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第359話

Author: ルーシー
宮下は朝食を整え、タクシーで病院へ向かった。

着いたのは九時二十分だった。

平日の朝で道路は混み合っており、途中ずっと落ち着かない気持ちでいた。

愛莉がお腹を空かせていないかと、そればかり気にしていた。

朝、智也から電話があり、「朝食をゆっくり準備して、できたら病院へ持ってきて」と言われた。

そのとき宮下は尋ねた。

「旦那様は会社へ行かれますし、深津さんも研究室ですよね?

では愛莉様はどなたが付き添うんです?」

智也はあっさりと答えた。

「玲奈が行く」

奥様が行くと聞いて、宮下はようやく安心した。

愛莉がしっかり食べられるようにと、彼女は時間をかけて丁寧に朝食を整えた。

そのぶん出発が少し遅れてしまった。

タクシーを降りて急ぎ足で病室へ向かうと、時計はすでに九時半を回っていた。

だが――病室には、玲奈も、愛莉の姿もなかった。

弁当箱をベッド脇に置き、宮下は慌ててナースステーションへ駆け寄った。

「すみません、愛莉様はどこに?」

看護師はその名を聞いた瞬間、顔色を変えた。

「愛莉ちゃんは先ほど高熱で意識を失いました。

今、救急治療室に運ばれています」

その言葉を聞いた途端、宮下の全身が固まり、目からは涙が次々とこぼれ落ちた。

どうすればいいのかわからず、ただ立ち尽くした。

看護師に呼びかけられてようやく我に返り、慌てて言った。

「そうだ、電話......旦那様と奥様に連絡しなきゃ......!」

そのころ、智也は会議の最中だった。

携帯はサイレントモードにしていたが、画面の上部に「宮下」からの着信が表示された。

愛莉に何かあったのだと直感し、彼は即座に会議を止め、外へ出て電話を取った。

通話がつながると同時に、宮下の泣き声が聞こえた。

「旦那様、大変です......!

愛莉様が、今、救急治療室に入られました......!」

その言葉を聞いた瞬間、智也の胸が巨大な手で鷲掴みにされたように痛んだ。

思考より先に、身体が動いた。

言葉も発さないまま立ち上がり、社長専用エレベーターへ駆け出した。

エレベーターのボタンを押したとき、ようやく声が出た。

「わかった。

すぐ行く」

通話を切ると、エレベーターの数字を凝視しながら、頭の中は真っ白だった。

もし、間に合わなかったら――愛莉は......

その想像に
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