇が、智也の意識を引き戻す。そして――大成の唇の感触は柔らかい。力強いのに柔らかい。相容れないはずの感覚が一つに完全に溶けて混ざり合っていた。智也は、初めて他人の唇というものを知った。やがて、そっと、大成は智也から唇を離した。でも、大成はまだ背中を屈め、智也の顔の数センチ前に大成の唇があり、大成の瞳も智也を真っすぐ見詰める。智也も、その視線に自分のそれを交わらせた。智也の鼓動は、心臓が破裂しそうな勢いで打ち続けている。大成は、いつもクールだが、いつも自分の言いたい事はハッキリ言うタイプでその時は饒舌だ。なのに、今の大成は、首から頬が上気し赤くなり、余裕なさそうに胸で大きく息をして、言葉を発したいのに出来ないように見えた。智也は、こんな大成を初めて見た。ただ二人は見詰め合い、言葉にならないまま数分時間が過ぎてゆく。そこに先に言葉を発したのは、意外にも智也だった。「どうして?……」「えっ?!」「どうして……俺にキスしたの?……」「どうして?……」 珍しく、大成は戸惑ったような表情になった。 こんな大成も、智也は初めて見た。 だが、そこに不意に佐久の声がした。「ヒューヒュー!いい雰囲気じゃん!これからエッチすんの?」 佐久は、明らかにふざけているし、根底には、大成が智也とセックスした後、もしかしたら、自分達も成り行きとおこぼれで智也とセックスできるかもという狙いもある。 そして佐久の背後には、やはり四人の男達もいて、智也達を見てニヤニヤしていた。 大成は、まるでそんな佐久達の計略を感じ取ったかのように、佐久達を目を眇めて睨んだ。 佐久は、それを見てゾっとして、思わず後ろに後退りしそうになり、他の四人もそうだった。 だが佐久は、大成のそういう所に妙なカリスマ性を感じるし、大成がこのまま智也を騙して賭けを続ける気満々だと「賭けの邪魔すんな!」とその目が言ってると思い込み、佐久達も智也とセックスするという計略は諦めた。 だから、佐久は、賭けが上手く行く方向にニヤリとして言動を変えた。「鈴木は、不破の事どう思ってんの?」「……」心臓をバクバクさせながら、智也は閉口した。「なぁ……不破の事、どうな訳?」「……
Last Updated: 2026-05-30
Chapter: キス
大成の家は、本当に広い。智也は、一階のリビングから長い廊下を走っていた。そして、曲って又長い廊下のその先の智也の宿泊している部屋に入ろうと思っていた。智也の心の中は、佐久達の前で大成の友達を演じられなかった罪悪感と、さっき気付いてしまった大成への気持ちで心が大混乱していた。その勢いのまま廊下を曲がろうとすると――「鈴木!待て!」大成が、智也の腕を掴んで叫んだ。大成がこんな大きな声を出すのを始めて聞いた智也は、それにも驚き振り返った。すると大成は秒速で、智也を腕に抱いて、廊下の壁側に智也の背中をぐっと押し当てた。智也が気がつくと、大成の整い過ぎる怜悧な顔がすぐ目の前にあった。――こんな完璧な容姿が他にあるだろうか?――そんな智也の大成に対する昂る感情が、智也の息からすらバレそうで、智也は息を一瞬止めた。大成の、智也を抱いている方も智也を壁に押し当てている方も、その両腕が痛いくらいに強い。そして、あまりに大成の智也を見詰める瞳が強くて、智也は緊張で心臓が破裂しそうで視線を外した。「どうして、部屋を出て行った?」大成の声が、険しかった。(怒ってる?……)智也は、大成に視線を向けて目を見詰めた。次の瞬間、大成の怒りは当たり前だと思う。大成には、佐久達との関係は大切なのだろう。大成や佐久達には、AVを見る計画は大切で楽しんでいたのに、智也だけが耐えられなかった。やはり、元々智也と大成は、住む世界や感覚が違う。時として社会生活は、良い悪いでは無く人数が多い方の論理が正しくなる。智也は、何かにつけてその人数の多い方の論理に馴染めない事が多いが、もう我慢もしないとならない年齢だ。でも――やっぱり、大人数でAV鑑賞は智也には無理だった。