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Novels by みゃー

私を裏切った億万社長、今はもう一度愛して欲しいと求めてくる

私を裏切った億万社長、今はもう一度愛して欲しいと求めてくる

「もう一度、あなたを愛していいですか?」 ズタズタにされた初恋からの再会愛… 子供の頃から不遇に耐えてきた鈴木智也は、就職してからやっと空間デザイナーとしての道を歩き始め、今はやっとの事、順調な生活を手に入れ安定した生活を送っていた。 しかし―― 過去、最も智也を苦しめ深い地獄に落とした男が、今になって再び智也の前に現れた。
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Chapter: 自覚
智也は、少し向こうのダイニングの入り口にまだ立つ大成を見詰めながら、椅子から立ち上がった。大成の視線も、智也しかとらえていない。「何するつもりだ?……」そうしなから大成は、横にいる佐久に智也に聞こえないよう小さな声で言った。「まぁ……任せろって。あのお堅そうな鈴木が不破とセックスしたくなるように、ちょっと仕向けるだけだから。あのピュアそうな鈴木も所詮男だって。ちょっと細工してやったらすぐ本性出るし、そこら辺にいるすくに盛る奴等と変わらないって。そこで、いつも不破が他で別の奴とやってるみたいにサクッとセックスしたらこっちのもんだろ?さっさと鈴木も同じようにやっちまえよ。不破が鈴木とセックスできて付き合う事になったら、このゲームは不破の勝ちで、ハイ、即終了~」佐久は、大成の横顔をみてニヤリとした。だが大成は、何故か口を固く閉ざし返事もせず、ただ智也をじっと見詰めていた。大成の"友達"達は、身なりの良い奔放そうな見た目がいかにも金持ちの子息感が出ていた。だから智也は、彼等を一目見ただけで学校でいつも感じる疎外感をここでも感じる。同じ男で同じ年齢層。でも、智也は、彼等とは全く相容れない雰囲気を感じる。それに、なんとなく、智也を見る大成の"友達"達の目付きから嫌な感じがした。でも、大成の立場もある。智也は、少しでもこの場が和むよう佐久達に自分から進んで自己紹介して、出来るだけ平静を装った。佐久達は、智也の事をすでに知っているのに、まるで知らなかたように装う反応をした。この落ち着かない状況でも、大成さえいれば智也は大丈夫な気がした。智也は、大成を信じて疑わなかった。だが、状況は、智也にとって意外な方向に行く。佐久は、智也に「一緒に遊ぼう」と言った。ゲームでもするのかなと智也は最初思ったが――大成の"友達"達は、大成の家のリビングのテレビの大画面で、智也と大成に一緒に大人の動画を見ようと提案してきた。智也は、元々性的に積極的では無く、むしろ大人の動画など見た事すら無かったし、こんな大人数で見る物なのかすら疑問だった。疑問だったから、智也は、大成の横顔を見詰めて大成に聞いた。「こういう事……みんなでよくするの?」大成は、すぐに答えなかった。それは、半拍間を置いてからだった。「男なら、友達同士でなら誰でもやる事だろ……」口調は、
Last Updated: 2026-05-04
Chapter: 友達
大成の家に戻ってから、智也のその疑問は―― どんどん深くなっていった。 帰ったその日の夜。 夕食を終え、大成は智也にネットショップで智也の画材を買うと言った。 智也は、ただでさえ住まわせてもらい、食事まで与えられ、これ以上何かしてもらうなんてと遠慮したが、大成は「自由に絵を描け」と引かなかった。 だだっ広いリビングのソファに二人並んで座り、智也は、大成の持つスマホを覗きこみながら画材を選ぶ。 その間、大成は、何気に智也の肩に抱くように腕を回した。 そして、スマホの画面上で、智也と大成の指同士が何気に触れる。 智也がビクっとしたのは、肩に大成の腕が触れた最初だけで、その後しばらくは、何度指や手が接触しても智也は平気だった。 