Chapter: 理由クロが、話し出した。真っ直ぐに、理久の瞳を見上げながら。理久は、その射るような強い視線に、まるで直接握られたように心臓を収縮させた。クロは、この様々な獣人の世界の王国の王様だった。本当は名前もクロでなく、アレクサンドルと言う。そして、少し前から亡くなった祖父で、前前国王のそのままになっていた珍しい品々を集めた部屋がやたら気になっていた。そこは、巨大な城の誰一人として今や入らない、すでに忘れられた空間。それに、クロは、王になってから毎日毎日、お妃を決めろ!早く決めろ!と周囲からヤイヤイ言われていた。そして、毎日毎日、断ろうが何人もの何処かの姫や令嬢と勝手に見合いを組まれ、いかにもと分かる欲に塗れた色目を使われて媚を売られ、もうほとほとうんざり辟易していた。だがある日、クロはどうしてもそう言うストレスもあり気晴らしに、なおかつその部屋が気になって、誰にも告げぬまま、こっそり鍵を持ち出して一人入った。側近や付き人に言えば、埃に塗れるやらなんやらと必ず反対されたからだ。それに、何故だろう…普段、こんな馬鹿げた事はしないタイプなのに…国王になってからは、増々、行動には慎重だったのに…どうしても、部屋の中に入りたかった。まるで、部屋に呼ばれているかのように…それに、少し中を見て、すぐ職務に戻るつもりだった。そこは…やはり埃に塗れ、蜘蛛の巣が張り放題。どこから手に入れたのか、変わった動物のミイラや骨や、壺や仮面や不気味な人形が、元王の部屋にしては小さな空間に溢れていた。すると突然、部屋の中央に鎮座している大きな陳列台と床との僅かな隙間から、ネズミが2匹出てきた。古い部屋だし仕方が無いなと思いながら、掃除はしなければなと、何気にその隙間を覗くと…陳列台に隠れるように、床に何かが描かれていた。一体何かと…普通ではなかなか動かせないその台を、クロは持ち前の怪力で一人で軽く動かしてみた。すると、そこに、呪術なのか?…その部分だけ埃が無くキレイなまま…紅い何かで描かれた大きな円陣が幾つか重なったり組合って、訳の分からない記号も幾つかあった。だが、クロには唯一、その円や記号の横に書いてあった文字だけが読めた。いにしえの今はもう、王族にしか伝わらない、市井の人々には忘れられた古代文字。そこには…「神聖なる血を受け継ぐ一族の者よ…我、
Last Updated: 2025-06-14
Chapter: 大広間理久は、まるでフランスの太陽王の宮殿の中のような、内装も調度品も華美で煌びやかな広い部屋にいた。だが、どこから見てもThe日本人の理久には馴染まないと言うか、浮いてしまうと言うか…その雰囲気に、思わず小さくなってしまい全く落ち着かない。そして、よく読む、異世界転移の小説の主人公の気持ちが痛いほど理解出来た。今はこの異世界も夜のようで、大きな沢山の窓は高価そうなレースのカーテンが締め切られていた。しかし、この世界には、暗がりになると光る石があるらしく、天井のゴージャスなシャンデリアはそれで出来ていて、煌々と広い部屋を照らしていた。そして、理久は椅子に座り、沢山の獣人の召使いが目の前のテーブルに、理久とクロの食事を用意しているのをただ眺める。獣人は、色々な種類がいる。クロと同じ犬もいれば、猫や馬、熊もいる。けれど特に目立っていたのが、仲の良さそうな、黒のスーツに身を包む2人のどちらもかわいいウサギの獣人の男子だ。人間で言うなら、20歳前後位に見える。彼等は、一人がかわいくて凛とした爽やかイケメンで、もう一人は、笑顔が甘過ぎる、ウサ耳の良く似合うめっちゃくちゃかわいい系だった。どちらかと言えば、爽やか男子が2人の仲をリードしているのかとおもいきや、主導権を握っているのは、以外や以外、かわいい方のようだった。クロは、理久の向いに座り、召使い達に色々指示を出す。ただ…クロの顔つきや喋り方が、理久と一緒にいたさっきまでと違う。理久と一緒だった時は、柔らかくて、時に甘えるような表情や言葉遣いが、今は支配者然として居高くまるで別人のようだ。(クロ…やっぱり…本当に…王様、なんだ…)理久は、クロの顔をまじまじと見た。さっきまで優し気だった野生味のある男らしい顔が強く引き締まり、更に男前度合いが増していた。途端に、理久の胸の奥がなんだかザワザワとする。やがてすぐに食事の用意は完了し、召使い達は全て退室した。理久は、目の前のテーブルに並べられたステーキや焼きたてのパンやデザートなどの、これまた豪華さに目を丸くした。「沢山、いくらでも食べろ…理久」クロが、理久の向かいから右腕で頰杖をついて言った。そして、クロの表情と喋り方が、又柔らかくなっている。それでも、理久が無言で不安そうにクロを見た。「どうした?冷めるし、腹へってるだろ?」結
Last Updated: 2025-06-14