元々無理だが、大成への感情に気付いたから尚更。だから智也は、大成と"友人"としても距離を取らないとならないと思った。以前から大成との距離感に悩んでいたが、これが良い機会だった。別に、客室に戻る事は無かった。智也の物など、最初からこの家には何も無い。――大成すら、智也の何者でも無い――今すぐに玄関を出て、母のいるマンションに戻ろうと、大成の腕から逃れようとした。だが、大成の力は強く、智也は、壁に張り付けにされたまま動けなかった。「ごめん……せっかく、佐久君達と楽しんでたのに……雰囲気潰
Last Updated: 2026-05-15
Chapter: 自覚
智也は、少し向こうのダイニングの入り口にまだ立つ大成を見詰めながら、椅子から立ち上がった。大成の視線も、智也しかとらえていない。「何するつもりだ?……」そうしなから大成は、横にいる佐久に智也に聞こえないよう小さな声で言った。「まぁ……任せろって。あのお堅そうな鈴木が不破とセックスしたくなるように、ちょっと仕向けるだけだから。あのピュアそうな鈴木も所詮男だって。ちょっと細工してやったらすぐ本性出るし、そこら辺にいるすくに盛る奴等と変わらないって。そこで、いつも不破が他で別の奴とやってるみたいにサクッとセックスしたらこっちのもんだろ?さっさと鈴木も同じようにやっちまえよ。不破が鈴木とセックスできて付き合う事になったら、このゲームは不破の勝ちで、ハイ、即終了~」佐久は、大成の横顔をみてニヤリとした。だが大成は、何故か口を固く閉ざし返事もせず、ただ智也をじっと見詰めていた。大成の"友達"達は、身なりの良い奔放そうな見た目がいかにも金持ちの子息感が出ていた。だから智也は、彼等を一目見ただけで学校でいつも感じる疎外感をここでも感じる。同じ男で同じ年齢層。でも、智也は、彼等とは全く相容れない雰囲気を感じる。それに、なんとなく、智也を見る大成の"友達"達の目付きから嫌な感じがした。でも、大成の立場もある。智也は、少しでもこの場が和むよう佐久達に自分から進んで自己紹介して、出来るだけ平静を装った。佐久達は、智也の事をすでに知っているのに、まるで知らなかたように装う反応をした。この落ち着かない状況でも、大成さえいれば智也は大丈夫な気がした。智也は、大成を信じて疑わなかった。だが、状況は、智也にとって意外な方向に行く。佐久は、智也に「一緒に遊ぼう」と言った。ゲームでもするのかなと智也は最初思ったが――大成の"友達"達は、大成の家のリビングのテレビの大画面で、智也と大成に一緒に大人の動画を見ようと提案してきた。智也は、元々性的に積極的では無く、むしろ大人の動画など見た事すら無かったし、こんな大人数で見る物なのかすら疑問だった。疑問だったから、智也は、大成の横顔を見詰めて大成に聞いた。「こういう事……みんなでよくするの?」大成は、すぐに答えなかった。それは、半拍間を置いてからだった。「男なら、友達同士でなら誰でもやる事だろ……」口調は、
Last Updated: 2026-05-04
いなくなった愛犬を探していたら異世界で獣人王になっていて、俺は愛妃になれと攫われた!(交際0日で獣人王と婚約しました))

いなくなった愛犬を探していたら異世界で獣人王になっていて、俺は愛妃になれと攫われた!(交際0日で獣人王と婚約しました))

「ただ、一緒にいたいだけなのに……やっぱり異世界同士、人間と獣人は結ばれないのかな?…」 理久は、以前から犬をどうしても飼いたくて、保護施設から訳アリの、でも、キレイな長い黒毛の大型犬を引き取った。 そして、理久と、理久から「クロ」と名付けられたその犬は、一人と一匹、毎日毎日仲睦まじく暮らしていた。 しかし、ある日、そのクロが突然失踪し、理久は悲しみとパニックの中で探し回る。 そして、そのクロ捜索中の悲しみに暮れる理久の目の前に突然、キレイな長い黒髪の長身のイケメンが現れた!