ただ、キャンバスや画用紙を立てて書くための用具イーゼルは、そこまで本格的な物はやはり断った。 ポチッたのは、大きなスケッチブック。 鉛筆。 透明水彩絵の具と筆や水洗いバケツ。 明日配達。 ――「友達」だから、触れあっていればその内に接触にも慣れる―― 大成が智也に言ったそれは正しかったかも知れなかった。 でも、智也に、さっき思った疑問が再び脳裏に浮かぶ。 (「友達」って、こんな距離が普通なんだろうか?でも、学校でも男同士の友達で肩組んで歩いてるし、肩組んで写メも撮ってるし……」 そして、大成と触れ合うと、以前より更に智也の心臓の鼓動が早まり、智也の体が熱くなる事に戸惑った。 本当に、確実に以前より症状は強くなってる。 だが――更に―― 翌日から、大成は、学校にいる時以上に智也に触れてくるようになった。 大成は、朝、洗面所で会うと「おはよう」と智也の髪を撫でるようになり、眠る前も「おやすみ」と、同じようにした。 そして、何かにつけ以前以上に、智也の手や指に触れた。 やはり、今でも最初は大きく智也の体がビクっとして体が固まるが、やはり智也は受け入れた。 そして―― 大成は、あの美術室の時のように智也に顔を近づけて頻繁に何かを言う事が多くなり、智也はその度に心臓を跳ねさせた。 そして―― 夜、2人でリビングのソファで、大画面のテレビで映画やサブスク型の動画配信を見ていたら、大成は必ず智也の肩を当たり前のように抱くようになった。 でも、変化は
Last Updated: 2026-04-28
Chapter: 帰宅
夕刻。智也は、さっきのプールでの言葉通り、帰宅する事にした。大成の家の運転手付き送迎用の高級車に自宅マンション前まで送ってもらった。後部座席に座る智也は、隣にいる大成に呟いた。「じゃあ…」その声で、後部ドアが自動で開いた。でも、智也自身で帰ると言ったのに、体は重かった。自分でも驚くほど、大成の側を離れるのが躊躇われる。「ああ……」大成は、静かにそう言うと、智也の顔を見詰めた。声もその表情も、いつもの自信に満ちた大成より、少し覇気なく見える。智也には一瞬、まるで、大成も智也が帰宅する事が嫌みたいに見えて、心の中で否定する。そう見えるのは、智也が大成の側にもっといたいと言う寂しさからくる感情が見せる、智也に都合のいい錯覚だと――智也は、本当は大成のくれる優しさや温度をずっと感じていたい。今になって気付いてしまった。(それに……学校で「氷の皇帝」と呼ばれるクールで完全無欠の不破大成が寂しいなんて思うはずない。しかも、大成の周りには、俺と違っていつも周りに沢山の人がいる)大成に仕え世話をしてくれる沢山の人達。大成に憧れ、何かと大成と親しくなろうと近づいてくる学校の多くの生徒達。それに、大成は、智也を「友達」と言ってくれて、夏休み又大成の家に来るよう言ってくれたが、大成の私生活を知った事で、智也は、やはり大成との身分の差を思い知った。智也の住むマンションも決して安いものではないが、それでも大成の家とは比べ物には全くならない。本当に、自分が大成の友達でいいのか?やはり――そもそも、大成が何故智也なのか?がまだどこかしっくりこない時もある。智也は、すでに運転手が自動で開いていたドアからスッと外に出た。そしてそのまま歩いて、車から少し離れ玄関前まで来た。だが――急に立ち止まって、マンションを見上げ、上層階の智也親子の部屋を見詰めた。まだマンションの中にも入ってないのに、母親と内縁の男のケンカする声が聞こえたからだ。車の近くでは聞こえなかったのに。時間的にマンション前を通る人もたまにいて、真夏、夕刻でもまだ明るいこんな時間に大喧嘩する声に、みな智也親子の部屋を嫌そうに見上げ足速に行く。母の為に帰ってきたものの、やはり……家に帰るのを惑う。やはり、自分には本当に居場所は無いと思う。だから、一度マンションに入り、大成の車
Last Updated: 2026-04-13
Chapter: プール