Chapter: ベッド3一瞬、ブワッと男が白煙に包まれと思えば、次の瞬間、犬になっていた。理久が大好きな、クロに瓜二つの…美しい黒の毛並みの…そして、青い首輪は首にでなく、ブカブカの状況で前右足にあった。「ク…ク…ク…ロ?」間違い無かった。途端に喜びの余り、理久の脳裏からさっき襲われかけた事が瞬時に吹っ飛んだ。そしてバッと近寄り、その黒色の体に抱きついた。「クロ…良かった…良かった、お前が無事で。本当に本当に心配したんだ」思いっきり抱き締めてやる。「くぅ~ん…くぅ~ん…くぅ~ん」クロが、甘える時のとってもかわいい声を出した。「クロ…」理久の両目から懐かしさと嬉しさで、又涙が溢れてきた。それを見たクロは、激しい勢いで理久に飛びかかる。スポっと、あの首輪が、クロの足から抜けた。理久は、ベッドに上向きに倒れ、クロが上におおいかぶさり頬を伝う涙をペロペロペロペロ舐め出してきたので笑った。「クロ!くすぐったい!ダメだ、クロ!ああっ!ダメ!ダメ!そこはダメー!」だが、ふと、なんだか変な声を出してしまったと理久は気付く。すると、又、今度はクロが白煙に消えさっきの男になり、寝転ぶ理久の顔の両横に手を付き、上から見下ろしてきた。
Last Updated: 2025-06-10
Chapter: ベッド2「どうして?どうしてだ?理久!お前、俺がお前の所に帰ったら、なんでも食べさせてくれるって言ったはずだ!だから、お前が食いたい!お前とセックスしたい!」男は、まだ、ハアハアハアと激しく息をし、恐ろしい程性器を勃たせている。そして、さっきまでの大人の男の余裕の素振りを捨てさり、子供のように拗ねた感じで理久に訴える。「アレ、聞こえてたのか?ああ、言ったよ。確かに言った。けどあれは、ジャーキーとか、ほ○っことか、ワ○○ゅーるとかの事で」「そんなのいらない!理久が欲しい!理久の体が、心も全部欲しい!」男は、完全に成長した美しい大人の男のなりで、本当に聞き分けの無い子供のように理久に映る。「俺、男だぞ!そりゃ、背はそんなに無いけど、中性ぽくも女っぽくも無い、どっからどう見ても男だぞ!」理久は、ステイのポーズのまま、男に叫んだ。「ああ…理久は、どっからどう見ても男だ…でも、かわいい…凄くかわいくて、優しくて、いい匂いがする……だから、抱きたい…」急に、男のトーンが、大人の、しかも色気のある男のモノに急変して理久は、ドキっとした。しかし、急ぎ首をそれを振り払う。「それに、あんた…あんた…本当に、クロなのか?それなら、その右腕の物以外で、何か証拠見せてくれ!」理久の更なる叫びに、男はくすりと笑って答えた。「いいとも…」
Last Updated: 2025-06-10
Chapter: ベッド理久の唇に、ベッドサイドに立っていた男が上半身を傾けて又口付けた。「うっ…んん…」理久が瞠目して驚愕すると、男は、その隙に今度は舌を入れてきた。そして、更に、男も口付けしたままベッドの上に上がって来た。「うっ…んん…」理久は、必死で抵抗したが、男の猛獣のような力の強さには全く敵わない。それ所か、キスは激しさを増してきた。お互い上半身を起こしたまま、理久の逃げる舌を、男の舌が追って捕え…激しく絡ませられる。「ぷちゅっ…ぷちゅっ…くちゅっ…」艶めかしい水音がしてくる。そして…未だ抵抗する理久と、男の息が、かなり上がってきた。やがて、男の手が、理久のズボンのフォックに手をかけた。その瞬間…理久は、貞操の危険を感じ、キスの合間叫んだ。「待て!」同時に理久の開いた手の平が、男の前に出される。これは完全に、理久がクロにしていた躾けのステイのポーズそのままだった。理久の中の、もしかして男は本当にクロでは無いか?という思いからの一か八かの賭け。男は目を見開き、一瞬にして理久から唇を離し、理久のズボンからも手を離した。そして、ハアハアと息を弾ませながら、あんなにピンと立っていた頭の上の耳が倒れ
Last Updated: 2025-06-10
Chapter: 異世界どれ位だったろうか…だけど、やけに長いキス。その後、男の唇が理久の唇からそっと離れた。理久のファーストキスは、突然、何の予兆も心の準備も無く、あっという間に奪われた。「なっ!何する!」理久が珍しく声を荒げると、男が全く意に関せずと跪いたままくすりと笑うと、急に立ち上がる。驚いた理久は、一瞬逃げようとしたが、すぐ男に軽々とお姫様抱っこされた。「行くぞ!理久!」手足をジタバタして抵抗する理久に、男は全く影響されず微笑んで言った。「行くって、何処へだよ?!」理久は更に足掻くが、男は全くどこ吹く風だ。「俺が治めている国だ!」「はあ?」理久が、増々訳が分からないと眉間に皺を寄せると、男は理久を抱いたまま、普通の人間ではあり得ないスピードで走り出した。そして、暗く人気の無い公園の奥の、沢山ある木の中のどうと言う事の無い一本の前に来た。しかし、理久がよく見ると…外灯の明かりによって、その木の根本の木皮に、大きな白い三日月型が浮かんでいるのが分かった。しかも突然、その形が、黄金色の光を放ち始めた。「何?これ!」理久が驚愕し叫ぶ。「大丈夫だ。理久。俺がいる。俺が、お前を必ず守る」男は、理久を抱きかかえたまま、理久を見て優しく微笑んだ。理久が、その男の笑みを思わずボーっと見詰めたら…急に更に回りが明るくなる。理久は、驚き目を閉じた。だが、その一瞬後。男に抱かれたまま理久は、何処か全く分からない西洋風の部屋にいて…男は、呪術を思わせる、木床に描かれた不思議な大きな円の上に立っていた。回りには、変な人形や、面、変わった動物のミイラがそこかしこに飾られている。あ然とする理久を抱え、さらに男は、その部屋を出てやはり猛スピードでどこかへ行く。ここは一体どこなのか?
Last Updated: 2025-06-07