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Chapter: 思い出話
まるで姫君が眠るような純白の天蓋付きのベッドの布団の中に入り上半身起きていた翼。その少し離れた前方で、彼に対して横を向いて立っている存在に視線をやった。それは、クロが今この部屋にいる理久と翼が二人きりになるのを阻止して置いていった猫系獣人騎士。さっきクロが変装した警備兵より地位が高く、体の上下にだけは金属製の鎧を纏っていたが、頭には兜は今は無い。「そこの獣人の人、ちょっと理久と二人だけで話したいから、部屋出てくれる?」訳のわからない異世界に来てメンタルをやられて理久に甘えている演技をしているはずの翼が、いつもの彼らしい尊大な物言いをした。言われた猫系の獣人は、頭の獣耳両方をピクピク一度させたが、表情を変える事なく淡々と返した。腰には、立派な剣を携帯している。「それは出来ません。私は陛下より、理久様と翼様に何事もないように……と仰せつかっております故……」「俺と、理久に何事もないように?……俺が理久に何かすると思ってんの?あんたの、"犬"の王様は?」翼の言葉の端々に棘を感じる。猫系獣人は、黙ってジロリと翼を見詰めた。翼は、今は演技を一旦やめ、その視線を受けても平然としていた。そして、今自分がいる羽毛のフカフカの布団のベッドの周り、ところどころの細工にふんだんに本物の純金を使っているだろう、ソファやテーブルや壁。花々の精巧な彫刻をされた大理石で作られた大きな暖炉。だだ広い部屋の床一面に敷き詰められる上質で豪華な織物絨毯を見て、クロを心の中でなじる。(何が!……異世界の獣人王だよ。金は持ってんだろうが……ペットの分際で飼い主に手出しやがったただのクソ犬だろうが……)ベッドの横の椅子に座る理久の方は、翼の心が、異世界に来た事からの弱気からイライラに変わり安定してないと判断した。だからこれ以上、ゴタゴタしたくなかった。「翼……別に、今でもこうやって普通に話しできるから……」小さく息を吐くと、慌てて、しかし、やんわり咎めた。翼は、気弱になる芝居をもう本当にやめて無理矢理にでも獣人を追い出したい気分だった。でも今は、理久の気持ちを一刻も早く自分側に引き込む方が、クロから引き離すのが先決だった。「仕方ないなぁ……」翼は、わざと大きめの溜め息混じりに呟いた。そしてその後、一瞬、広い部屋に物音一つない静寂が訪れた。それを破ったのは
Last Updated: 2026-06-17
Chapter: 意地
すぐに、昨晩も翼を診察した頭に熊耳の獣人の医師が来て、天蓋付きベッドに横になる翼の腕を診た。 それを、翼から少し離れた所に立って黙って見詰める理久と獣人クロ。 理久とクロ二人は横に並びながら、距離は人一人ぶん空け、互いにまだ緊張感のある空気が流れる。 クロは、さっき、嫉妬から理久を咎めた事を謝りたいのに―― とにかく今すぐ謝りたいのに―― クロが、ここまでするのは、理久だけなのに― 翼や、医師や、侍従や、アビやレメロンもいるこの状況では出来なくて、チラチラと横にいる理久を何度も見る。 理久も、何かクロに言いたげで、チラチラとクロを何度も見る。 理久とクロは、お互いに、お互いを凄く意識していた。 そんな理久とクロを、翼は診察を受けながらベッドの上で不満そうに見詰める。 そしてさっきの計画通り、わざと辛らそうな演技をして、理久への態度をいつもと変える。 「理久!こっちに来てくれ!不安なんだ!」 