この後も、2日目、3日目と、智也は大成の家に留まった。 朝から昼までは、ゆっくり客室で横になったり、大成と二人で朝食や昼食を取り ―― 午後から大成は、自分は受験勉強しなくても合格出来ると自宅のジムやプールで何時間も身体トレーニングして、智也はスマホで動画など見た。 大成は智也と真逆のタイプで、兎に角、体を動かし体を鍛えた。 智也は、プールのすぐ横の客室の窓から時折、大成のそこで泳ぐ姿を眩し気に眺めた。 大成のプールには屋根があり、可動式で強い陽射しを避ける事もでき、大成はマメに日焼け止めを塗ってる事もありキレイに日焼けしていて、夏でもなめらかで白い肌の智也とそこも対比的だった。2日目、3日目も、大成との夕食後は、2人で映画を見た。 ソファに一緒に座り、最初は肩と肩の距離があるが、終わる頃には、2日目も3日目も大成の肩はいつも智也の肩に触れていた。大成は、智也の夢中になるSF系を選び、智也が画面に熱中してる間に、智也が気づかない、いつの間にか距離を詰めていた。 だが、智也が気付いても、体がビクっとしなかったし、嫌な気持ちにもならなかった。 ただ、智也の胸の鼓動が早くなり、触れ合う部分が熱かった。 大成宅に滞在し3日目。 前の2日通りに、智也は大成と朝食と昼食を取ると、又昼から客室に戻った。 しかし、今日は、大成からさっきA4の白のコピー用紙とそれを乗せるボード、鉛筆をもらい、プールサイドに続く開けた大きな掃き出し窓際に座りプールに視線を向けた。 智也は、いつもの物静かな眼差しが嘘のように鋭く、そこで泳ぐ大成を見定めて鉛筆を走らせた。 「何を描いてる?」 気付いた大成が、不意に泳ぐのを止めて水の中からプールサイドに前のめりに寄りかかり、すぐ近くの智也を見詰めて言った。 智也は、窓際からプールサイドに裸足で出た。 大成の所のプールサイドは特注で、夏の強い陽射しでもあまり熱くならない。 「不破君……」 智也は、膝を折りかがんで、少し照れながら描いた大成を見せた。 それは、短時間で描かれたデッサンだったが、体のバランス、筋肉の躍動から、大成の周りの水の動きまで完璧だった。 大成が、それを驚くように凝視していると―― 「俺……やっぱ、もう絵を描くの、今日で辞める。だから……これが最後。不破君を描くので最後……」 智也の、ポツ
Last Updated: 2026-04-08
Chapter: 初恋
大成の車に乗り、智也は大成の家の前に来た。 ゲリラ豪雨はすでに止んでいた。 東京の一等地の、一見、沢山の住人の住んでいそうな三階建ての高級マンションに見える一棟全てが大成の家だった。 そして敷地には、広い庭やプール、車が何台か入る車庫もある。 やはり、大成の両親に悪いからと智也が降りたら自分の家に戻ると言うと、大成はクスっと笑って言った。 「俺は一人暮らしだから大丈夫」 「あの、大きな家に……一人暮らし?……」 智也は驚愕した。 「本当に……一人暮らしなんだ?……」 玄関を入ると、やはり中のあまりの広さに智也は再び呟いてしまった。 横にいる大成は、一瞬黙ったが、すぐに横の智也に話し出した。 「元々俺の父親はあまり自宅にいるタイプじゃないし、今はこの家とは別の家を中心に仕事してる。母親は、俺が小さな頃父親を裏切って他の男と浮気したのがバレた。俺の父親は、どんな理由があろうと一度でも自分に反抗したり裏切ったり、自分に恥をかかした人間は、どんな事があっても一生許さないし、何をしても二度と信用しないタイプだから。母親は、浮気がバレたその日に問答無用でこの家を金の1円も持たされないで叩き出された。まあ……当然だろうな」 言い終えて、大成が鼻で冷たく笑う音がした。 「そうだったんだ……」 智也は、それ以上何も言葉が見つからず下を向いた。 本当に驚いた時は、本当に言葉が出ない。 適当な慰めの言葉を言う方が不謹慎に思えた位だった。 ただ、いつも大成と智也は普通に日常会話はする。 しかし、智也は、普段大成から大成の家族や家の事は全くと言っていい程聞いた事が無い。 