LOGIN「逢沢」「あぁヨッシー」「社内メール見た?」仕事中、ヨッシーがいきなり声をかけてきた。「ん? メール?」「まだ見てないのかよ。これ印刷したやつ持ってきた」「ん? 何これ」そう言ってヨッシーが印刷した紙を差し出す。「社長が最近立ち上げたプロジェクト」「あぁ。前に言ってたね。で、それがどうしたの?」「よく見てみろよ。そのプロジェクト。プロジェクトメンバー今から募集するらしいんだけど。それ社内の人間なら誰でも応募出来るらしいぞ」「えっ! そうなの!? 今それって、なんでもないあたしらでも出来るってこと?」「おぉ。社内の人間なら誰でも応募可能書いてある。プロジェクト未経験者でもいい企画を出せばメンバー入れる可能性あるってさ」「えっ、それめちゃ興味ある」「だろ? 基本プロジェクトなんて、そこそこ経験積んだ人間じゃないと選ばれないんだけどさ。今回のプロジェクトは、社長が直々に立ち上げたモノだから、特別にそういうカタチになったらしい」「そうなんだ! じゃあ、それって絶対チャンスだよね!」「だろ!?」「これ選ばれたら社長と直接仕事出来るかも!」「で、これ一人でも何人かでも人数とかも関係なく申し込めるらしくてさ」「へ~。とりあえずいい企画出したらいいってことだよね」「そう。でさ。逢沢、オレと組まねぇ?」「え!? ヨッシーと?」「あぁ。社長の仕事に純粋に憧れて尊敬してるオレらが組めばさ。絶対いい企画出来そうな気しねぇ?」「確かに! それってありかもね」「ってか、社長の仕事憧れてめちゃくちゃ勉強してるオレとお前なら、絶対負ける気しねぇんだよな」「うん。それは負けたくない」「しかも、企画通ってそのメンバーに選ばれたら、社長と一緒に仕事出来んだぞ? 多分一緒に会議とかも出れんじゃね?」「えっ、それマジで魅力的すぎる」社長と一緒に仕事……。え、何その最高な状況。もしプロジェクトメンバーに選ばれたら、社長と会社でも会えるってことだよね!社長の元で勉強出来るとか……あぁ絶対そんなの幸せに決まってる!絶対選ばれたい!大好きな人っていうのもあるけど、何より仕事でもホントに憧れてる人だし、絶対あたし以上にそこに参加したい人はいない!「ヨッシー! これからよろしく!」すっかりその気になったあたしは、ほぼ同志といえるヨッシーに、手を出し
「よしっ。じゃあ、お前はもうそろそろ寝ていいぞ?」「あっ、もうこんな時間。大丈夫ですか?」「ん? 何が?」「少しでもちゃんと寝てくださいね?」「あぁ、うん。お前の作ってくれた柚子茶とマッサージで随分リラックス出来た気するから大丈夫」「よかった……!」「ありがとな」「いえ」よかった……。今日から少しでも社長寝れるようになってくれるといいな。そんなあたしはこんなこと急に起こって興奮して目ギンギンなっちゃったし、絶対寝れる気しないですけどね!「あの……慧……さん」「ん?」「最後。寝る前に、もう一度……好き……って言ってもらってもいいですか?」「えっ!? 散々さっき言ったろ」「だって……。ホントに、好きって言ってもらうの夢だったんです。ずっと慧さんに、好きって言ってほしかったんです……」「そうなんだ? いいよ。いくらでも言ってやる」「……優しい」「は?」「いつもなら絶対そんなすんなりいかないもん……」「んなの、もうお前が好きなんだからいくらでも言えるけど」「そんな……急に変わります?」「何が」「そんな急に……甘い……感じになるんですか……?」「これ甘いの?」「あたしにとっちゃ、甘いです//」「ふ~ん。チョロいな(笑)」「へ!? チョロい!? え!? え!? 何がですか!?」「お前こんなんで満足してんだ?(笑)」「いや、だってそんなん経験全然ないですし……。あたしは慧さんしかこんなの知らないですし……。何言われたって嬉しいですし」「オレだってお前しかこんなんなったことねぇよ」「は!? 嘘!? 今までめちゃめちゃ女の人と遊んでたじゃないですか!?」「別に好きでそうしてた訳じゃねぇよ。そもそも遊んでた訳じゃねぇ」「でも。慧さんは、こんなの……慣れっこでしょうけど、あたしはもう好きだって言ってもらえるだけで、いっぱいいっぱいで」「いや、それにしたら、お前好きって言えってねだってんじゃん(笑)」「それ……は……! なら。もういいです……」「何? 拗ねてんの?(笑)」「拗ねてません~! もう諦めただけです~!」「フッ。諦めたんだ。はやっ(笑)」「意地悪……」「そうしたのお前だから」「え?」「こんな誰かに自分から構いたいって思うことなんて今までなかったし、こんなに一人の女の気持ち知りたいって思ったの初め