理久は、いつもしっかり者の翼の豹変に驚きながらも、それだけ翼が精神的に追いつめられていると、理久にもその責任があると、やはり、翼は理久の従兄弟だと、クロをチラっと気にかけた後、翼のいるベッドの横の椅子に座り、 診察を受ける翼を見守る。 「腕の骨は、多分大丈夫だと思いますが、念の為、魔法治癒師なら骨の状況を透視出来るので、お呼びになるのがよろしいかと……」 医師がそう告げると、翼の不安そうにする演技に拍車がかかる。 「理久!早く帰りたい!俺の世界に! 理久!一緒に早く帰りたい!」 翼は、上半身起きて、理久に抱きついた。 理久は、又チラリとクロを横目で見た。 クロは、グッと堪えてるような表情で、 理久と翼を凝視していた。 でも、翼の表情も不安そうで、理久は翼を抱き締めて安心させようと背中を擦って励ました。 「ごめん、翼……もう少し、もう少し待って。必ず帰れるから。必ず帰して上げるから」 本当なら、クロが婚約者の理久の代わりに翼にそう言って安心させるべきだと、クロは思った。 嫉妬で理久に対しても子供みたいに意地になっている場合では無いと。 しかし―― どうしても、理久の翼への近しい態度から、理久の翼への気持ちが釈然としない。 翼の気持ちに気づかない理久は何も悪くないのに、理久
Last Updated: 2026-05-31
Chapter: 仮病
(クソ犬っ!許さん!よくも理久を!純粋な理久をたぶらかしてこんな訳わからん世界に拉致した上に、理久の体を!) 翼は、本気の本気でキレた。 頭の中がぐつぐつと煮え立つ。 そして、目を鋭く眇め、早足でクロに向い突進する。 クロを殴る気満々だ。 一発や二発では足りるはずない。 クロも翼の殺気を感じた。 しかし、クロは、余裕の笑みを浮かべそれを受けて立つ気で、理久をクロの背中に隠すと翼に対して真正面を向く。 勿論、ただ黙って殴られる気はない。 だが、理久は、一時は、翼の命を本気で危惧したから、そんな二人の雰囲気が目に入らないくらいに、自分が今上半身裸なのも頭から飛んで忘れたくらいに翼が無事だったのがうれしかった。 「翼!良かった!」 理久が、ヒョコっとクロの背中から飛び出し、翼の目の前に笑顔で駆け寄る。 その理久の表情に、一発で翼の殺気は削がれた。 だが次の瞬間、翼の目に再び、理久の上半身の素肌に残る理久とクロとの愛の交歓の跡が入る。 「理久っ!」 翼は、悔しさの余り叫んで、正面からガバっと理久を抱き締めた。 その光景に、目を大きく開いて驚愕したのはクロだった。 「理久……理久……理久は俺の事、心配だったか?」 翼が、理久を抱き締めたまま、切なそうな声をだした。 「当たり前だろ。めちゃくちゃ心配した!」 理久も翼の背中を抱き締めて、理久にとって従兄弟の翼の無事を実感して本当に安堵した。 だが―― 「理久!翼から離れろ!それから、これを着ろ!」 いつもの優しい声とは違い、かなり殺伐とした感じでクロが言った。 理久に対してクロのこんな本当に冷たい声を聞いた事が無くて、理久はビクっとする。 そして、不安そうに理久はクロを見詰めた。 だがクロは、やはりいつもと違い、理久に向けていた視線も厳しかった。 そして、クロの腕が翼から理久を離して、理久の肩に白の前開きのシャツを掛けた。 そんな二人を見て、翼は思った。 (まだいける……まだ大丈夫……俺は理久を取り戻せる!必ず理久を俺は取り戻す!だから、あの、俺に取りついた化け物の言う通りに行動する!) そして翼は、突然左腕を抑えて、両目を閉じて唸るように言った。 「いっ……痛い……痛い……腕が痛い……早く!早く!俺達の
Last Updated: 2026-05-24
Chapter: ヘソ天