そして、大成の周りには、時に高校の生徒達が媚びるように群がるが、彼等にも大成が大成の家庭の事を話してる姿も見た事無かった。 智也は、大成と出会って今までどこか、大成があまりに自信に満ちて何も不自由のなさそうにしていたたから、どこか自分と遠い存在だと思っていた。 でも、今、大成にも家族に恵まれてない部分があると知ると、なんとなく自分と近しさを感じた。 屋内を歩けば広そうな部屋がいくつもあり、エレベーターもある。 住み込みのハウスキーパーがいると言うのでどこも清潔で埃も無く、良く言うなら無駄な物を置かずキレイにスッキリしているが――
Last Updated: 2026-03-30
Chapter: 雨
「鈴木。俺がお前の指や手に少しずつゆっくり触れていったら、もしかしたら他人に触れられるのに慣れるかも知れない。少しずつ……」智也の横の椅子に座るその大成の言葉が衝撃的で、ガタンと音を立て智也が椅子から立ち上がった。そして、大成に困惑の表情を黙って向けて疑った。以前も、優しい言葉で智也を油断させ、智也を性的に襲おうとした人間は沢山いたから。そうしていると――大成も立ち上がり、智也と向い合い智也を見詰めた。大成の方が智也より大きいので、智也は大成を見上げた。互いの息がかかりそうな位近くに、智也の近くに大成がいる。あまりに近すぎる。やはり智也は、一瞬ビクっとした。しかし、不思議と目の前にいるのが大成だとわかっていると、他の人間に感じるような嫌悪感はなくてこの場を離れる選択をする必要を感じない。智也はそんな自分に驚く。そこに、大成が静かに呟いた。「俺なら、友達だから大丈夫だろ?」「俺と、不破君が……友達?……」智也にも小さな頃は、一緒に遊ぶ年の近い子供がいたが――今まで一度も友達だと確認した訳ではない。今新ためて友達とはどんな関係を言うのかとふと疑問がよぎる。「えっ?!俺達、友達じゃないのか?」大成の声のトーンが下った。「友達……なのか?」逆に智也が静かに聞き返した。大成の目を真剣に見詰めて。「友達だ」智也は、大成のその言葉に安心を感じて体の強張りを解いた。今まで智也は、他のクラスメイト同様に大成にも身分の違いから隔たりを感じていたし、疑心から大成が近くにいても遠く感じていたが、友達と言う言葉で初めて大成を身近に感じた。そしてさっき、大成が智也の絵を褒めてくれたのが、大成が智也を対等の友達と見てくれている裏付けになっていた。「なら、試験休み明けから、練習な」そう言い、大成が目を細め口角を上げた。「本当に?……」もしかしたら冗談だったのかもと、まだ智也はどこか思っていた。しかし――「本当に……」大成は、智也の顔に大成の顔をかなり近づけてそっと囁いた。キスできそうな距離だったから、大成の息も智也の唇をかすめて、智也の心臓が体から飛びでるのではないかと思うほど跳ねた。そして、その後しばらくしても智也の鼓動は激しいまま治まらなかった。この日の後、土日を挟み計5日試験休みがあり、又普通に授業が始まった。そして
Last Updated: 2026-03-17
いなくなった愛犬を探していたら異世界で獣人王になっていて、俺は愛妃になれと攫われた!(交際0日で獣人王と婚約しました))

いなくなった愛犬を探していたら異世界で獣人王になっていて、俺は愛妃になれと攫われた!(交際0日で獣人王と婚約しました))

「ただ、一緒にいたいだけなのに……やっぱり異世界同士、人間と獣人は結ばれないのかな?…」 理久は、以前から犬をどうしても飼いたくて、保護施設から訳アリの、でも、キレイな長い黒毛の大型犬を引き取った。 そして、理久と、理久から「クロ」と名付けられたその犬は、一人と一匹、毎日毎日仲睦まじく暮らしていた。 しかし、ある日、そのクロが突然失踪し、理久は悲しみとパニックの中で探し回る。 そして、そのクロ捜索中の悲しみに暮れる理久の目の前に突然、キレイな長い黒髪の長身のイケメンが現れた!