優しく囁いてくれるその言葉に、こんなにハッキリ言われると思ってない現実が、嬉しくて、夢のようで涙が溢れてくる。「ハハ。何泣いてんだよ」涙が溢れてきてるあたしに気付いて、笑いながら手で涙を拭いてくれる社長。「だって~! 夢みたいで~! ホントにこれ現実ですか!?」「現実だから(笑)」「その好きは、あたしの好きと同じってことですか……? あたしをちゃんと恋愛対象として彼女として……ホントに好きになってくれたってことですか?」「そうだよ」「うぅ……夢みたいでなんか信じられないです~」泣きながらまだ受け入れられない現実を伝える。「しょうがねぇなぁ~」社長がそうやって笑ったと思ったら。触れていた頬を後頭部まで回し、そのまま顔を近づけられ、社長の唇が触れた。…………!!!!あたしはその甘い出来事にパニックになりながらも、引き寄せてくれたその手が、優しく愛しそうに触れてくれて、その感触を感じる。そして社長が触れるその唇の感触に、心臓が壊れそうになる。あの時の酔った事故のキスみたいなんかじゃなく、優しく大切そうにしてくれるキス。ちゃんとあたしだと意識して、してくれるキス。気持ちがあるキスって、こんなに幸せに感じるんだ……。あたしはその初めて感じた想いの込められたキスで胸がいっぱいになる。「これで信じた?」「はい……」「お前が好きで、お前が愛しくてキスしたって、ちゃんと伝わった?」「はい……。伝わりました……」確かに言葉よりもそのキスで、その想いが伝わってきた。全然雑なんかじゃなく、ちゃんと大切にされていると感じられた。その表情から、その触れた手から、その唇から、全部でそれを感じることが出来るキスだった。「でもまぁ、こんなのキスの中に入んねぇけど」「えっ? 入んないんですか!?」「そりゃそうだろ。こんな子供だましのキス。物足りねぇし、初心者のお前には刺激強いから、これくらいで加減しただけ」「えっ……。もっとすごいレベルになっていくってことですか……?」「そりゃ好きな女前にしたら、こんなんで収まるわけねえし」「好きな……女……」「自分の気持ちこうやって認めたら、なんかすげぇ抑えらんなくなってきたわ。もっと濃厚なやつこれからするから、ちゃんと今から覚悟しとけよ」「へっ!? いや、えっ!? 覚悟!?」えっ、もっと濃厚って
「なぁ……。いつまでそうしてんの?」「えっ! あっ、すいません! つい嬉しくて想い溢れちゃって……」「なら、そろそろ顔見せろ」「えっ?」「マッサージしてくれたのは気持ちよかったけど、それだと全然お前の顔見えないんだけど」「えっ、顔見たいってことですか……?」「だからそう言ってんだろ」そう言って、あたしが離れたタイミングで社長がこちらへと向き直す。「フッ。ようやく顔見れた」そう言いながら、優しく微笑んで、同じようにそっと大切なモノを触れるかのように優しくあたしの頬に社長が手で触れる。えっ……!?今、社長あたしの頬に触れてるよね!?しかも、なんでそんな顔で優しく見つめてくれるの……?そんな表情……あたしのこと好きだって思ってくれてるかと勘違いしてしまいそうになるじゃん……。「社長……?」そして微笑んで触れたままでいる社長。その表情と、その触れた手から、あたしの頬はどんどん熱を帯びて心臓もどんどん激しくなっていく。「そうじゃないだろ?」「え……?」「ちゃんと名前で呼んで」そして社長もなぜかいつもと違う色気が帯びてくる。「慧……さん……」「ん」そして満足そうに社長が微笑んで。「依那……」え……名前呼んだ……?演技してた時に呼ばれたみたいなあんな感じじゃなくて、あたしが気持ちを伝えてから呼ばれたその名前は、甘く、優しく、響く。「はい……」あたしは、ドキドキしながらそう返事するだけで精一杯で。「依那……。好きだよ」「へ……?」まさか言われるなんて思ってもない言葉が飛び出して、あたしは色気ない間の抜けた声で反応してしまう。「そうやって全然オレの気持ちわかってないとこも、オレの為になんでもしてくれようとするとこも、まっすぐオレだけ見つめて好きだって伝えてくれるとこも……。全部好きだよ」
