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56.社長とお姉ちゃんの初対面④

Author: Aica
last update Huling Na-update: 2025-09-18 00:28:34

「お姉ちゃん、それはもういいじゃん。そんなのいきなり困っちゃうから」

あたしはとりあえず今のピンチを逃れることに必死で。

「大丈夫。依那。ちゃんと答えるから」

すると、社長がそっとあたしに声をかける。

「え……?」

「素直で純粋で、仕事にも勉強熱心ですし、何より明るくて一緒にいて自分が楽しいんで。オレが一緒に住もうって誘いました」

社長……。

また自分が想像もしていなかった言葉が飛び出す。

そんなあたしの中身に対して言ってくれるなんて思わなくて。

もし何かを言うとしたら、家事をしてくれるだとか、そういう感じのことだと思ってたから。

社長は、そんな風にあたしのことを思ってくれてるってこと……?

別に好きとか言われた訳じゃないし、この追い詰められた状況で、どうにか好きっぽく納得出来る理由を探しだしただけかもしれないけど。

だけど、例えその時の言葉だけだったとしても、そんな風に少しでも社長に思ってもらえてるのが、すごく嬉しい。

ちゃんとあたし自身を見てもらえてるみたいで、胸がギュッとなる。

「そう……なんですね。あなたは、ちゃんと依那を見てくれてるんですね」

「はい」

そしてまさかのお姉ちゃんの言葉。

「この子、今まで家族の為にすごい頑張ってくれてて。あたしが家事とかあんまり出来ないんで、そういうの当たり前に自然にやっちゃう子で。だけど、この子いろいろなんにでも全力の子だから、もしあなたのところでも、そういう感じだったら、たまに息抜きさせてあげてください。自由に楽しむ時間あげてください」

そう言って、社長に頭を下げるお姉ちゃん。

え……ビックリなんだけど……。

お姉ちゃんがそんなこと言うなんて思ってもなかったし、しかもあたしの為に頭下げてお願いするなんて……。

「わかりました。ちゃんと彼女の意見や自由は尊重します。オレも彼女にはいつも楽しんでいてほしいので」

そして社長までそんな……。

半分は嘘が混じってるのに、どっちもこんなちゃんとしたやり取り、なんかちょっと胸にくるものがある……。

にしても、社長、契約だけの嘘の関係なのに、こんな真面目に対応してくれるなんて、ホントなんていい人なんだろう……。

あたしのお姉ちゃんにそこまでしなくていいのに……。

なんかホントに、そんな風に大切にしてもらえてるような……そんな錯覚、起こしちゃいそうになるよ……。

「妹のこと。よろしく
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