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Chapter: 取り引き
それは―― クロにとって、理久だけは特別で―― そして、理久の"横"には、いつもクロがいて―― クロにとって、理久が必要という事だ。 ❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋ 同じ頃―― 王城の客室の天蓋付きベッドでまだ眠りながら、翼は夢の中で昔を思い出していた。 回想は、ずっと昔の、理久と翼が同じ幼稚園に行っていた5歳の時から始まった。 理久は、幼稚園に入る以前から他の子供より小さくてかわいくて、その上マイペースなので行動が危うく、この頃から、何事も卒無く何でもこなしていた翼は理久から目が離せなかった。 案の定、かわいくて目立つ理久は、幼稚園の同級生から何かにつけちょっかいやからかいを受けたので、常に翼が側にいてそれを払い続けた。 そして、理久も―― 「翼!翼!」 いつも翼の後を付いて回って、翼は、いつも理久の前に立ち、仲良く手をつないで理久を引っ張って歩いた。 小学生になっても、流石に手はつながなくなったが、基本仲は変わらなかった。 理久は、相変わらず小学校でも行動が何事もマイペースで器用でない。 だからいつもそれを助けるのは翼だった。 理久が他の小学生からちょっかいをかけられるのを防ぐのもいつも翼。 だが、小さな変化もあった。 それは、小学生になり、理久は変な大人からやたら道や公園で声をかけられるようになった。 だから小学生になってからすぐ翼は、理久を守るためにもっと強くなろうと空手を始めた。 試合の日には必ず理久が応援に来てくれたので、翼はいい所を理久に見せるためにひたすら強くなり、小学校卒業の頃にはすでに黒帯を所持していた。 いわゆる少子化で、同学年は3クラスしかなく、基本クラスは小学生6年間ずっと一緒。 この6年間も、翼の毎日は理久を中心に回っていた。 中学生になっても、クラスが少なく、理久と翼はずっと同じクラス。 翼は、相変わらず理久を守るのは自分しかいないと自負して、あらゆる事で理久をサポートした。 そして、理久が心配すぎて、理久がする事のほとんどに口出しした。 理久は、中学生になってもかわいい男子で、翼は、理久が同級生や先輩、後輩からちょっかいやからかい、イジリを受けないよう常に監視していた。 周りの生徒達も「理久には翼がついてるから」と、翼を
Last Updated: 2026-04-20
Chapter: 夜明け前
クロの王城。 造りや素材に贅の詰まった調度品に囲まれた広いクロの寝室。 クロは、キングサイスより更に大きなワイドキングサイズの天蓋付きのベッドで眠っていた。  眠る前まで獣人だったクロの その姿は、今はいつもの獣人型でも、普通の大型犬でもなく、あの展望台から公園に理久を背に乗せて走った時の超巨大犬になっていた。 でも、これには理由があった。 部屋に無数にある窓のカーテン越しの外はまだ暗い。 クロの両瞼がパチっと開いた。 クロは、獣人の時も犬型の時も本来持つ獣の本能で直感で夜明け直前だとわかる。 子供の頃からこの早朝の時間に起きるようにもたたきこまれている。 ふと、クロが体に温もりを感じて斜め下に視線をやると、巨大犬クロの胸の辺りのもふもふふさふさの黒毛に、理久が顔を埋めてすやすやと眠っている。 アドオン国の鳥人族の国王との調印式まで後数時間と迫り、理久の従兄弟もまだ目覚めたと言う知らせがない。 やらなければならない事も問題もあれど、しかし―― 理久のその安らかな理久の寝顔を見て、その穏やかな寝息を感じると―― 途端に、クロに言葉では言い尽くせぬ幸せと安心感が込み上げた。 