「ホントですか!?」「あぁ。オレのためにいろいろ考えてくれてたんだな」「でも、あたしの出来ることなんて、こんな風に家で出来ることくらいしか考えつかなかったんですけどね」「十分だよ……。ホントに……」「ならよかったです」「お前がこうやって家にいてくれて、いろいろしてくれることが嬉しい。オレが家に帰りたいって思う理由が出来た」「あたしが理由になってるってことですか?」「もちろん。今まで仕事遅くなったらさ、会社で仮眠室も作ってるから会社で寝泊まりすることも多かったんだよ」「そうなんですか?」「あぁ。その方が仕事もはかどったし、次の日も楽だし。着替えとかもそれなりに置いてる。だから寝泊まりしたことで不自由ないんだよ」「確かに……。それだと問題ないですよね……」「だけど。今はお前が家にいてくれるから。どんなに遅くても家に帰りたいって思う。その日顔見れなくても、翌日一緒に朝食えるだけで、オレ的にはちゃんとした理由になってる」「そうなんですね……。そこまでちゃんと考えくれてるなんて思ってなかったです」「お前に気を遣わせたくないから遠慮してたけど……。でもこれからは、こうやって帰ってからもお前と一緒に過ごせんなら、オレもまた帰りたい理由や帰る意味が強くなったっていうかさ」「それは、社長の中であたしの存在が少しづつ大きくなってるって思ってもいいってことですか?」「あぁ。もう十分大きいから安心しろ」「フフ。やった! 嬉しいです!」「おわっ!」社長の言葉に思わず嬉しくなってマッサージしてたのを忘れ、思わず背中から抱きついてしまって、その衝撃で社長が驚く。「慧さん……。大好きです……」そしてそのまま抱きつきながら、溢れてきた想いをこっそり背中越しに伝える。これくらいの声なら聞こえないかな。でも、聞こえてほしい気もする。多分あたしはこんな風に何度も社長のことを知るたびに、想いが溢れて口から零れてしまう。だけど、まだ社長はあたしを好きになってくれてるかもわからないから。あんまり言いすぎると逆効果なのかなとかも考えてしまったり。でもやっぱりこの気持ちも隠したくないし、伝え続けたいとも思うから。
「あの……。結局あたしも社長帰ってくるの確認しないと安心して寝れないんです。だから……すぐ部屋に戻るので、”おかえりなさい”と”おやすみなさい”だけは伝えにきてもいいですか……?」「……うん。わかった。オレもその方が帰ってきた安心感あるかも」「ありがとうございます! はぁ~よかった!」「ハハ。そんな喜ぶことかよ」「そうですよ? せっかく一緒に住んでるんですし、恋人……なんですから、ちゃんと毎日顔見たいです……」「朝メシ一緒に食ってんじゃん」「いや、それはそれですよ! そんなの朝まで一緒に食べる機会なくなったら、ホントに全然顔見れないじゃないですか!」「うん。オレもその時間なくなったら困る」「ホントですか?」「オレのがその朝の時間なくなったら影響あるかも」「それはもちろん! 絶対朝ごはんは食べないと、その日一日頑張る元気出ないですから! それはちゃんとしっかり食べてってもらいます!」「じゃなくて」「じゃなくて?」「メシ食うのもそうなんだけど。オレ的には、毎朝そうやってお前の顔見て一緒にメシ食って、お前が笑ってる顔見れたり、一緒にちょっとでも話せることで、その日頑張る力になってんだよ」「あたし……が、ですか?」「そう。だから、オレにとっては毎日そんなお前との時間で、そういう頑張れるパワーみたいなのチャージ出来てる」「あたしもです。ずっと顔合わせられなくても、朝食では一緒に食べれるって思えると嬉しくて幸せで、その日頑張れちゃいます」「なら同じじゃん」「はい。でもやっぱり欲を言えば、寝る時も……」「うん。結局疲れて帰ってきてもお前がいたら、こうやって話してるだけで癒されるしオレもようやくホッと出来る」「あたしいてそんな風に思ってくれてるってことですか……?」「そっ。だからまたこうやって柚子茶作ってよ」「はい!」「ん」優しく微笑み返してくれるその表情は、疲れて帰ってたさっきの表情よりも、柚子茶効果のせいか穏やかに感じて、少し安心する。「社長。後ろ向いてもらっていいですか?」「え? 何?」「いいから、後ろ向いてください」そう言って隣に座っている社長の背中を、クルッとこっちに向ける。お~。やっぱ社長の背中広くて大きいな……。このままだとちょっと力入んないか。よいしょっ。あたしはソファに膝をついて、社長の方に身体を向