フワフワと翼の目の前で浮かぶ光の球体は、翼に取り引きの詳しい内容を手短に話した。翼は、一瞬何かを考え、次に頭に理久の顔を浮かべ、そして、答えた。「いいだろう。その話しに乗った!」❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋ちょうどその少し後――理久とクロは、まだクロの寝室の天蓋付きベッドで横たわっていた。「う……ん……」理久は、ふとぼんやりと目を開けた。カーテン越しの窓からは、まだ薄っすらとしたようやく明け始めたばかりの光が入る。瞼を上げたり下げたりパチパチさせながら理久の意識もどんどん明瞭になってくる。すると、理久がついさっきこのベッドの上で、獣人王クロと性器と性器で愛を確かめ合った事を思い出した。理久は一瞬、体がカッと熱くなった。実は、さっき理久とクロが性器同士で一度二人で果てた後も、クロの陰茎がまだ強く立ち上がっていて筋まで浮かべていた。だからクロは、理久にクロの陰茎を直に握ってもらい、その上からクロの手を重ね、クロの陰茎だけ再び擦り上げた。その内に、クロは体が熱くなり自分のシャツを脱ぎ捨てて、理久の体を舐めたりキスしたくなり、理久のシャツも脱がした。二人のそれはベッドの下に散乱した。今の目覚めたばかりの理久は、下半身ズボンだけの姿で、理久の上半身には、クロのキスマークや牙の甘噛みの跡がいくつも浮かぶ。そんな今の理久の顔、頬の辺りに湿っぽい、だけど柔らかい感覚を感じて、理久はハっとなった。すると――「ハッハッハッハッ……」仰向けの理久のすぐ目の前に通常のサイズの犬でなく巨大な犬になったクロの顔があった。あの展望台の時の大きさ。そして、うれしそうに息を弾ませながら、クロの大きな舌の先で理久の頬をペロペロペロペロ舐めていた。「クロ!」理久の声も、くすぐったさにうれしそうに弾み、理久の両腕が巨大犬クロの首に巻き付く。「ハッハッハッハッ!」クロの息がさらに興奮気味に昂り、さらに熱烈に理久の頬をペロペロペロペロ舐めた。「アハハ!クロ!クロ!クロ!くすぐったいよ!」理久には、獣人のクロも、やっぱり犬(今は普通でなくデカいが……)のクロもうれしかった。理久の世界にいた時は、しょっちゅうこうやって普通の大きさの犬のクロに頬や鼻や唇を理久は舐められて楽しかった。ただジャレ合ってるだけの何気ない事だが、一度姿を消したクロと
Last Updated: 2026-05-09
Chapter: 取り引き
それは―― クロにとって、理久だけは特別で―― そして、理久の"横"には、いつもクロがいて―― クロにとって、理久が必要という事だ。 ❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋ 同じ頃―― 王城の客室の天蓋付きベッドでまだ眠りながら、翼は夢の中で昔を思い出していた。 回想は、ずっと昔の、理久と翼が同じ幼稚園に行っていた5歳の時から始まった。 理久は、幼稚園に入る以前から他の子供より小さくてかわいくて、その上マイペースなので行動が危うく、この頃から、何事も卒無く何でもこなしていた翼は理久から目が離せなかった。 案の定、かわいくて目立つ理久は、幼稚園の同級生から何かにつけちょっかいやからかいを受けたので、常に翼が側にいてそれを払い続けた。 そして、理久も―― 「翼!翼!」 いつも翼の後を付いて回って、翼は、いつも理久の前に立ち、仲良く手をつないで理久を引っ張って歩いた。 小学生になっても、流石に手はつながなくなったが、基本仲は変わらなかった。 理久は、相変わらず小学校でも行動が何事もマイペースで器用でない。 だからいつもそれを助けるのは翼だった。 