そして、眠る前、理久と獣人姿のクロで、このベッドの上で互いの性器を使い愛を確かめ合った余韻にも、クロは鼓動を早めながら浸る。 ――理久に会うまで、こんな気持ちや感覚は知らなかった―― クロは、赤ん坊の頃から父と母である国王夫妻から離されて、国王夫妻の居住している城とは別の距離の離れた宮殿で臣下達に次期国王として厳しく育てられた。 だが、それはクロだけでなく、この獣人王国の歴代の王達は皆そうだったし、王族の長い間のしきたりだった。 ――この国の王として何より優先すべき事は、どんな時も常に強い王として振る舞い、国の誇りと名誉、領土を守る事―― クロは、まだよちよち歩きの頃から臣下達から徹底的にその精神と感情を抑える事、剣術、武術、馬術を叩き込まれ、常に軍隊にいるような厳しい生活をしてきた。 だが、クロにはそれが日常で当たり前だったから違和感は無かった。 クロが17歳で国王になり、その教育の成果は発揮された。 クロは、毎日毎日国政漬けの厳しい生活を淡々と難なくこなし―― 繰り返されるモンスターの襲撃からもその度に領
Last Updated: 2026-03-25
Chapter: ベッドでは野獣
気を失っている翼は、クロにおんぶされ、王城内の客人用にしつらえられた絢爛豪華な部屋に運ばれ、シルクのように軽く白く輝くカーテンのある天蓋付きの大きなベッドに寝かされた。 真夜中で、灯はベッドサイドのランプの仄かな光だけ、 獣人と人間の体の作りが近い事から、熊獣人の医師が眠ったままの翼を診察した。 アビから、理久はメイド、クロは城の衛兵の扮装から魔法が解かれいつもの姿に戻り、ベッドサイドからその様子を見守った。 幸い、翼は、胸の傷以外はどこも治療は必要なかった。 医師が退出して、ならと、意識の戻らない翼をクロが再びおぶって、理久と共に理久の世界に戻る案もレメロンから出た。 しかし、翼の意識がないままの異世界転移は人体にどんな影響があるかわからないとアビが反対して、やはり、今は理久もクロも翼も動けなくなった。 理久の世界では、理久の両親、翼の両親が、息子達が夜中になっても帰らないのを心配してるだろう。 でも、翼がいつ目覚めるかわからないので今すぐは帰れない。 そして、もう夜明けも近い。 アドオン国王がこのクロの城に入り、クロと調印式を行う時間も迫っている。 これからどうするのか?クロと話しあう必要があり、アビもレメロンも退出し、部屋には理久とクロと翼だけになる。 どうしようか理久は頭を悩ますが、穏やかな息をして心臓の動く翼の寝顔を見るとほっとした。 「翼は、代わりの者に看護させる。理久、これからどうするか話し合おう。今から俺の部屋へ行こう。それからお前も少し休め」 クロが、理久の背後から理久の肩に手を置き、やさしく囁く。 「でも……翼が……」 「ここではお前と話し合えない。大丈夫。この部屋にはアビが魔物が入らないよう特別結界を張っているし、外の廊下や部屋にも衛兵を入れる」 確かに、こんな状態の翼の横で話し合えない。 それに、クロにも休息が必要で、理久は頷いた。 クロに強く肩を抱かれながら、昨日の夜も一緒に過ごしたクロの寝室に入った。 やはりここは流石にこの王城の主の部屋で、更に広く、カーテンから家具に至るまで極めて華美で品質が良いのが誰にでもわかるのに、気品と威厳に満ちている。 翼も大変な時で、調印式まで時間も無いのに、理久は、すでにクロに肩を抱かれ二人きりになる事に心臓の鼓動がうるさい
Last Updated: 2026-03-12
Chapter: もう一つのプロポーズ
クロは、すぐに理久とアビを、広い北棟側の一番端に連れて行った。 そこは丸々2階階まで吹き抜けになった外国の要人をもてなすための巨大な宴会用のホールになっていた。 広い南棟と北棟全てにアビが結界を張り、魔物がこのホール以外の部屋に入ったり、窓から逃げる事も出来ないようにした。 結果、魔物が取り憑いている翼も、廊下や階段を逃げながらホールに行くしかない。 そしてクロは、魔導通信機器で連絡を取り合い、密かに獣人騎士達に翼をこのホールに向い追い込ませ始めた。 しかし、アドオン人の使者達に気づかれないよう静かに翼を追い立てるのは、やはり獣人騎士達の知力、体力が高い必要があった。 メイド姿の理久は、学校の体育館ほどあろうかという広さのホールの真ん中に立ち、一人囮になり翼を待つ事にして、クロとアビは柱の陰に潜む事にした。 天井には沢山のシャンデリアがあった。だが、クロとアビを隠すためにも、その幾つかにしか魔法由来の明かりは無く、ホール内は仄かに明るいくらいでしかない。 アビはすぐに隠れた。 しかし、クロはそうする前に再び理久を抱き締めた。 「必ず、必ず、お前を守って、翼を捕獲する」 クロが、再び理久に約束してくれた。 そしてクロは、理久にそっと口付けした。 一瞬、理久の心臓が止まるかと思うくらいに大きく爆ぜた。 そして、アビが遠くから見ているかも知れなかったが、もう女装の自分に嫉妬の無かった理久は、キスを従順に受け入れた。 クロは、いつも理久への愛情が直情で昂ぶると、いつもの国王としてのクロの冷静さが嘘のように、本当の犬のように誰が側にいようとどこだろうと理久にそれを表してくる。 恥ずかしがりの日本男児の理久は、未だにそれに戸惑う時はあるし、クロにちょっとは人前での愛情表現の待てを教えないとと思うが、出来るだけクロの想いは受け入れたかった。 そして、二人きりなら、いくらでもクロの愛情表現は受けたいし、理久とクロには体格差がかなりあるが、クロのあの大きな体全ても理久の体全てで受け止めたい。 そして今はこんな時なのに、クロの唇が離れると寂しくて心がギュっとなった。 すると、クロの頭の獣耳がピクピクした。 「どうしたの?」 理久が聞いた。 「翼がこっちに来てる、微かな音がする」 流石に五感の能力
Last Updated: 2026-02-26
Chapter: 囮(おとり)
クロが先頭になり、理久、アビと続き、翼を助けに城の赤絨毯の廊下を早足で向かう。アビがついさっき魔法をかけたので、今、クロとアビは城の警備兵の格好をしていて、アビは、魔法の杖も消して隠し持っている。そして、一階に下りる為に大階段の前に来て、みな一旦立ち止まる。理久の着るメイドドレスは、スカートはいかなる作業もしやすいよう、長さは足首より少し上で歩きやすい。しかし、理久がいつもの男子の理久でズボンを履いていようが、クロはどんな時も階段や歩き辛い所では理久を気遣い手を差し出してくれる。そう、大切な姫君にするかのように。そして今回も、クロは立ち止まり横にいる理久に手を黙って差し出した。さっきまでの、女装している理久に妬いていた理久なら、このクロの手を拒んだかも知れない。しかし、今は、理久は笑顔で素直に頷きクロの手を握りクロと並んで階段を下り始め、アビがそれに続いた。もう、理久にこだわりは無かった。クロが女装した理久をキレイだと言ってくれたのは、女装した理久ではなく、理久本人に言ってくれたとわかったから。クロは、階段で何度も理久に視線をやり、ギュっと理久の手を強く握ってくれた。一階のエントランスに着くと、そこにいたのはレメロンだけて、集まっていたはずの獣人騎士20人と上級魔法師長がいない。