理久が他の小学生からちょっかいをかけられるのを防ぐのもいつも翼。 だが、小さな変化もあった。 それは、小学生になり、理久は変な大人からやたら道や公園で声をかけられるようになった。 だから小学生になってからすぐ翼は、理久を守るためにもっと強くなろうと空手を始めた。 試合の日には必ず理久が応援に来てくれたので、翼はいい所を理久に見せるためにひたすら強くなり、小学校卒業の頃にはすでに黒帯を所持していた。 いわゆる少子化で、同学年は3クラスしかなく、基本クラスは小学生6年間ずっと一緒。 この6年間も、翼の毎日は理久を中心に回っていた。 中学生になっても、クラスが少なく、理久と翼はずっと同じクラス。 翼は、相変わらず理久を守るのは自分しかいないと自負して、あらゆる事で理久をサポートした。 そして、理久が心配すぎて、理久がする事のほとんどに口出しした。 理久は、中学生になってもかわいい男子で、翼は、理久が同級生や先輩、後輩からちょっかいやからかい、イジリを受けないよう常に監視していた。 周りの生徒達も「理久には翼がついてるから」と、翼を
Last Updated: 2026-04-20
Chapter: 夜明け前
クロの王城。 造りや素材に贅の詰まった調度品に囲まれた広いクロの寝室。 クロは、キングサイスより更に大きなワイドキングサイズの天蓋付きのベッドで眠っていた。  眠る前まで獣人だったクロの その姿は、今はいつもの獣人型でも、普通の大型犬でもなく、あの展望台から公園に理久を背に乗せて走った時の超巨大犬になっていた。 でも、これには理由があった。 部屋に無数にある窓のカーテン越しの外はまだ暗い。 クロの両瞼がパチっと開いた。 クロは、獣人の時も犬型の時も本来持つ獣の本能で直感で夜明け直前だとわかる。 子供の頃からこの早朝の時間に起きるようにもたたきこまれている。 ふと、クロが体に温もりを感じて斜め下に視線をやると、巨大犬クロの胸の辺りのもふもふふさふさの黒毛に、理久が顔を埋めてすやすやと眠っている。 アドオン国の鳥人族の国王との調印式まで後数時間と迫り、理久の従兄弟もまだ目覚めたと言う知らせがない。 やらなければならない事も問題もあれど、しかし―― 理久のその安らかな理久の寝顔を見て、その穏やかな寝息を感じると―― 途端に、クロに言葉では言い尽くせぬ幸せと安心感が込み上げた。 そして、眠る前、理久と獣人姿のクロで、このベッドの上で互いの性器を使い愛を確かめ合った余韻にも、クロは鼓動を早めながら浸る。 ――理久に会うまで、こんな気持ちや感覚は知らなかった―― クロは、赤ん坊の頃から父と母である国王夫妻から離されて、国王夫妻の居住している城とは別の距離の離れた宮殿で臣下達に次期国王として厳しく育てられた。 だが、それはクロだけでなく、この獣人王国の歴代の王達は皆そうだったし、王族の長い間のしきたりだった。 ――この国の王として何より優先すべき事は、どんな時も常に強い王として振る舞い、国の誇りと名誉、領土を守る事―― クロは、まだよちよち歩きの頃から臣下達から徹底的にその精神と感情を抑える事、剣術、武術、馬術を叩き込まれ、常に軍隊にいるような厳しい生活をしてきた。 だが、クロにはそれが日常で当たり前だったから違和感は無かった。 クロが17歳で国王になり、その教育の成果は発揮された。 クロは、毎日毎日国政漬けの厳しい生活を淡々と難なくこなし―― 繰り返されるモンスターの襲撃からもその度に領
Last Updated: 2026-03-25
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