「陛下。先程また理久様の従兄弟殿の目撃情報があり、このままではアドオンの使者達に従兄弟殿が勘付かれるのも時間の問題ですので、騎士達を数グループに分けて先にアドオンの使者達のいる棟に捜索に行かせました。上級魔法師長は、念には念を入れ他の魔法使い達と城内の結界の確認に向かわせてございます。騎士達全員を捜索に向かわせましたので、私はここで何かあった時の為に待機いたします」レメロンが、クロに頭を下げながら冷静な声で報告した。クロが頷いた。「うむ。流石レメロンだな。それで良い。我々も後を追う」こう言う時のクロは、獣人王の威厳に満ちた声を出す。レメロンがよく出来た臣下であるのは、理久もなんとなくわかっていたが、それを新ためて今感じ取る。そこに、レメロンが、クロに何か差し出した。「では、これを……騎士達にはすでに渡しておりますので」それは、まるで理久の世界のイヤホンのような物一つと、何か小型の長方形の機械だった。「これは?」思わず理久がクロに尋ねた。「ああ
Last Updated: 2026-02-13
Chapter: 波動
理久は、翼を助ける為に、率先してクロの祖父の秘密の部屋から赤絨毯の長く広い廊下に出た。獣人女性に化けた理久の、ロングメイドドレスのスカートとポニーテールと、白のもふもふの尻尾がふわりと揺れた。廊下を挟み左右の壁には、等間隔にランプが設置され、その中で、魔法由来の他に燃え移らない火事にならない赤い炎が揺らぐ。辺りは静まり返っている。さっき、理久がクロに取った態度で、二人の間に変な空気が流れている。そして、理久の横顔に、クロの熱の籠った視線が向けられている。しかし、理久は、それを素直に受け止められず、一度チラッとクロの青い瞳を見詰めてすぐにそらしてしまった。それでも――クロは、理久を見詰め続けて、理久の心臓は、クロの理久へのその眼差しに早る。それでも――今は、翼の事に集中すべきと思いながらも――こんな気持ちのままでは、翼を助けられないと思いながら――どうしても、クロが理久ではなく、理久そっくりの獣人女性に愛情を向けているという風に、理久の頭の中で変換されてしまう。クロは、やはり理久の様子が変だと、頭の獣耳をピクピクっとさせて反応させた。そこに、アビが背後から声をかけてきた。「理久さん。時間も無いので、ここで一度さっきお教えした魔法を使ってみましょう」アビに振り返り、理久は不安な表情になる。「えっ?でも、それじゃあアビさんが危ないんじゃ……」それに、いくら城の広い廊下とは言え、大丈夫だろうかとも思う。だがアビは、クスっと笑った後返した。「大丈夫です。理久さんが従兄弟殿に襲われた時にお命まで奪わないように反撃できるような、あくまで理久さんを守る為の護身用レベルの魔法の力にしてあります。それにそれくらいの魔法なら、僕は手前で消滅させられますし。ただ……この魔法が一時期にせよ、僕から得たとは、他言なさらないで下さい。あくまで、理久さんが元々持っていた力にして下さい」「えっ?……」理久は、戸惑った。アビの表情は、急に固くなる。「陛下は、僕の魔法系統一団が魔法を使えない普通の者に魔法を与える事が出きるのを知っておられましたが、普通の生活を送る普通の者達の多くはそれを知りません。もし多くの普通の者達がそれを知れば、自分にも魔法を与えてくれと我々魔法使いに殺到するでしょう。魔法を欲し得て悪用しようと言う者も多いのです。我々は、本当に
Last Updated: 2026-01-23
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